マル激!メールマガジン 2015年6月10日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第739回(2015年6月6日)
なぜ「安保法制」は間違っているのか
ゲスト:柳澤協二氏(国際地政学研究所理事長)
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リスクは確実に高まるのに、メリットが見えない。それが安倍政権が成立を目指す安全保障関連法案をめぐる国会論争でここまで明らかになったことだ。
憲法9条を変更しないまま集団的自衛権の行使を可能にする法改正を行うことは論理的に不可能との指摘が、多くの憲法学者や国防の専門家から行われているが、政府はのらりくらりとした答弁で国会審議を乗り越え、数の論理で押し切れると考えているようだ。
国家の「存立危機事態」という新たな概念を作り、その場合に限って、自国が攻撃を受けていない場合でも他国を攻撃できるとするのが「安保法制」の肝だが、野党側が繰り返し「存立危機事態」とはどのような事態を指すのかを質しても「政府が総合的に判断する」とした答弁しか返ってこないのだから話にならない。ここまでの議論を聞く限り、政府が武力攻撃をしたい時にできるようにする法律を作ろうとしていると言わざるを得ない。
今回の法改正には大きな問題がある。それはこの法改正がどのような形で日本の安全保障に寄与するかが、まるで見えてこない点だ。今回の法改正を適用し、日本が自国を攻撃していない国に武力攻撃を行ったり、存立危機事態と並ぶ新要件である「重要影響事態」を理由に、アメリカの戦争に兵站を提供した場合、日本の自衛隊が攻撃を受けるリスクはもとより、敵国とみなされた日本人が海外で殺害されたり誘拐されたりするリスクや、日本の国土が武力攻撃を受けるリスクが増すことは明らかだ。その一方で、そのリスクと引き替えに日本がどのようなメリットを享受できるのかが、さっぱり見えてこない。
論理的にどのような可能性があるかを考えてみても、日本が集団的自衛権を行使してまでアメリカに尽くす意思を見せれば、万が一中国が攻めてきた時に、アメリカが日本を助けてくれる可能性がより高まるというようなものしか考えられない。しかし、常に自国の国益を最優先するアメリカにそのようなナイーブな論理が通用するとは到底思えないのだ。
なぜ今、集団的自衛権に踏み出す必要があるのか。その場合のリスクとメリットはどのような関係にあるのか。この法律が成立すれば日本の防衛政策は根本的に変質し、これまで70年間かけて日本が世界に築いてきた平和ブランドが深く傷ついてしまうことへの強い危機感を募らせる東京外国語大学教授の伊勢崎賢治氏とジャーナリストの神保哲生が、元防衛官僚で第1次安倍内閣で内閣官房副長官補を務めた柳澤協二氏と議論した。
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今週の論点
・安保法制の概要と、その意味
・「後方支援」とは何を指すのか
・「存立危機事態」という、矛盾のデパート
・日本が戦端を開くというリスクと、国民がいますべきこと
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