科学者のニュースの読み方

大学は教育機関の体を成していない『科学者のニュースの読み方』vol.43

2013/09/04 07:00 投稿

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『科学者のニュースの読み方』vol.43
■大学は教育機関の体を成していない

 もはや大学にとって客は学生ではなく、研究費を出してくれる文科省傘下のプロジェクトや企業なのだなという考えが確かなものになってきて、失望になっている筆者です。早稲田大学で学生と教員を両方経験してのことです。

 もともと大学は基礎的な勉強ではなく学問の哲学を見出すものなので、教育の質は高校以下と異なるのですが、学生一人一人が哲学を見出すためには研究というものを経験するのは必要です。よって研究というのは教育のツールという位置づけです。しかし一方で、学費では賄えないほどの金がかかるので、文科省傘下のプロジェクトや企業の研究所などに協力する、すなわち成果の対価として研究費を調達します。この時点で大学の研究というものに2つ目の位置づけが生じていて成果があがってなんぼというものです。
 第二の位置づけは教員、学生どちらにとっても気が乗らない主目的ではない側面のはずです。しかし現実の教員の態度は第二に重点がおかれてしまっています。持続的に研究費を得るためには成果をあげ続けなければいけないし、研究費を得られる教員は優れているという認識すら大学が明示しています。次第に教員もそれを自らのステータスと把握し、様々な関連会議や学会に積極的に参加して名を売る活動に時間と労力を割き始めます。

 このようにして教員の向いている方向はすっかり学生ではなくなり、学生は駒として研究に携わるだけで哲学を見出す訓練がままならず、なんとなく仕上げた論文でもって卒業、修了してしまいます。彼らは実験的な実技能力こそ鍛えられても頭を使う訓練は十分に積んでいません。企業はそれをわかっているので、新卒採用で学士や修士を採用する時は、余計なことを考えずひたすら駒として働ける人材を狙っています。本当に研究の才能が欲しい場合はきちんと博士を採用しています。
 事実上出来上がった今の大学は、ただの安上がりな研究委託先。教員は研究ができることが優秀と判断される要素であって、教育何それ状態。ごく少数ではありますが論文より特許が重要だという教授までいる始末。

 筆者は教育を受けたくて進学したし、教育がしたくて助手をやってみましたが、どちらをするにも適した環境ではない。たぶん解決方法は「成果を求めない研究予算」のような教育補助費を文科省が大学に与えることなのですけど、自由度が高すぎると不正が防ぎにくいのであまり現実的でない。これは業界のジレンマなので近年に始まったことでもないのでしょうけど、筆者は現場に身をおいてかなり悲観するに至りました。
 素直に転職を考えて活動を開始したところです。筆者の性格にわりとマッチする年俸制の外資企業(英国企業の直属子会社)を見つけて、睨んでいるところです。

■責任に対し無責任が攻撃するのはただのいたずら

 ふとタイムラインで知って、確かめてみたら本当でした。「かわんご」と名乗る誰がどう見てもドワンゴの川上会長のアカウントがあり、プライベートなことはもちろん、社会に対する考え方など自由に発信する本来のTwitterらしい使い方のアカウントが消えていました。話にならない人、炎上といわれる個人的制裁が好きな人などに苦言を呈し晒しあげるようなことが増えていたところから察するに、きっと川上さんはTwitterではなくTwitterユーザーのレベルの低さに落胆したのかなと。
 こんなことを想像して発信している時点で筆者のレベルも彼からしたら十分レベルが低いんだと思いますが、もし予想どおりの理由だとしたらわりと納得できたり。彼ほど大物になれば発信ひとつひとつにくだらないメンションがたくさん飛んでくる。重要なメンションがあれば返事でも語り合いでもしてみたいものですが、それを見つけ出すのもまた手間。日々の言動に責任を乗せている人からしてみれば、無責任な反応はうっとうしいだけ。責任に対し無責任が攻撃することが、ただのいたずらに類する迷惑行為に他ならないというあたりを察した筆者でした。

■おすすめの本「満員電車がなくなる日」

 堀江貴文さんが「一緒にやりませんか」とTwitterで返信をした相手、で知った阿部等さんという交通コンサルタントがいらっしゃいます。どうやらこの堀江さんとのやりとりを追いかけてみると、鉄道には膨大なイノベーションとビジネスのチャンスが眠っているということでした。彼が2008年に出していた本があるのを知って、購入して読んでみました。

Amazon.co.jp
「満員電車がなくなる日」阿部等
http://www.amazon.co.jp/dp/4827550298/

ページは少ないので読破はあっという間でしたが、内容はとてもおもしろい。非常に合理的な、現状の鉄道に関する問題提起と解決手段の提案がまとまっています。
 個人的な少々特殊であろう注目点は、これは学問から発展した提言のようだということ。大筋の指針提案だけではなく細部まで妥当性の検証が行き届いているので、かなり練りに練られたものです。これは筆者が思うに研究のレベルです。研究によって合理性が検証された提言が認められてビジネスとして走り出した瞬間をTwitterのTLで目の当たりにしたのだなと思って、分野は違えど研究に携わる者としてとても勇気付けられたのでした。

Y. Izutsu / みもそ
Twitter: mimoso4

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