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山田玲司のヤングサンデー 第36号 2015/6/8
「シナモンいじめ」の話
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でもその件は何となくわかる。「それじゃ面白くない」というのと「圧倒的強者」を相手にすると、何を言っても「小物の妬み」にしか見えないので、大物はいじめられないのだ。
まあそうは言っても、サンリオさんが本気出せば「完全にノーリスク」とはいかないでしょうけどね。
これはつまり学校に行けば「いじめ」の現場に遭遇するのは確実だということだ。
少し前の話なんだけど、サンリオのキャラの『シナモン』がいじめにあっていたらしい。
単にサンリオさんの作った「キャラがやってます的アカウント」に、品のないリプが連日送られていただけの話なんだけど、なんだかんだと架空のキャラクターの心を思って、「可愛そう」なんてやってる感じが、何だか「皮肉なアート」みたいで面白かった。
この騒動は、誰かが「このアカウントを運営している中の人」の写真として、全然関係ない女の人の写真を上げて「どうしようもない感じ」になって落ち着いたという。
そんな騒動を見ていて
「シナモンという白くてフワフワのたれ耳ウサギの何がそんなに気に入らないのか?」
なんて考えてみたけれど、騒動の元の暴言リプを読んでみると、ほとんどが「暇つぶしのリプ」で、ちょっとしたストレス解消に「道に唾を吐く」みたいな感じだ。
「どうでもいいけどあいつ何かムカつく」といった感じ。
その流れに「なんか俺もムカつく」といった感じで便乗してくる感じは、まあ世界中で起きてる「いじめ」の典型的なやつで、これを「可愛いキャラ」が受けていると、同じような感じでクラスなんかで「心無い暴言」を浴びてきた人は気分が悪くなると思う。
そんなわけで、「シナモンをいじめないで!」と言っていた人は「そういう傷」を負った経験のある人だと思うので、それを思うと僕も「シナモンを守らなければ!」なんて気持ちになってくる。
それはともかく興味深いのは「なぜシナモン?」という問題だ。
サンリオなら不動のセンター「キティ」がいるのに。
でもその件は何となくわかる。「それじゃ面白くない」というのと「圧倒的強者」を相手にすると、何を言っても「小物の妬み」にしか見えないので、大物はいじめられないのだ。
もちろんどんな大物も「落ち目の傾向」なんかが見えてくると「ここだ」とばかりに攻撃されるものだけど、それも階級が違いすぎる人間は相手にされない。
タモリさんや、ミッキーマウスに噛み付いている人を見ないのはこのせいだろう。
マイケルジャクソンやスティーブジョブズなんかは猛烈に叩かれてたけど、これもマスコミの売り上げ祭りの類で、1個人での攻撃は空しいものになる。
その線でいくと「シナモン」ってのは実に絶妙な位置にいる。
おまけに「実力も歴史もないのに調子に乗ってる感」もある。そして「影の人気者」だと思う。
学校のクラスでもこういう女の子は人気だし、同時に妬まれるキャラだ。
そんなこんなの感情が「シナモンいじめ事件」にすべて乗っている。
もうこれだけで相当面白いのだけど、僕が面白がれるのは、やはりいじめの被害者であるシナモンに「人格」がないからだ。(傷ついてる当事者がいない)
それは叩く側もわかっていて、人格のあるリアルな人間を攻撃するのにはリスクがあるのを(何となく)よくわかっているからこそ、告訴だの本人参上だののリスクがない安心感の上で、気楽に「アイドルの冒涜遊び」に勤しんでいたのだと思う。
まあそうは言っても、サンリオさんが本気出せば「完全にノーリスク」とはいかないでしょうけどね。
そんな時、笑えないニュースも同時に見た。
「この国の10代の2人に1人はいじめにあった経験がある」という話だ。
これはつまり学校に行けば「いじめ」の現場に遭遇するのは確実だということだ。
そんな狂った世界で心がおかしくなった人が「なんだか意味もなく可愛がられてるウサギ」なんかを見たらムカついて、「死ねよ!」なんて書き込んでしまうのも仕方ない気がする。
メインの社会があまりにも多くの「しゃれにならなこと」を放置したまま「絆」だ「オリンピック」だ「景気回復」だ「日本は偉大だ」なんてやっていて、そういうおぞましい空気を隠すようにこの国は「可愛いモノたち」で溢れている。
でもその「かわいい」で覆いきれないグロテスクな顔が垣間見えるのだと思う。
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