マル激!メールマガジン

山口広・有田芳生:なぜ日本だけがここまで統一教会の食い物にされたのか

2022/08/17 20:00 投稿

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マル激!メールマガジン 2022年8月17日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/)
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1114回)
なぜ日本だけがここまで統一教会の食い物にされたのか
ゲスト:山口広(弁護士、全国霊感商法対策弁護士連絡会代表世話人)
    有田芳生(ジャーナリスト、前参院議員)
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 安倍元首相の銃撃事件をきっかけに統一教会に社会の注目が集まっている。犯人の山上徹也容疑者が、母親の統一教会への入信を機に家庭生活が崩壊し、その恨みの矛先を統一教会と関係が深いと思われる安倍元首相に向けたことが、蛮行の動機になったと供述していることを警察が発表したためだ。
 その後、100人単位で自民党の議員と統一教会の間に協力関係があったことが明らかになり、安倍首相の暗殺劇に端を発する統一教会問題は、壮大な政治スキャンダルに発展する様相を見せ始めている。
 テレビ各局で生中継された8月10日の外国特派員協会での統一教会幹部による会見では、田中富広会長が、社会を騒がせていることを謝罪しつつも、自分たちは一切悪いことはしていないという自己弁護を延々と繰り返すばかりか、むしろ自分たちは不当な迫害を受けている被害者であるとまで主張し、宗教的な迫害で国連に提訴することまで匂わせたことが話題となった。
 同日には岸田首相が内閣改造を行うにあたり、統一教会との関係がないことを最優先で閣僚を選ばなければならないほど、今や統一教会は岸田政権にとっても最大のリスク要因の一つとなっている。
 しかし、ここに来てあらためて統一教会問題の実相に目を向けてみると、なぜこれだけ多くの被害者を生み、逮捕者まで出している教団の日本での布教活動が、これまで黙認されてきたのかとの疑問を持たずにはいられない。今回、その背後に統一教会と政治の関係、とりわけ自民党との強いパイプがあったことが、次々と明らかになり、特に、違法な勧誘活動を取り締まる立場にある警察に影響力を持つ警察OBや元国家公安委員長経験者、宗教法人を管轄する文部科学省の大臣、副大臣経験者などに重点的に食い込んでいたことが浮き彫りになったことで、統一教会が信者からの寄付や、印鑑や壺などを法外な値段で売りつける、いわゆる霊感商法によって、日本から600億円とも言われる資金を韓国に送金し続けることができた背景にあったカラクリの一端が見えてきている。とはいえ、なぜ日本だけが外国の宗教団体である統一教会に付け狙われ、実際にそこまで被害を拡大させたのか。その背景にはもう少し複雑な事情がありそうだ。
 そもそも統一教会が最初に日本進出を果たした1950年代末から1960年初頭にかけて、当時の岸政権は共産主義勢力への対策に頭を悩ませており、統一教会の反共団体としての性格に利用価値があると考えて、日本国内での活動を支援したという。1968年に反共団体で統一教会の関連団体である国際勝共連合が設立された時、笹川良一氏が名誉会長に就任している。統一教会の創始者の文鮮明氏が岸首相や笹川氏と昵懇の関係にあったことは、多くの歴史的資料によって裏付けられている。外国の宗教団体とは言え、時の首相や右翼の大物の庇護を受けていれば、容易に日本に地歩を築くことができても不思議はない。
 しかし、その後霊感商法などと呼ばれ、多くの被害者を出した統一教会による日本における積極的な信者集めや販売促進活動は、1970年代以降に本格化している。統一教会の被害者の代理人を務める山口広弁護士によると、この時、統一教会に取り込まれた日本人信者の多くは、日本が歴史的に韓国に酷いことをしてきたことの償いが必要であるという言説に容易に説得され、自分は韓国由来の宗教の統一教会に尽くすべきだと考えるに至ったと語る。根底には統一教会に根付いているエバ国家の日本はアダム国家の韓国に奉仕しなければならないという教義がある。
 もちろん経済成長の中で家族や共同体との結びつきが希薄になり、孤独な境遇にある人が狙われたり、自身や家族に病人を抱えていたり、不幸があった人などを付け狙うといった、新興宗教の特有の勧誘手法はふんだんに使われていた。しかし、それは日本に限ったことではない。なぜ日本だけがここまで外国の宗教団体の食い物にされたのかについては、しっかりとした整理が行われる必要がある。なぜならば、そこには他国と比べた時の日本の政治体制、行政制度、社会制度の弱点が凝縮されている可能性があるからだ。
 今週は35年にわたり、統一教会の霊感商法の被害者や多額の寄付をした後に脱会した元信者らの代理人として統一教会と交渉を続けてきた山口広弁護士と、ジャーナリストとしてこの問題を追い続けてきた有田芳生氏に、8月10日の記者会見で統一教会から上がってきた様々な主張の妥当性を問うた上で、なぜ統一教会が日本でここまで勢力を伸ばすことができたのか、自民党との太いパイプは何を意味しているのかなどについて、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司と議論した。

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今週の論点
・統一教会と自民党の太いパイプ
・韓国に貢ぎ続ける日本人信者
・日本が食い物にされる、歴史的な積み上げ
・タガが外れた政治との関係、騒ぎすぎるくらいでいい
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■統一教会と自民党の太いパイプ

神保: 今回は宮台さんが途中参加となり、いつもと違うメンバーでマル激をお送りしようと思います。全国霊感商法対策弁護士連絡会の代表世話人をされている山口広弁護士と、前参院議員で統一教会問題にも長くかかわっておられるジャーナリストの有田芳生さんです。番組前に顔合わせをしたら、お二人は何十年来の友人に再会したような感じで。

山口: 統一教会問題を始めたころからですから。

有田: 1987年からですかね。僕は朝日ジャーナルで霊感商法批判をやっていて、山口さんたちが弁護士連絡会を作って。そのときから車の両輪のようにやってきました。

神保: おそらく、日本で最も長く統一教会問題を一緒にやってきた二人になると思います。最初に伺いたいのですが、安倍さんが撃たれ、ここにきてまさかの形で統一教会問題が表に出てきたことについて、どう受け止めましたか。 

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