大阪市浪速区日本橋地域編集長 ぽんタブ

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今から数年前、日本橋のメインストリートとして賑わうオタロードで、リアカーを引きながら「宇宙人のツッコミ」という自費出版の本を売り歩いていたおっちゃんがいたことを皆さんは覚えているだろうか?
そのユニークな活動は多くのマスメディアが取り上げ、当時ちょっとした話題ともなったが、その「宇宙人のおっちゃん」こと、金木義男さんを主役にしたドキュメンタリー映画「ろまんちっくろーど~金木義男の優雅な人生~」が完成した。
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月の劇場公開を目前に控え、足掛け3年にわたる撮影を終えたばかりの今井いおり監督に金木さんご本人を交えて、映画完成までの道のりや制作秘話などを聞いてみた。
(インタビュー・文/岡本優)

──当時からずっと気になっていたのですが、金木さんはなぜあの本を日本橋で売ろうと思ったのでしょうか? リアカーを引いていかにも怪しげで、しかも本の内容と日本橋に来る客層とがマッチしているとも思えなかったものですから。


金木 最初の頃は、キタからミナミまでいろんな所を回ってたけど、全然反応がなかった。そんな時、日本橋に「オタロード」という場所があると聞いて、たまたま通ったら、道幅が広くて車の量が少ないから、ものすごく回りやすかった。それで最終的にあそこに落ち着いたわけです。20126月に日本橋から「卒業」するまで、オタロードには結局5年半通ったかな。


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オタロードで本を積んだリヤカーを引いていた頃の金木さん

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当初自費出版として発行した「宇宙人のツッコミ」は、その後、兵庫県西宮市の出版社「ラルース・パブリッシング」により書籍化された。現在はamazonなどの大手通販サイトでも購入できる。

──当時の日本橋での思い出などは?

金木 リアカーで本の売り歩きなんかして、商売の邪魔になってへんか心配してたけど、メイドさんや電気屋のおっちゃんがものすごくかわいがってくれて、いろんな人が本を買ってくれた。でも、オタロードで1500冊以上売れたのに、反応は何一つない。中身の言葉は単純で、何もそんなに難しいことは一つもないのに…… 結局、内容は関係なくて、話のタネとして面白いからノリで買うてくれた感じやろうね。

今井 僕はめっちゃ反応してるよ。

金木 いや、してない。

今井 2年間反応してるよ。

金木 してない。

──金木さんが普段考えていることを、一言で言い表すとしたらどういう感じなのでしょうか。


金木 人間問題の解決。戦争とか食糧危機とか、あらゆる問題を全部まとめてなくす。

今井 ……金木さんって、学生の頃国語の成績はどうやったんですか?

金木 ゼロ! 今でもそうですけど、読めるのはかなり読める。書くのはちょっと。

今井 ……国語力ゼロの人が、本を出すんですか?

金木 Wordのおかげですやん。

今井 いやいやいや(笑)。金木さんの思ってはることや、考えてはることはものすごくいいことなんですよ。

金木 当たり前や。

今井 だから、国語力ですよ。文章には、主語とか述語とかね、そういうものの順番がありますやん。それが、ちょっとだけおかしいんですよ。だからみんな「あれ?」ってなっちゃうんですよ。

金木 七五調にして、ものすごく読みやすいようにしてるんやけどな。浜村淳みたいに。

今井 だから、あの本に足りないのは、国語力だけですよ。思いはめっちゃええんですよ。お釈迦さんと変わらないですよ。

金木 いや、変わらへんやない。超えてる。

今井 お釈迦さんと同じぐらい世界を平和にしたいと本気で思っているから、あの本を出した。それはすごいことなんですよ。ただ、国語力がないから伝わらない。

金木 自信あるのに……。七五調……。そうそう、あの本の内容を要約して、これまで何度か展示会をやってたんですよ。それを読んだ人から「おっちゃん、これ詩やね」って言われたことあるねん。見てみい、詩やで!

今井 でも、詩ってわかりにくいやないですか。

金木 ああ、そうか。上下が飛んでるし、感情がピタッと合う人じゃないと分からへんし。あれは、大阪弁で書いてるからや。論文みたいにピシっと書いたらみんな分かってくれるよ。ホンマは司馬遼太郎みたいに書けるし、いっぺん書いてみたことあるんやけど、全然自分とちゃう。だからやめてん。書けるけど、あえて書かないだけで。

今井 (サッカー日本代表の)本田選手みたいですね。

金木 どういうこと?

今井 普通にフリーキックを蹴ったら入るから、あえて蹴らないそうですよ。

金木 あいつはホンマにかっこええな。

──日本橋の話に戻しましょう。金木さん、リアカーで本を売り始めた数年前と比べて、今の日本橋は変わりましたか。


金木 毎日行かなくなってからもう2年ぐらい経つけど……

2)に続く
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「ろまんちっくろーど~金木義男の優雅な人生~」は、82日から十三・シアターセブンで公開。映画の公式サイトはこちら



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