マル激!メールマガジン 2014年9月17日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/
──────────────────────────────────────
マル激トーク・オン・ディマンド 第700回(2014年9月13日)
スコットランドの独立が問う新しい国のカタチ
ゲスト:宮島喬氏(お茶の水女子大学名誉教授)
──────────────────────────────────────
 スコットランドで9月18日、大英帝国からの分離独立を決める住民投票が実施される。1年前は反対派が多数を占め、まだ夢物語の感が強かった分離独立運動だが、投票日を1週間後に控えた世論調査では、僅かながら独立賛成派が反対派を上回ったという。
 お茶の水女子大学名誉教授で、特にヨーロッパ社会を研究しているゲストの宮島喬氏は、サッチャー政権の成立以降、イギリスの中央政府が労働党政権から保守党政権に代わったことで、労働党が多数を占めるスコットランドでは不満がたまっていたと解説する。
 しかし、今回のスコットランドの独立の動きを、単なるイギリスからの分離・独立運動として理解すべきではないと、宮島氏は言う。ヨーロッパがEUによって統合される中、スコットランドは既にEUにオブザーバーとして参加するほか、イギリス政府の頭越しに、EUから産業育成や地域活性化の補助金を受け取っているという。独立後、EUに加盟すれば、独立前とそう変わらない日常が送れるのではないかという見込みと期待がある。
 これに対して英国中央政府は当然反対の立場だ。スコットランドの人口約520万人はイギリス全体の約8.5%を占め、GDPも約8%にのぼる。またEUも複雑な立場にある。EU内にはスコットランドの他にも、国家からの分離・独立を要求している地域が多く存在する。スコットランドが独立国としてすんなりとEUへの加盟が認められるようなことがあれば、そうした地域の独立の動きにも拍車がかかることは目に見えている。
 宮島氏は独立運動が起きている地域では、地域内で支持される政治勢力が、中央では少数派となり、自分たちの意志が通りにくくなっていることへの不満があると指摘する。一方、現実的な独立運動に繋がるかどうかまだ未知数ではあるが、沖縄はまさに自分たちの主張と中央政府の政策の矛盾に晒されている典型的な地域と見ることができる。宮島氏は、分離独立運動で重要になるのが地域の交渉力だという。「日本の地域は、まだ国家への忠誠と自らのアイデンティティに引き裂かれているが、欧州では、地域が国家と交渉し、契約するという意識が強い」と言う。
 スコットランドの独立運動が問題提起している既存の国家という枠組みの限界をわれわれはどう考えればいいのか。冷戦が終わり、グローバル化が進む中、国家が持つ意味や役割はどう変わるのか。ゲストの宮島喬氏とともに神保哲生と宮台真司が議論した。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
今週の論点
・スコットランド独立運動の経緯とは
・スコットランドが意図する「EUの中での独立」
・国家と交渉する、主体性を持った地域のあり方
・“沖縄の自治”のリアリティ
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++