マル激!メールマガジン 2014年4月23日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第679回(2014年04月19日)
武器輸出解禁で日本が失うものとは
ゲスト:加藤朗氏(桜美林大学リベラルアーツ学群教授)
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安倍政権は「武器輸出三原則」と呼ばれるその方針を破棄し、武器輸出を可能にする政策への転換を4月1日に閣議決定した。武器輸出三原則は1967年に佐藤政権が主に共産圏や紛争国に武器を輸出しない方針を表明し、76年には三木政権が基本的にどこの国に対しても武器輸出は慎むとの方針に格上げして以来、約半世紀にわたり日本が守ってきた一線であり、非核三原則と並び日本の戦後平和主義を象徴する政策でもあった。
しかし安倍政権は日本を取り巻く安全保障環境の変化を理由に、国会の議論を経ずに閣議決定という形で、重大な政策変更を強行してしまった。
政府は政策変更のメリットとして、米国をはじめとする友好国と最先端の武器の開発プロジェクトへの参加が可能になることで、高いレベルの技術共有が可能になると説明している。また、これまで地雷除去装置のような人道目的で使われる装置も、法律上は武器として扱われるため、友好国に輸出することができなかったが、それも可能になると、そのメリットを主張する。しかし、日本で作られた武器が戦争に使われて、殺傷される人が出る可能性が生まれることは、戦後政策の大きな転換となることはまちがいない。その結果として日本が失うものが何なのかを、政府は十分に精査できているのだろうか。
しかも、政府が強調するメリットそのものが、どうも怪しいという指摘が根強い。国際的な武器取引や安全保障問題に詳しい桜美林大学教授の加藤朗氏は、今回の政策転換で武器輸出を解禁したところで、そもそも日本の防衛産業には国際的な武器市場での価格競争力がないため、日本の武器が世界で広く流通するような状況にはないと語る。また、共同開発に参加をしても、最先端技術の部分はブラックボックス化されていて、日本にそのノウハウが落ちてくると考えるのは安易過ぎると加藤氏は指摘する。
加藤氏は、正に武器輸出三原則が「非核三原則とともに平和憲法を具現化する外交上の宣言政策」(加藤氏)だったからこそ、安倍政権にとってそれを破棄することに意味があったのではないかとの見方を示す。つまり、実質的な効果やメリット云々よりも、日本が「武器も輸出できる普通の国」になったことを世界に知らしめるアナウンスメント効果に今回の政策転換の真意があるのではないかと言うのだ。
しかし、安倍政権はその政策変更やアナウンスメント効果が、かえって中国や近隣諸国を刺激して、さらなる緊張の拡大や軍拡へと繋がる可能性を精査した上での政策変更だったのだろうか。それによって日本が失うものとは何なのか。ゲストの加藤朗氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・できることは変わらないのに、なぜ文言を変えるのか
・「防衛装備移転三原則」で失われるもの
・日本が持つ「平和ブランド」の価値とは
・「平和ブランド」喪失のコストをどう払うのか
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