マル激!メールマガジン 2014年6月18日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第687回(2014年06月14日)
ドイツ・エネルギー倫理委員会報告と日本の原発政策
ゲスト:山脇直司氏(哲学者・東京大学名誉教授)
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安倍政権が示した原子力規制委員会の人事が6月11日に国会で承認された。5人の委員のうち2人を任期切れに伴って交代させる人事だが、その一人田中知氏は一昨年まで原子力推進団体の理事として報酬を得ていたうえに、東京電力系の財団からも4年半にわたって報酬を受けていたという。原発再稼働を目指す安倍政権の下で原子力ムラ復権へ向けた動きがいよいよ露骨になってきている。
ドイツの脱原発政策については、いろいろな評価があるかもしれない。日本とは条件が異なる面も多い。しかし、少なくとも福島原発事故後のエネルギー政策を決定するためにドイツが採用した「手続き」は日本とは雲泥の差があるもので、お手本にすべき点が多い。
福島原発事故の後ドイツは技術面のみならず、倫理面からも原発の妥当性を有識者による公開の会議で徹底的に議論した上で、最後はメルケル首相の政治的決断によって2022年までの脱原発という決定を下した。中でも首相が設置した「安全なエネルギー供給に関する倫理委員会」はドイツのエネルギー政策に正当性を与える上で重要な役割を果たした。
哲学者で公共倫理の観点から原発問題に対して発言を続けてきた東京大学の山脇直司名誉教授は「当初、脱原発に関して揺らいでいたメルケル首相は、日本ほどのハイテク先進国で福島原発事故が起きたことを目の当たりにして、そのリスクの大きさを再認識した」と話す。報告書は「原子力エネルギーの利用やその終結、そして他のエネルギー生産による代替についての決定は、すべて社会における価値決定にもとづくものであり、これは技術的側面や経済的側面よりも先行する」とし、人間の健康や地球環境といった倫理的な価値を技術や経済よりも優先して考慮されるべきだとして提示し、その上で技術や経済的なリスクを吟味して「包括激なリスク評価」の結果として上記のような結論に到達している。
一方、事故の当事国だった日本はどうか。端から原子力行政の利害当事者を排除できないまま発足した原子力規制委員会の人事は言うに及ばず、汚染水が漏れ続ける中での野田政権による冷温停止状態発言と事故収束宣言、そして安倍政権は臆面もなく原発輸出のトップセールスを続け、事故原因の検証すら不十分との指摘がある中で原発を日本の「ベースロード電源」と位置付けるエネルギー基本計画まで閣議決定してしまった。
2011年に出されたドイツの「安全なエネルギー供給に関する倫理委員会」報告書を参照しながら、倫理的な原子力エネルギーの評価やリスクの認知、比較衡量の考え方と倫理的な対立、公共哲学の役割と機能、倫理本来の在り方などについて、ゲストの山脇直司氏と共にジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・ドイツが倫理で決断できる理由
・フクシマがドイツに与えた衝撃
・3.11以後の公共哲学を考える、5つの視点
・日本における価値教育の必要性
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