>>85 KAZU様 基礎医学研究者でございます。まず、お忙しいところ、前回の私のコメントに、わざわざ回答いただきまして、感謝致します。以下、KAZUさんに続きます(なお、ここでは、KAZUさんの回答で長い部分はすこし省略して示しております。悪しからず(m_ _m)。 基礎医学研究者さんがおっしゃるように、ウイルスのゲノムRNAがヒトなどの宿主のDNAに組み込まれることがあることについては異論はないです。ただ、このDNAに組み込まれる場合は、ウイルス自体が逆転写酵素を持っており、それを用いて宿主のDNAに組み込んでいくんだと思います。このような手を使うRNAウイルスとしてはHIVウイルスやHTLV-Iウイルス(ヒトT細胞白血病ウイルス)があります・・・(中略) →ありがとうございます。KAZUさんがこの段落でおっしゃられている話は、ウイルス学の常識的要約であり、良いリマンドになりました(まさに、その通りかと思います)。前回「RNAウイルス」というざっくりした書き方をしてしまったのですが、レトロウイルスであるHTLV-1、およびレンチウイルスであるHIVが自身のRNAウイルスゲノムに逆転写酵素をコードしているのは確かにその通りかと思います。一方、コロナウイルスはKAZUさん言われるように逆転写酵素を持っていないことにはまったく同意なのですが、私が前に議論に上げさせていただきましたのは、コロナウイルスのゲノム自体には逆転写酵素遺伝子は存在しないが、ヒト(宿主側)に存在する内因性のLINE(ほとんどはすでにウイルスの残骸のようになってしまっているが、LINE1のみが非レトロウイルス型レトロトランスポゾンとして、活性化する可能性を持ち、逆転写酵素をコードする)が、もしも何らかの要因で活性化するようなことがあるとすると、“コロナウイルスRNAゲノムの逆転写が起こる可能性がある”、ということでございます(自分も少し前までは、このような知見はまったくよくわかっておらず、しかも「怪しい知見」だと思っておりました)。なお、確かにKAZUさんいわれますように、仮に逆転写が起こり、さらにDNA配列として宿主のゲノムに挿入される(レトロトランスポジション)が起こったとしても、それが完全なゲノム配列を有した形で挿入されないならば、ウイルス産生には寄与しないだろう、ということには、同意でございます。 また基礎医学研究者さんが教えていただいたSARS-CoV-2がヒトのDNAに組み込まれ、その状態でゲノムRNAが発現するという研究結果についてですが、あとでこの報告を読んでみますが、読んでいないことを予めことわった上での意見ですが、SARS-CoV-2メッセンジャーRNAワクチンにはSARS-CoV-2ウイルスが持っているであろう逆転写酵素やゲノムRNAを複製するための酵素は持っておりません。なので逆転写が起こる可能性はどちらかというとワクチンというよりはSARS-CoV-2に感染することで起こるのではと思っております。いかがでしょうか。 →ありがとうございます。実際この論文で述べられていることは、医学生物学のこれまでの知見の流れにかなり反したことが言われておりますので、KAZUさんがこのような回答になることは、よくわかります。しかし、この論文では、SARS-CoV-2が感染すると、上でも述べた宿主側のLINE1が活性化し、本来はKAZUさんが述べられていたような生活環をとるはずのSARS-CoV-2が逆転写され、DNAゲノムとして宿主ゲノムに挿入されるということでございました(なお、実際には挿入されたゲノムは完全体だけではなく、3’側に1部分のゲノムが挿入されている場合もあったようです(そして、COVID-19に罹患した患者のBALF(気管支肺胞洗浄液)の細胞からmRNAレベルで、挿入されたDNA由来の発現が確認されました)。SARS-CoV-2はレトロやレンチウイルスとは異なるので、この部分的に挿入された断片が一体どうやって発現するのかについてはよくわかりませんが、少なくともデータからは、そのように考えるしかない、と思います(ワクチンのmRNAの場合は、先にKAZUさんも書かれているように、DNA断片としてどこかに挿入されるだけだと思うのですが)。ただ、こう書いていて思いますのは、先週のゴーセン道場における井上正康先生の話も併せますと、自分の中ではいまのところ、SARS-CoV-2のRNAゲノム、もしかしたらRNAワクチン自体も逆転写されて宿主ゲノムに挿入され何等かの影響を及ぼす可能性はありますが、現時点ではそれよりも、KAZUさんも言及している血栓形成などの副反応の方が大きな問題である、というなのではないかと思う次第でございます。 また、ワクチン接種後の血栓については、メッセンジャーワクチン接種でSARS-CoV-2感染と同じ状況になるためだと思います…(中略)・・・ちなみに新型コロナウイルス感染症でだいたい1%ぐらいの人が血栓症になるという報告があります。これは入院患者さんだけを対象にしていると思われますので、実際には無症状の方も多いですので、仮に入院率を1%とすると0.01%で1万人に1人で血栓症になるということになります。対してワクチン接種は日本では2600万回接種されています。おそらく1500万人から1800万人ぐらいの方が接種されていると考えると今の時点で仮に150人ぐらい血栓症になったという報告があったとしても10万人に1人で血栓症になったという結果になります。ウイルス感染したほうが血栓症になりやすいという結果になります。 →ありがとうございました。これについては、私の周りの医者の見解もそうでありまして、MDの先生のまあまあ共通見解なのだと、思われました。一方捉え方の問題ということも重要だと思っておりまして、先週のゴーセン道場で井上正康先生のお話を聞いた限りでは、ワクチン接種に関しては、私個人はやはり慎重にならざるを得ないと、という感じでございます。 もちろん、SARS-CoV-2に罹患しても軽症なのに、メッセンジャーRNAワクチンに使われるエチレングリコールにアレルギー反応が起きたらどうするんだ、という意見もあります。罹患しても軽症が多い日本の小児の方に強制的にワクチン接種をするかどうかはきちんと検討する必要はあると思います。個人的には高齢者というよりもBMI 30以上の方が重症化するリスクが高いので、BMI 30以上の方は特別、打ってはいけない要項がなければ接種したほうがいいのでは、と個人的には思います →ありがとうございます。KAZUさんから、このような現場感覚的なご意見をお聞かせいただきましたことに感謝致します(職業人として誠意のある見解である、と思いました)。 以上、長文失礼しました。全体としては、おそらく私とKAZUさんの間で見解の相違部分はあるような気が致しますが、こちらも勉強になりました。ここまで議論にお付き合いくださり、感謝致します。 とりいそぎ、御礼まで
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>>85
KAZU様
基礎医学研究者でございます。まず、お忙しいところ、前回の私のコメントに、わざわざ回答いただきまして、感謝致します。以下、KAZUさんに続きます(なお、ここでは、KAZUさんの回答で長い部分はすこし省略して示しております。悪しからず(m_ _m)。
基礎医学研究者さんがおっしゃるように、ウイルスのゲノムRNAがヒトなどの宿主のDNAに組み込まれることがあることについては異論はないです。ただ、このDNAに組み込まれる場合は、ウイルス自体が逆転写酵素を持っており、それを用いて宿主のDNAに組み込んでいくんだと思います。このような手を使うRNAウイルスとしてはHIVウイルスやHTLV-Iウイルス(ヒトT細胞白血病ウイルス)があります・・・(中略)
→ありがとうございます。KAZUさんがこの段落でおっしゃられている話は、ウイルス学の常識的要約であり、良いリマンドになりました(まさに、その通りかと思います)。前回「RNAウイルス」というざっくりした書き方をしてしまったのですが、レトロウイルスであるHTLV-1、およびレンチウイルスであるHIVが自身のRNAウイルスゲノムに逆転写酵素をコードしているのは確かにその通りかと思います。一方、コロナウイルスはKAZUさん言われるように逆転写酵素を持っていないことにはまったく同意なのですが、私が前に議論に上げさせていただきましたのは、コロナウイルスのゲノム自体には逆転写酵素遺伝子は存在しないが、ヒト(宿主側)に存在する内因性のLINE(ほとんどはすでにウイルスの残骸のようになってしまっているが、LINE1のみが非レトロウイルス型レトロトランスポゾンとして、活性化する可能性を持ち、逆転写酵素をコードする)が、もしも何らかの要因で活性化するようなことがあるとすると、“コロナウイルスRNAゲノムの逆転写が起こる可能性がある”、ということでございます(自分も少し前までは、このような知見はまったくよくわかっておらず、しかも「怪しい知見」だと思っておりました)。なお、確かにKAZUさんいわれますように、仮に逆転写が起こり、さらにDNA配列として宿主のゲノムに挿入される(レトロトランスポジション)が起こったとしても、それが完全なゲノム配列を有した形で挿入されないならば、ウイルス産生には寄与しないだろう、ということには、同意でございます。
また基礎医学研究者さんが教えていただいたSARS-CoV-2がヒトのDNAに組み込まれ、その状態でゲノムRNAが発現するという研究結果についてですが、あとでこの報告を読んでみますが、読んでいないことを予めことわった上での意見ですが、SARS-CoV-2メッセンジャーRNAワクチンにはSARS-CoV-2ウイルスが持っているであろう逆転写酵素やゲノムRNAを複製するための酵素は持っておりません。なので逆転写が起こる可能性はどちらかというとワクチンというよりはSARS-CoV-2に感染することで起こるのではと思っております。いかがでしょうか。
→ありがとうございます。実際この論文で述べられていることは、医学生物学のこれまでの知見の流れにかなり反したことが言われておりますので、KAZUさんがこのような回答になることは、よくわかります。しかし、この論文では、SARS-CoV-2が感染すると、上でも述べた宿主側のLINE1が活性化し、本来はKAZUさんが述べられていたような生活環をとるはずのSARS-CoV-2が逆転写され、DNAゲノムとして宿主ゲノムに挿入されるということでございました(なお、実際には挿入されたゲノムは完全体だけではなく、3’側に1部分のゲノムが挿入されている場合もあったようです(そして、COVID-19に罹患した患者のBALF(気管支肺胞洗浄液)の細胞からmRNAレベルで、挿入されたDNA由来の発現が確認されました)。SARS-CoV-2はレトロやレンチウイルスとは異なるので、この部分的に挿入された断片が一体どうやって発現するのかについてはよくわかりませんが、少なくともデータからは、そのように考えるしかない、と思います(ワクチンのmRNAの場合は、先にKAZUさんも書かれているように、DNA断片としてどこかに挿入されるだけだと思うのですが)。ただ、こう書いていて思いますのは、先週のゴーセン道場における井上正康先生の話も併せますと、自分の中ではいまのところ、SARS-CoV-2のRNAゲノム、もしかしたらRNAワクチン自体も逆転写されて宿主ゲノムに挿入され何等かの影響を及ぼす可能性はありますが、現時点ではそれよりも、KAZUさんも言及している血栓形成などの副反応の方が大きな問題である、というなのではないかと思う次第でございます。
また、ワクチン接種後の血栓については、メッセンジャーワクチン接種でSARS-CoV-2感染と同じ状況になるためだと思います…(中略)・・・ちなみに新型コロナウイルス感染症でだいたい1%ぐらいの人が血栓症になるという報告があります。これは入院患者さんだけを対象にしていると思われますので、実際には無症状の方も多いですので、仮に入院率を1%とすると0.01%で1万人に1人で血栓症になるということになります。対してワクチン接種は日本では2600万回接種されています。おそらく1500万人から1800万人ぐらいの方が接種されていると考えると今の時点で仮に150人ぐらい血栓症になったという報告があったとしても10万人に1人で血栓症になったという結果になります。ウイルス感染したほうが血栓症になりやすいという結果になります。
→ありがとうございました。これについては、私の周りの医者の見解もそうでありまして、MDの先生のまあまあ共通見解なのだと、思われました。一方捉え方の問題ということも重要だと思っておりまして、先週のゴーセン道場で井上正康先生のお話を聞いた限りでは、ワクチン接種に関しては、私個人はやはり慎重にならざるを得ないと、という感じでございます。
もちろん、SARS-CoV-2に罹患しても軽症なのに、メッセンジャーRNAワクチンに使われるエチレングリコールにアレルギー反応が起きたらどうするんだ、という意見もあります。罹患しても軽症が多い日本の小児の方に強制的にワクチン接種をするかどうかはきちんと検討する必要はあると思います。個人的には高齢者というよりもBMI 30以上の方が重症化するリスクが高いので、BMI 30以上の方は特別、打ってはいけない要項がなければ接種したほうがいいのでは、と個人的には思います
→ありがとうございます。KAZUさんから、このような現場感覚的なご意見をお聞かせいただきましたことに感謝致します(職業人として誠意のある見解である、と思いました)。
以上、長文失礼しました。全体としては、おそらく私とKAZUさんの間で見解の相違部分はあるような気が致しますが、こちらも勉強になりました。ここまで議論にお付き合いくださり、感謝致します。
とりいそぎ、御礼まで