マル激!メールマガジン 2026年8月26日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1324回)
副首都法から大阪都構想へという強引な流れは一度断ち切るべきだ
ゲスト:幸田雅治氏(弁護士・神奈川大学名誉教授)
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 何のための、誰のための副首都法なのか。
 国会会期を延長してまで通した副首都法だったが、背景には日本維新の会が強く主張してきた大阪都構想があり、政治的な動きばかりが目立つ。その一方で、この法律は住民にとってどういう意味があり、どのような課題があるのかが見えてこない。
 自民・維新の連立合意書にかかげられていた副首都法案は、与党が多数を占める衆議院を通過したあと、国会の会期を延長して参議院で審議入りし、7月24日に賛成123票、反対121票の僅差で可決した。国土政策にかかわる重要な内容であるにもかかわらず政府提出ではなく議員立法という形で提出されたこの法案は、議論が不十分なまま極めて短時間で成立している。
 副首都法は大規模災害に備え副首都を整備することを目的としているが、その要件は今後政令で定めるとされており、国の出先機関をどうするかや、すでに決定されている国土計画との関係など、不明な点が多い。地方自治が専門の幸田雅治・神奈川大学名誉教授は、大規模災害という観点からいっても、首都直下地震だけでなく南海トラフ地震などの大規模災害が想定されていることを考えれば、首都機能の複数地域への分散を考えるべきで巨大な副首都をつくる合理性はないと指摘する。
 維新がこの法律の成立を急いだ背景には、大阪都構想がある。大都市大阪の「市」を廃止して東京23区と同様な特別区を設置する大阪都構想は、これまで2度の住民投票で否決されてきた。吉村代表は、副首都法成立後の記者会見で、来年の統一地方選挙に合わせて大阪都構想の住民投票の同日実施を目指したいと発言し、物議をかもした。成立した副首都法の付帯決議に、地方選と住民投票の日程が重複しないように最大限調整する、とあるにもかかわらずの発言だったからだ。
すでに、8月7日の大阪都構想の法定協議会では、現在の大阪市を4つの特別区に分ける案が示されており、今後これをもとに議論が進んでいくと考えられている。
 大阪市を廃止して特別区になるとどうなるのか。東京23区の例で考えれば、これまで大阪市が行っていた教育や福祉、ゴミ処理といった行政サービスが特別区の事務となり、権限と予算が区に移譲される。市立小学校が区立となり、市民税ではなく区民税を納めることになるのだ。一方でまちづくりなどの都市計画や消防・救急といった業務は大阪府が行うことになる。
 住民に最も身近な行政サービスを行う基礎自治体としての大阪市は現在人口280万。これを区分けして小規模にして住民により身近な自治体とし、大都市としての一体性を保つための機能は大阪府に移行する、という考え方自体はありうると語る幸田氏は、今の維新のやり方に住民自治の発想がないことを問題視する。
 特別区になれば区長、区議会議員も公選制となるが、大阪都構想の場合示されている議員数が他の同規模の自治体と比較して極端に少ない。区割りも含め、どういう街にしてゆくのか、市民が判断できるように提示して議論を積み重ねてゆくようなプロセスが見えてこないまま住民投票を繰り返すやり方でよいのかと、幸田氏は疑問を呈する。
 東京23区が基礎自治体として定着する過程では住民がともに考え選択してきた経緯がある。住民自治こそが重要だと考える幸田雅治氏と、社会学者の宮台真司、ジャーナリストの迫田朋子が議論した。

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今週の論点
・十分な議論なくスピード採決された副首都法の問題点
・首長選挙のどさくさに紛れて住民投票を強行するべきではない
・維新が進める大阪都構想のリスク
・大阪都構想に欠けている「地方自治」の発想
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■ 十分な議論なくスピード採決された副首都法の問題点
迫田: 今日のテーマは副首都法と大阪都構想です。副首都法は先月、国会の会期の最後で決まってしまいました。普通であれば決まる前にどういう問題があるのかを議論しなければならないのですが、あっという間でした。

宮台: 当時は皇室典範改正と全く同時だったので、どちらかというとそちらに報道が集中しましたし、マル激もそうなりました。

迫田: 最後は成立しましたが、その背景には日本維新の会の大阪都構想があると言われています。そこには一体どういう関係があり、この先どうなるのでしょうか。私たち住民にとってはどういう影響や意義があるのかということを、地方自治の専門家の先生をお招きしてお話を伺いたいと思います。これは大阪だけの問題ではなく、自分たちの町の自治を考える良いきっかけでもあると思います。

 本日のゲストは、弁護士で神奈川大学名誉教授の幸田雅治さんです。幸田さんには、市町村合併で地域の防災力が低下しているというテーマを扱ったときに一度出ていただきました。今回は副首都法についてですが、「副首都」とだけ聞くと良い感じがしますね。

宮台: 首都一極集中を分散するのかなと思いますよね。

迫田: まずはどういう経緯で副首都法ができたのかということを見ていきます。2023年に維新が一度国会に提出しているのですが、これは通りませんでした。去年、自民と維新の連立合意書に副首都法案の成立が書かれ、国会に提出されたのは6月です。これは自民と維新の議員立法で、副首都という大事な話なのにもかかわらず政府提出法案ではありませんでした。また、同じ日に国民民主がこれに対抗する形で特別市設置法案、同日選実施禁止法案を提出しました。
副首都法が衆院で審議入りしたのは6月30日で、7月15日に通過しました。副首都法を通すためと言っても良いと思いますが、そのために国会の会期延長を決定し、7月22日に参院で審議入りしました。7月24日には参院で可決し、賛成123票、反対121票で成立しました。この経緯をどう見ていましたか。

幸田: 副首都法案の中身については後で出てくると思いますが、国土がどうあるべきかという、国土政策に関わる重要な問題が議員立法で出され、それが非常に短期間に成立してしまったということには大変驚きました。

迫田: 国土に関わるものであれば、例えば国土交通省や総務省などいろいろな省に関わるので、政府としてどういうふうにするかということをある程度考えなければなりません。そうでなければ普通は法律にはできませんよね。

幸田: そうですね。副首都をどう定義するのか、あるいはそういったものを国土の中で重要なものとして位置づけるのが良いのかどうかということは、国土政策に関わることです。政府は昔から多極分散型国土形成というものを推進していますが、それと副首都はどういう関係なのかなど、国土政策のあり方そのものについての議論がされないまま議員立法で出され、それが短時間で成立したということは、政策決定のやり方としては大変問題があると思います。

迫田: 明らかに政治的に思えますよね。

宮台: 正確に言えば、維新との連立なので、いろいろ協力してもらう以上は維新の顔を立てなければいけないという、政治的バランスの問題になってしまったということですよね。