現代魔法研究会

【シナリオ公開】CoC・新CoC「恐怖のメロディ」

2020/05/21 22:20 投稿

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うっかり卓ゲ祭りを突然開催することになってネタがないよーという人へ、ワイワイやれるCoCのシナリオを公開します。6版7版両対応です。
シナリオの中身を知っていても遊べるし、セッションごとにストーリーがまったく違うものになるように作りました。
もちろん普段のセッションにも使ってください。


概要説明動画はこちら

 

動画で使用する場合は上記の動画を親作品登録してください。

シナリオに不備があった場合、本ブロマガにコメントをお願いします。



※略称

KP:キーパー
PL:プレイヤー(探索者を操作する人)
プレイヤー:特にこう記述する場合、上記KPとPLを合わせた全ての参加者を指す
6版:『クトゥルフ神話TRPG』
7版:『新クトゥルフ神話TRPG』


■シナリオデータ

探索者人数:3~5人
プレイ時間:2~3時間程度(人数や進行速度によってそれ以上)


■はじめに

 このシナリオは『クトゥルフ神話TRPG』(以下「6版」)および『新クトゥルフ神話TRPG』(以下「7版」)に対応したものとなっている。基本的に6版を基準に記述し、7版の場合を注釈で補完する。
 舞台は現代日本を想定しているが、いつ、どこでも構わない。辻褄さえ合えばいいのだから舞台設定として明らかにおかしい点を修正するか、些事に目を瞑りさえすればプレイを阻害することはない。プレイ時間は2~3時間程度の短いものを想定している。ただし細かい描写を省いてテンポ良く進行する場合のものであり、キャラクター同士のやりとりに重点を置くなどの描写を重視してプレイするのであればそれより多くの時間が掛かるだろう。これについては事前にどの程度のテンポで行くかをプレイ想定時間と相談しながら集まったプレイヤーで相談して決定しておくこと。
 シナリオでは参加者全員に独創性とアドリブ力が求められる。PLが受け身ではシナリオ進行に支障をきたすため、積極的に発言・提案するよう求めること。またアイデアに詰まった場合は他のPLから提案するなど、お互いにフォローできればセッションの成功に大きく貢献するだろう。
 このシナリオをプレイする場合、実際のセッションではほとんどの時間シナリオ本文を参照しない。このシナリオの大部分はプレイヤー自身の手で描写していくためだ。調査すべき内容は提示されるものの、どのように調査するかはプレイヤー自身が決定することとなる。その調査方法を〈技能〉と結びつけて描写していくのが本シナリオのコンセプトとなる。そのため、シナリオは同じでも探索者の設定やプレイヤーによってストーリーが大きく異なり、何度でもプレイできるシナリオとなっている。同じプレイヤーで探索者を変え何度もプレイしてみるのも面白いかもしれない。

※注意点
 登場するNPC「襟日(えりひ)」には姓だけで名は設定されていない。特に設定する意味もない。KPは彼を「襟日さん」と呼ぼう。(ここは笑いどころだ。もし万が一にも意味が分からないなら、ラヴクラフトの『エーリッヒ・ツァンの音楽』を読もう)

◆あらすじ
 探索者はある休日、「襟日」という高名な音楽家の茶会に招かれる。和やかに会話が弾んでいったが、襟日が手に入れたという珍しいレコードを聞いたところで奇妙な体験をし、その夜から奇妙な悪夢を見るようになる。
 探索者はレコードにまつわる奇怪な噂を収集し、元凶となったレコードを破壊しなければならない。さもなくば狂気の夢に囚われてしまい正体を無くしてしまうだろう。


◆「調査フェイズ」について
 シナリオの大部分はレコードにまつわる噂を収集する「調査フェイズ」となる。詳しい処理はシナリオ本文に別記する。
 この調査フェイズでは具体的なストーリーはなく、調査対象をKPが提示し、ロールを行う〈技能〉と組み合わせて即興で演出することとなる。具体的にはどのような場面を演出してもよく、それによってシナリオそのものは有利にも不利にもならない。また結果により(ロール結果が致命的失敗でもなければ)耐久力や正気度ポイントが減少するようなこともない。プレイヤーは探索者やその場の雰囲気に合わせて自由に展開を創造してよい。

◆探索者の創造
 探索者の創造に特に制限はなく、また推奨される技能も存在しない。あえて役に立つ技能を挙げるのであれば「全ての技能」だ。使いやすい・使いにくい技能の差はあれど、あらゆる技能が役に立つ。
 職業、年齢も特に制限はないが、有名人の個人的な茶会に招かれるという導入のため、報道・出版関係者、芸能人、著名な学者、スポーツマン、あるいは何らかの一芸に秀でた者がいいだろう。平凡なサラリーマンや学生は不向きだ。しかし導入の雰囲気作りと妥当性という意味でしかないため、KPが許可するのであればその限りではない。

※参考例
 シナリオ筆者が以前行ったセッションでは、「シチリアマフィアのボス」などという探索者が提案された。KPである筆者は、彼が「襟日の欧州活動を支援するパトロン」であれば互いに友好的に進行できるのではないかと提案し、採用された。なお彼は後述する探索パートでは、他の探索者が地元で調査する中、一人だけ欧州を“仕事”で忙しく飛び回っていた。なお別に日本にいなくても調査フェイズの進行上は他の探索者と同じように判定を行い、セッションは問題なく進行していた。

◆KPの事前準備
 本シナリオでは探索者の人数に合わせて“敵”となるレコードの持つPOWステータスが変化する。KPは事前に以下の計算を行い、レコードのPOWを決定しておくこと。
 シナリオでは調査フェイズの行動回数として7調査ラウンドを想定しているが、プレイ時間を短縮するために短くすることもできる。その場合も計算式が変化する。

・計算式
 POW=(探索者の人数×調査ラウンド×0.6)+15(切り上げ)
 (7版であれば上記式の計算結果に更に×5する)

例)探索者が4人、調査ラウンドが7であれば、(4×7×0.6)+15となり、レコードのPOWは端数切り上げで32となる。(7版の場合、これに×5して160となる)


◆登場人物・用語
▼襟日(えりひ) 70代/男性
 世界的な名指揮者と呼ばれる老音楽家。シナリオでの役割は「事件の発端」「神話の被害者」。
 既に音楽の第一線からは退き、郊外の自宅で日々をのんびりと過ごしている。若い頃からレコード集めが趣味で、現在では古今東西の珍しいレコードを買い集めては鑑賞している。色々な人の話をのんびりと聞くことが好きで、ジャンルを問わず各界の有名人や若者を集めては茶会を開いている。
 他に特にこれといった設定はなく、KPは彼の年齢や性別、設定を自由に変更して構わない。指揮者ではなくピアノ奏者、バイオリン奏者などとしてもいいだろう。もし探索者に音楽家がいるのであれば恩師であると設定したり、あるいは現在は小さなピアノ教室を開いているとして探索者をその生徒としてもいいだろう。

▼襟日の手に入れたレコード
 襟日が海外のオークションサイトで落札した、エーリッヒ・ツァンの演奏を収録したレコード。シナリオでの役割は「呪いのアーティファクト」「シナリオボス」。
 レコードにはニャルラトテップの魔力と悪意が込められており、魅了された者を夢を通じてアザトースの宮殿へと招く。犠牲者はやがて狂気の内に怪死や失踪を遂げるが、精神はアザトースの宮殿に縛られたまま「外なる神の従者」と化し、かの神の眠りを慰撫する楽団の一員へと加えられてしまう。

▼エーリッヒ・ツァン
 ラヴクラフトの小説『エーリッヒ・ツァンの音楽』に登場する狂気のヴィオラ奏者。シナリオでの役割は「かつて存在した狂気の芸術家」「忌まわしい逸話」「原作キャラクター」。
 詳しくは原作を読もう。あるいは『エンサイクロペディア・クトゥルフ』を参考にしてもいいだろう。(ただし『エンサイクロペディア・クトゥルフ』ではヴァイオリン奏者と誤記されていることに注意)


■導入

 以下はシナリオの導入である。場面は日曜日の午後、襟日の自宅となる。
 探索者全員が一斉に来訪する必要は特にない。しかし、もし探索者同士が知り合いであるなら同伴するのがスムーズだろう。

◆探索者の来訪
 探索者がやってくると襟日は「よくいらっしゃいました」とにこやかに迎え入れる。
 通された部屋は落ち着いたセンスのいい家具にアップライトピアノが置かれていた。そして何より目を引くのは大きな棚いっぱいに収められたレコードだ。(襟日はレコード蒐集が趣味だ)
 全員が集まると〔襟日の茶会〕に移る。

◆襟日の茶会
 お茶と菓子が探索者に振る舞われ、茶会が始まる。話題は各々がどのような人となりで、仕事は何をしているのか、趣味は何かというようなところから話題を広げていくような形だ。(つまり合コンのようなものだと思えばいい)
 この場面はお互いの探索者の自己紹介も兼ねている。事前に探索者の細かい設定などは話さずにここで会話として組み込むとストーリーに入り込めるだろう。また、今後お互いに連絡を取れるように名刺の交換などを促すといい。
 会話が一段落ついたところで襟日が聞かせたいものがあると言い出す。

▼襟日のレコード
 襟日は棚から古いレコードを取り出し探索者に見せる。
「これは最近、海外のオークションサイトで手に入れた名盤なんです」
「知る人ぞ知る名ヴィオラ奏者の演奏を収めたものなのですが数が少なく長年探していたものなんです」
「素晴らしい演奏なので是非皆さんに聞いて頂きたい」
 襟日がレコードをプレイヤーに掛けると、スピーカーからはヴィオラの悲しげな音色が流れ出す。聞いていると曲調は徐々に早くなり、啜り泣くようだった音色は絶叫するような激情を伴ったものへと変化していく。

 探索者は[レコードのPOW]との抵抗表ロールを行う。(7版の場合、[レコードのPOW]と探索者のPOWを対決させる)
 ロールに失敗した探索者は、このシナリオ中〈幸運〉のロール成功率が半減する。(7版の場合、〈幸運〉の難易度がハードとなる。〈幸運〉自体の数値は変化しないことに注意)

 探索者は曲を聞いているうち次第に朦朧となり、意識が途切れる。
 気がつくと夕日が辺りを赤く照らしている。探索者は路上に立ち、襟日の家の前で解散するところだった。
「今日はとても楽しかったです。またお茶をしましょう」
 にこやかに言う襟日の目はどこか虚ろなものに見える。

 茶会は終わり解散する。探索者は各々の自宅に戻り、やがて床に就くこととなる。
 PLが襟日を疑ったり自分の体に異変が起こったのではないかと疑うのであれば、KPは「シナリオには今日はもうイベントが設定されていない」と説明し解散を促す。

◆悪夢の始まり
※この夜、探索者が眠ると夢の中で再会する。夢の場所はアザトースの宮殿となる。エーリッヒ・ツァンのレコードを聴いた探索者は夢の中で宮殿に招かれるようになった。眠るたびに悪夢は進行し、やがてアザトースとの対面を果たすこととなる。これを止めるためには起点となったレコードを破壊するしかない。

 ふと気付くと探索者全員は見知らぬ場所にいる。見たこともない石で建造された荘厳な宮殿のような、巨大な柱が何本も屹立する広間だ。そこに今日茶会で会い、その後別れたはずの他の探索者もいる。
 探索者はお互い自由に会話できる。KPは適当なところで次の描写を入れ、その後全員を起床させる。

・描写
 突然、怖気と恐怖を伴う気配を感じる。視線を向けていないはずの死角から、無数の何かが自分達を値踏みするように視線を向けている感覚に囚われる。足元から寒気がずるずると這い上がり皮膚を舐める。視界の片隅に粘液を纏った触手のようなものが見え隠れするような錯覚は、果たして本当に錯覚なのだろうか。ずるりと背後の闇が蠢き、肩に何かが触れた……。

 探索者は悪夢から飛び起きる。そこは見慣れた自分の寝室だ。寝間着が冷や汗でぐっしょりと濡れている。
 悪夢を垣間見た探索者は0/1の正気度ポイントを喪失する。


■調査フェイズ

 以下、シナリオは調査フェイズで進行する。調査フェイズの間、探索者はロールを伴わなければ自由に行動できる。ただしその行動によってロールの成否が変化するわけではない。
 KPは以下の調査フェイズの概略と調査ルールをPLに説明する

◆概略
 探索者はこれ以後、毎夜眠るたびに悪夢を見る。その度に悪夢は進行し、最終的に待っているものは破滅しかない。本シナリオの目的は、探索者の破滅を阻止するため悪夢の元凶である「襟日の持つレコードの破壊」となる。
 レコードを破壊するためには襟日の家に赴き、レコードの持つPOWと対決することとなる。ロールに成功すれば探索者はレコードを破壊することができるが、失敗した場合、再びレコードに収められたの蠱惑的な音色を聴きたいという衝動に駆られ、襟日と共に鑑賞会を行い1D6の正気度ポイントを喪失する。
 これ以後、探索者は調査フェイズを行い、対抗手段を模索していくこととなる。調査に成功すれば探索者はレコードとのPOW対決でボーナスを得られる。このボーナスを稼ぎレコードとのPOW対決を有利にすることが調査フェイズの目的となる。調査フェイズは1日を1調査ラウンドとして、探索者は自由に調査を行うことができる。
 シナリオでは分かりやすいようタイムリミットを次の日曜日とし、1週間となる7調査ラウンドを想定している。各調査ラウンドの最後に、KPは〔毎夜の悪夢〕を参照し、描写を行った後に〈正気度〉ロールを行わせる。規定の調査ラウンドが全て終了した場合、その夜は〔エンディング:恐怖のメロディ〕を参照し、シナリオを終了させる。
 KPは調査フェイズの開始時に〔レコードの破壊〕を参照し、シナリオ目的であるレコードの破壊の成功率が現在どの程度なのかを先に計算させ、調査判定の成功ごとにこれが5%ずつ上昇していくと説明するのがいいだろう。

◆毎夜の悪夢
 このイベントは毎調査ラウンドが終了すると同時に発生する。夜間、探索者が就寝すると悪夢を見る。探索者が睡眠を拒んだとしても強烈な睡魔に抗えずに眠り、このイベントが発生する。悪夢は日を追う毎に進行し、正気度ポイントの喪失量も増加していく。描写を終えた後、KPは正気度ロールを行い、探索者を起床させ次の調査ラウンドへと移る。ただしタイムリミットとなる最終ラウンドの終了を迎えると、このイベントは〔エンディング:恐怖のメロディ〕へと移る。
 以下は調査フェイズを7調査ラウンドとした場合の喪失量だ。もし調査フェイズが7調査ラウンドでない場合、KPは描写と喪失量の進行を調整すること。

▼描写および喪失量
(各項目先頭の数字は調査ラウンドの進行を表す)

  1. 探索者は気付けばまたあの宮殿の中にいた。不思議なことに、これが悪夢であることがはっきりと理解できる。しかし同時にこれがただならぬものであることも理解できていた。辺りを這い回る気配は昨夜よりもはっきりと感じることができる。おぞましい感覚に足がすくみ動けないでいると、宮殿の奥からフルートに似た恐ろしげな音色が聞こえてきた……。探索者は0/1D2の正気度ポイントを喪失する。

  2. またあの悪夢だ。自分の意識ははっきりとしているのに、身体が勝手に動き出す。音に導かれるように、意識とは裏腹に宮殿の奥へと足は独りでに進んでしまう……。探索者は0/1D3の正気度ポイントを喪失する。

  3. 恐ろしげな旋律がはっきりと聞き取れる。それは一つ二つではない。無数の聞いたこともない楽器の音色がそれぞれまったく異なった狂気の旋律を奏でているものの、折り重なるさざなみのような音階が混沌とした不自然な調和を生んでいる。本能的な拒否感を伴うにも関わらず、足は意志に反して先へと歩みを止めない……。探索者は1/1D4の正気度ポイントを喪失する。

  4. 意識とは裏腹に足は止まらず、一歩、また一歩と進んでいく。この先に途轍もなく恐ろしい何かが待っていると確信できてしまうのに、身体は自分の言うことを聞いてくれない。恐怖と焦燥に気が狂いそうだ……いや、こんな悪夢を見ている時点で既に気が狂っているのかもしれない……。探索者は1/1D6の正気度ポイントを喪失する。

  5. 進んだ先には一人の老人がいた。それはなんということであろう、あの襟日であった。彼は探索者へと目もくれず指揮棒を一心不乱に振り乱し、ずっと聞こえていた恐ろしい旋律を不気味なハーモニーへと導いている。その目には正気の光は既になく、青ざめた死人のような顔に恐怖と狂気の色を貼りつかせていた……。探索者は1/1D8の正気度ポイントを喪失する。

  6. 探索者は一歩、また一歩と不気味な音色に導かれるように宮殿内を進む。その左右では、奇怪な触手をわななかせる醜悪なヒキガエル、或いはぶよぶよと脹れたイカやタコのようにも見える異形の神々が無数に列を成し、銘々がねじくれた楽器で恐ろしい響を奏でている。そうして立ちはだかる巨大な金属製の門の前に辿り着き、門は独りでに軋みを上げて開いていく……この先は見てはならないと本能が悲鳴を上げる。絶対に見てはならない……! 探索者は1/1D10の正気度ポイントを喪失する。

  7. 〔エンディング:恐怖のメロディ〕に移る。


◆調査ルール
 各探索者は、1調査ラウンドに1回、「調査判定」「支援判定」「レコードの破壊」のいずれかを行うことができる。各ラウンドにどの探索者から行動を行うかについては特に制限はない。
 調査判定には〈アイデア〉〈知識〉〈幸運〉以外の全ての技能を使用可能となる。ただし調査判定に使えるのは、探索者それぞれが1技能につき1回までで、ロールの成否に関わらず再使用できない。調査の結果手に入れた情報は、探索者のレコードに対する恐怖心や忌避感を煽り、それこそがレコードの魅了に対抗するための手助けとなる。襟日がレコードを手に入れた後に見せるようになった眉をひそめるような言動や、レコードにまつわる忌まわしい過去が妥当だろう。例えば「レコードの前の持ち主は著名なピアノ奏者だったが、ある時から何かに脅えるような言動が増え、最終的にコンサートの楽屋で首を吊って自殺した。その遺品がオークションに掛けられたのだ」といったものだ。また、レコードに収録されたヴィオラ奏者「エーリッヒ・ツァン」の奇怪な人生についての逸話も情報内容として妥当だろう。

・探索者が発狂した場合
 直前の〔毎夜の悪夢〕で探索者が発狂した場合、その調査ラウンドのロールの成功率を-20%する(7版の場合はペナルティ・ダイスを1つ受け取る)。この成功率への修正は累積せず、次の調査ラウンドに持ち越されない。
 もし他の探索者によって〈精神分析〉が試みられ成功したのであれば、この修正は打ち消される。当然ながらこのとき〈精神分析〉を行う探索者はこのラウンドに他の行動を行えない。

▼調査判定
 PLは探索者がどのように調査を行い、どの技能でロールを試みたいかをKPに提案する。PLのアイデア次第で全ての技能が調査に妥当性を持つのだ。
 ただしKPは、PLの提案が妥当かを判断する必要がある。特に他の探索者が既に行った調査に酷似したものは却下すべきだし、ロールする技能が妥当なものでなければKPは他の適切な技能でのロールを指示する。この調査ではプレイヤーの独創的な調査が求められる。右倣えの調査では面白くないからだ。(このこともPLに伝えること)
 ただし〈図書館〉については必然的に「図書館・インターネット・新聞などで有益な情報がないか調査する」という内容になるため、独創性は不要となる。この技能は、調査シチュエーションの提案に困ったときに使えるワイルドカードのようなものだと説明する。

・調査判定の結果
 このシナリオでは探索者の調査判定の成功回数を記録する(以下「【成功数】」と記述)。成功した回数だけ忌まわしいレコードとのPOW対決にボーナスが入るのだ。レコードとのPOW対決の際、探索者は[POW+【成功数】]をレコードのPOWと対決させる。(7版の場合、[POW+(【成功数】×5)]となる)
 調査判定がスペシャル(7版の場合はイクストリーム成功)の場合、【成功数】に+1ではなく+2する。決定的成功(7版の場合はクリティカル)の場合、【成功数】を+2D3する。7版の場合、ハード成功の場合は〈幸運〉ロールを行い、成功した場合は成功ランクに関わらず【成功数】に+1する(〈幸運〉成功率が下がっている場合に注意)。
 調査判定が致命的失敗(7版の場合はファンブル)だった場合、その探索者は次の調査ラウンドで行動が行えない。
 なお【成功数】は全探索者で共有する。これはセッションの円滑化を目的とするためであり、探索者同士が連絡を取り合っていなくても適用される。もちろんセッションのストーリー進行上はお互いにある程度は連絡を取り合い、情報を共有する方が妥当性が増すだろう。

・調査の例
 これらは技能を使った調査の例だ。PLがどのように提案すればいいのかが分からないといった場合にはKPはこれを提示する。ただし一度提示した例は、同じような内容の調査を探索者が真似することを禁じること。例を挙げれば挙げるほど制限が大きくなるため、このことはPLに了解を得ること。

〈芸術(ピアノ演奏)〉…この技能は探索者のピアニストとしての技量や地位を表す。探索者には同じ業界にいる襟日のよくない噂が入るだろう。
〈コンピューター〉…襟日がレコードを落札したオークションサイトにハッキングを仕掛け、個人情報を引き出す。その中には恐ろしい事実が隠されているに違いない。
〈経理〉…上記〈コンピューター〉の成功後、手に入れた情報を精査する。襟日が支払った大金が、その後もしかしたら邪神を崇めるカルト集団へと流れているかもしれない。

・調査の提案が秀逸だった場合
 KPは、PLの提案が特に秀逸だと判断したとき、その調査判定の成功率を+10%させてよい。(7版の場合はボーナス・ダイスを1つ与える)
 ただし、このボーナスが与えられるのは1人につき1回までとする。また無闇に与えてはならない。セッションを盛り上げる素晴らしい提案には報いるべきだが、口の上手いプレイヤーがボーナスを独占するようなことがあってはならないからだ。基本的にこのボーナスは与えないつもりでセッションに臨むのがいいだろう。

▼支援判定
 探索者は、そのラウンドの他の探索者1人を対象に調査判定の成功率を上昇させる支援判定を試みることができる。支援判定を行う場合、対象の調査判定より前に〈アイデア〉〈知識〉〈幸運〉のいずれかに成功すると、対象が次に行う調査判定の成功率を+10%する(7版の場合、対象はボーナス・ダイス1つを得る)。この際、成功ランク(スペシャルや決定的成功、7版の場合はハード成功やイクストリーム成功)によってロールへの補正は変動しない。支援判定が致命的失敗(7版の場合はファンブル)だった場合、対象が次に行う調査判定の成功率を-10%する。

▼レコードの破壊
 探索者は調査判定や支援判定を行う代わりに、調査ラウンドの行動として「レコードの破壊」に挑戦することができる。探索者が襟日の家に赴き、もう一度あの素晴らしいレコードの音色を聴きたいなどと話せば襟日は喜んで家に招き入れる。来客の歓待に襟日がお茶を準備しに席を外すなどしたときにレコードの破壊を試みることができるだろう。
 レコードの破壊は、探索者は[POW+【成功数】]をレコードのPOWと対決させる。
 ただしこのとき、ロールの結果が[96~100]であれば成功率に関わらず失敗となる。KPは、調査フェイズの開始時にレコードのPOWとの対決が今どれだけの成功率なのかを先に計算させ、調査判定の成功ごとにこれが5%ずつ上昇していくと説明するのがいいだろう。

・使用システムが7版の場合
 7版の場合、レコードのPOWとの対決は行わず、KPはダイスロールを行わない。結果は探索者のロールが成功したかによってのみ判断する。探索者のロール成功率は[POW+50+(【成功数】×5)-レコードのPOW]となる。

・ロールに成功した
 対決に勝利すれば、探索者はレコードを破壊することができる。その際、できれば「よくもこんなキ○ガイレコードを!」と叫んでほしいが、別にKPはこれをPLに言う必要はない。あくまでシナリオ筆者の願望だ。(意味が分からない人はアニメ『チャージマン研』第16話「殺人レコード恐怖のメロディ」を見よう)
 レコードを破壊した直後、〔エンディング:狂騒の末路〕に移る。

・ロールに失敗した
 探索者はレコードの魔力に魅了され、このような素晴らしいものを破壊するのは惜しい、もう一度レコードの素晴らしい音色を聴きたいと思ってしまう。襟日と共にレコードの音色に耳を傾け、1D6正気度ポイントを喪失する。その後、虚ろな目で幸せそうな顔を浮かべながら帰宅する。


■エンディング

 以下はシナリオのエンディングである。各エンディングの分岐は以下を参照する。

・レコードの破壊に成功した→〔狂騒の末路〕
・規定の探索ラウンドが経過した→〔恐怖のメロディ〕


◆狂騒の末路
 レコードの破壊に成功した場合、このエンディングが発生する。

 レコードが砕ける直前、襟日が部屋に戻ってくる。レコードの砕け散る瞬間を目の当たりにした襟日は愕然とし、その場に崩れ落ちる。
 散らばったレコードの破片が独りでにカタカタと震え、そこから黒い靄のようなものが立ち上る。それは瞬く間に膨れ上がると、狂気と嘲笑の色を伴う忌まわしい笑い声と共に暴風となって荒れ狂う。
 狂気の奔流に呑まれた探索者は、1D3/1D20の正気度ポイントを喪失する。
 やがて黒い靄は夢であったかのように消え失せ、部屋には破壊の痕跡と呆然とする襟日だけが残されていた。レコードの残骸はどこにも存在しない。

 以上でシナリオを終了する。

◆恐怖のメロディ

 規定の探索ラウンドが経過しレコードの破壊に失敗した場合、このエンディングが発生する。このエンディングはバッドエンドである。
 このエンディングでは、探索者は宮殿の最奥で渦巻くアザトースを直視してしまう。

 その夜、探索者が眠ると、悪夢はついに最終局面を迎える。
 大きな銀の門が悲鳴のような軋みを上げて打ち開かれる。その先にいたのは、口にするのもはばかられる、この世のありとあらゆる恐怖と狂気を凝り固めたような混沌とした存在だった。不定形の影は、時間も空間をも超越した全宇宙の中心としてそこに鎮座し、奈落の底で忌まわしいフルートの音色に揺らめきながら渦巻いていた。
 この狂った世界の中心を直視した探索者は1D10/1D100の正気度ポイントを喪失する。

 翌日、襟日が自室で首を吊ったというニュースが報道される。彼が持っていたレコードの行方は杳として知れない。だがあのレコードはどこかでまた犠牲者を生んでいるだろう。
 探索者の正気度ポイントが残っていた場合、悪夢を見ることはなくなる。しかし恐らく、眠る度にまたあの宮殿に招かれるのではないかという恐怖心が心の奥深くに刻み込まれるだろう。

・正気度ポイントがゼロになる
 探索者の正気度ポイントが全て失われた場合、その探索者の精神は悪夢に囚われたまま「外なる神の従者」としてアザトースの眠りを慰撫する楽団へと組み込まれることとなる。現実世界では怪死や失踪、あるいは精神崩壊を起こし狂気のまま精神病院から二度と出ることはないだろう。

 以上でシナリオを終了する。


■セッション終了処理

 シナリオが終了した後、セッションの終了処理を行う。
 探索者へのシナリオクリア報酬として正気度ポイントの回復を行う。エンディングが〔恐怖のメロディ〕の場合、正気度ポイントの回復は行われない。

◆正気度回復
 シナリオをクリアした探索者は2D8正気度ポイントを獲得する。さらに襟日が生存していた場合、1D3正気度ポイントを獲得する。またレコードを破壊することに成功した探索者は、追加で1D6正気度ポイントを獲得する。
 KPは面白い技能の使い方を提示したり、面白い調査シーンを提案したPLに追加で1D3正気度ポイントを与えてよい。

◆その他の処理
 〈クトゥルフ神話〉技能を3%上昇させる。
 襟日のレコードを聴いたことで減少した〈幸運〉への補正を元の値に戻す。
 経験ロールを行う。「経験のチェックマーク」(『6版ルールブック』 P59)/「経験の報酬:探索者成長フェイズ」(『7版ルールブック』P90)を参照すること。
 また、この事件を通し、探索者は情報収集に慣れただろう。またPLもとんちを効かせる能力が高まっただろう。〈言いくるめ〉〈図書館〉〈母国語〉 に一回ずつの経験ロールを行う。これらは通常の経験ロール処理とは別に行ない、それと重複しても構わない。




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