マル激!メールマガジン
勝村久司氏:国民医療費抑制の議論に欠けている「患者」という視点
2026/05/13(水) 20:00
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マル激!メールマガジン 2026年5月13日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1309回)
国民医療費抑制の議論に欠けている「患者」という視点
ゲスト:勝村久司氏(「医療情報の公開・開示を求める市民の会」世話人)
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医療費の増大をどう抑えるのか。いま日本の医療政策は、その一点に強く引き寄せられている。
健康保険法等改正案が4月28日に衆議院を通過し、現在、参議院で審議が続いている。改正案には、市販薬としても流通している処方薬について患者に追加負担を求める制度や、後期高齢者医療制度における保険料や窓口負担に金融資産を反映させる仕組みなどが盛り込まれた。さらに、いったん凍結された高額療養費制度の自己負担上限額引き上げも、一部の低所得者などを除いて今年8月から実施される方向が固まっている。
背景にあるのは、膨張を続ける国民医療費だ。高齢化と医療技術の高度化を背景に、2023年度の国民医療費は48兆円を超えた。財政の持続可能性を考えれば、負担能力に応じた負担増や世代間の公平化が必要だという議論には一定の合理性がある。しかし、その議論のプロセスにおいて、実際に病を抱え、日々治療を受けている患者たちの声は、どこまで反映されているのだろうか。
その問題が一気に表面化したのが、高額療養費制度の見直しをめぐる議論だった。
現行制度では、患者が1カ月に支払う医療費には年収に応じた上限が設けられており、それを超えた分は公的医療保険が負担する。重い病気や長期治療を必要とする患者にとって、この制度は文字通り命綱ともいえる制度だ。しかし、政府は一昨年末、この上限額を大幅に引き上げる方針を事実上の既定路線として予算案に盛り込もうとした。
これに強く反発したのが患者団体だった。短期間のうちに当事者の声が集まり、「これ以上負担が増えれば治療を断念せざるを得ない」「生活そのものが立ち行かなくなる」という切実な訴えが社会に広がった。その結果、政府は昨年3月、いったん引き上げを見送る判断を余儀なくされた。
この問題は、単なる財源論ではない。誰のための医療制度なのかという、制度設計そのものの問題を浮き彫りにした出来事だった。
今回のゲスト、勝村久司氏は、中央社会保険医療協議会、いわゆる「中医協」で初めて患者代表委員を務めた人物だ。医療事故の被害当事者でもある勝村氏は、長年、医療制度改革の議論に患者の視点を持ち込む活動を続けてきた。
勝村氏によれば、日本の医療費議論は、往々にして医療業界団体同士の利害調整に終始しがちだという。診療報酬や薬価の決定過程では、医師会、病院団体、製薬業界などの意見は強く反映される一方で、患者の声は制度的にきわめて弱い立場に置かれてきた。
しかも、議論は「医療費総額をどう抑えるか」という抽象論に偏りがちで、「どの医療に、なぜ、その価格がついているのか」という中身の議論がほとんど行われていないと勝村氏は指摘する。
なぜ、その薬に高い薬価がつくのか。なぜ、その加算が必要なのか。逆に、本当に必要な医療行為の評価が不当に低く抑えられてはいないか。
そうした議論抜きに、単に総額抑制だけを進めれば、最終的にしわ寄せを受けるのは患者だ。
勝村氏が中医協委員時代に力を入れたのが、診療明細書の無料発行の義務化だった。現在では、医療機関で必ず患者に渡される診療明細書には、検査や処置、薬剤名、そしてそれぞれに対応する診療報酬点数が記載されている。しかし、この制度が実現する以前、患者は自分がどのような医療を受け、その医療にどれだけの公的費用が使われているのかを知る手段すら乏しかった。
勝村氏は、患者が医療の内容とコストを知ることではじめて、医療制度の議論に主体的に参加できるようになると主張する。
医療制度改革は、単なる財政論なのか。それとも、社会が「命」とどう向き合うかという価値判断の問題なのか。患者負担増が次々と議論される中、医療制度の意思決定に患者の声をどう反映させるべきなのかについて、勝村久司氏と、社会学者の宮台真司、ジャーナリストの迫田朋子が議論した。
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今週の論点
・患者団体の取り組みで大幅な上限引き上げが見送られた「高額療養費制度」
・中医協で初の「患者代表」をつとめた勝村氏の思い
・病院の赤字問題は中身の議論が重要だ
・医療改革に「患者」の視点を
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■ 患者団体の取り組みで大幅な上限引き上げが見送られた「高額療養費制度」
迫田: 今日は医療のお金の話をしようと思います。例えば高額療養費制度というものがあり、払う金額には上限が設けられ、それ以上は払わないで済むという制度ですが、多くの人は8月から負担が少し上がります。また薬についても議論中です。病院で出てくる薬と同じものを薬局で売っていた場合、病院でもらう薬の値段が25%上乗せされるようになります。
医療のお金の話は難しいので、いつの間に上がっているということが起きます。本当に受け身だけで良いのか、今日は議論していきたいと思います。
宮台: 医療費抑制は、予算の規模が全体として限られている以上、優先順位の問題もあり、ある程度は仕方がない面があります。しかし仕方がないからといっても、実際に現場の患者さんたちにとってどういう不利益な変更になるのかということを、僕たちは詳細に知る必要がありますね。
迫田: 気づいたときには遅いということにならないために、何が必要なのかということも考えていきたいと思います。本日のゲストは「医療情報の公開・開示を求める市民の会」世話人の勝村久司さんです。勝村さんは診療報酬を議論する中央社会保険医療協議会(中医協)に、患者委員として初めて入られた方です。市民の立場から医療の問題について色々な発言をされていますが、もともと医療に詳しかったわけではないんですよね。
勝村: 全く普通の高校教員だったのですが、1人目の子どもを医療事故で亡くしたことがきっかけで医療問題に関わるようになりました。
迫田: 医療情報を患者、あるいは市民の側にという思いで活動されてきました。少しは良くなってきていますよね。
勝村: そうですね。昔は患者が自分の受けた医療の情報を知りたいと思っても知ることができませんでしたが、今はそれができるようになっています。しかし患者が医療に関わっていくという意味では、まだこれからだと思っています。
迫田: 制度が難しすぎてなかなか理解が追いつかないところがありますよね。
勝村: はい。これからは、患者の関わり方によっては医療の中身を自分たちの価値観に合わせて見ていける時代になりつつあるので、今が大事な時だと思います。
迫田: 実は今、国会で健康保険法等の改正案が議論されています。4月28日に衆議院本会議で可決され、今は参議院で審議中です。
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