マル激!メールマガジン 2021年11月3日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/)
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1073回)
5金スペシャル
これがマル激的総選挙・最高裁審査の争点だ
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 その月の5回目の金曜日に特別企画を無料でお届けする5金スペシャル。総選挙直前となる今回はゲスト抜きで、この4年間マル激で取り上げてきたさまざまなテーマを振り返りながら、この選挙で何が問われているのかを様々なアングルから、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。また、先週取り上げた最高裁裁判官の国民審査についても、主要な判決でどの裁判官がどのような判断を下していたかを、あらためて検証した。
 マル激が今回の総選挙の争点として独自にあげたポイントは以下の通り。
・政治とメディアの癒着によって脅かされる報道の自由
・検察の公訴権独占で冤罪が繰り返される人質司法
・世界の脱炭素革命の流れから脱落する時代錯誤の日本のエネルギー政策
・官邸に集中させた権力の私物化と濫用
・民意が反映されない選挙制度と最高裁国民審査
・有権者に必要な情報を提供させない時代遅れの公職選挙法
・若年層に三重苦を強いる不公正な選挙制度
・先進国で最低水準の子育て・教育への公的支出
 いずれもマル激でゲストを招き様々なアングルから繰り返し議論してきたテーマだが、問題は日本のこうした根本的な問題が、今回の選挙でもほとんど問われていないことだ。選挙で問われない以上、各党の公約にもこれらの論点は入ってこない。しかし、各党の政策集などを具に見ると、上の全ての論点ではないが、党によってはその一部が含まれているところもある。また、政党の政策としては掲げられていなくても、自分の選挙区の候補者の中には、そのような問題を争点に掲げている候補者もいるだろう。
 要は、政党や既存のメディアがお膳立てをしたお仕着せの「選挙の争点」を無批判に受け入れ、その土俵の上での判断を強いられるのではなく、マル激が掲げる争点なども参考にしながら、それぞれの有権者が自分がもっとも優先すべきだと考える争点を持ち、それに基づいて投票行動をすることが重要なのではないか。
 今週は1.マル激が考えるこの選挙の争点、2.イリヤ・ソミンの『民主主義と政治的無知』に見る投票行動のあるべき形、3.最高裁国民審査のための各判事の判決検証、4.吉田恵輔監督の新作映画『空白』に見る相手の世界で生きるということの意味と選挙との関係、などを神保・宮台の2人マル激で議論した。

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今週の論点
・マル激が考えるこの選挙の争点
・『民主主義と政治的無知』に見る投票行動のあるべき形
・最高裁国民審査のための各判事の判決検証
・映画『空白』に見る“同じ世界で生きること”の意味
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■マル激が考えるこの選挙の争点

神保: 本日は衆院選直前の2021年10月29日金曜日。「5金」ということで映画など、いろいろと話したいことは積もっていますが、選挙を視野に議論したいと思います。宮台さん、この選挙に何か注目点はありますか?

宮台: はっきりいうと注目はまったくしていないし、実際に注目点もありません。自民党が過半数割れするか、くらいが話題ですが、それもどちらでも関係ない。また、立憲民主党の議席が増えたとしても、基本的な問題にはかかわりません。つまり、安倍・菅が悪いのでも、自民党が悪いのでもなく、日本はどこを切っても金太郎飴で、既得権益を動かせず、産業構造改革ができない。だから、本当は政権選択は関係なく、既得権益をどうするかという選挙なんです。