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山田玲司のヤングサンデー 第390号 2022/5/16

あの日の彼女

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【高額な絵画】


ピカソのアトリエに行くと死ぬほど多くの絵が転がっていて、遊びに行くと「好きなやつ持っていきな」とか言ったりしてたという。


どの時期の話か定かではないし、常にそんな感じだとは思えないので「そんな日もあった」という感じだと思うけど、僕も同じように「好きなら持っていっていいよ」なんて自分の作品をあげてしまう事はある。


そもそも苦労して描いた漫画原稿が「特に高額な原稿料」ではなかったので「ストーリー」も「キャラの人格」も埋め込んでない「1枚絵」を高額で売るのに抵抗があるのだ。


1部のレジェンドを除くと漫画家が描く「絵」は安い。


原稿料は基本的に「出版使用料」で原稿は返却されるため、漫画の原画は出版社に買い上げてもらうわけではない。


つまり漫画家の殆どは「原画」を売ることはないのだ。


そんなわけで、近年「画家」として作品を「売ること」になった時も「まあこの程度で・・」なんて言ってかなり安い値段設定をしたら周りの人達に猛然と止められた。


「いや・・高いと買えない人もいるからさ・・」という僕に彼らは言った。


「山田玲司の絵画はその程度の価値なんですか?」


僕は言い返す。


「本当は100億円だけどな」


本当はこっちが本音だ。


「だったらこれくらいの値段にしないとダメです」

そう言って長年手伝ってくれているスタッフが値段を書き換えた。


その値段はデビュー33年目の画家としては妥当な額だった。


確かに数年前の「白亜展」でもそれくらいの価格で僕の絵を買ってくれた人がいた。でもそれは相棒の「愛☆まどんな先生」の価格に合わせたのであって、そんな額を出してくれる神様がそうそういるとは思えない。


「こんな強気で売れるかな?」


「売れます」


「確かにそれくらいの価値はあるし、むしろ100億ほど安いとは思うけど、みんなお金ないし・・」


「それでも買う人はいます」


こんな感じで、周囲のみんなが「作品を安売りしてはいけない」と言うのだ。


確かに安い値段設定は「僕の絵はこの程度の価値です」と作者が言っているのと同じなのでよくない。


僕の知り合いには自分の作品に「日本の防衛費と同じ価格」をつけていた人もいる。


そして世の中には「こんな作品がこんなに高額で取引されてんのかよ?!」と思うような事例も目につく。


あいつの「あれ」が数億なら自分の作品は数十億でないと納得がいかない。


何だか腹が立ってきて「じゃあこの絵は10億!こっちのは20億!」とか言いそうになったのだが、そんなコントをやっている場合ではない。


個展なんかをやるのに全く絵が売れないのも困るのだ。


前回(33年前)の個展ではバカみたいに強気の値段をつけて1枚も絵が売れなかったのだ。

赤字を抱えてばかりいると「次の個展」ができなくなるのも困る。




【シエスタウン】


そんな葛藤が続く中。

まずは「自分が正統だと思う価格」で、自分のネットショップに出品してみることにした。