木村草太氏:天皇・皇族の人権のあり方を問いつつ最高裁判決を検証してみた
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マル激!メールマガジン 2021年10月27日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/)
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1072回)
天皇・皇族の人権のあり方を問いつつ最高裁判決を検証してみた
ゲスト:木村草太氏(東京都立大学法学部教授)
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今回とりあげる2つのテーマは、根本的に根っこのところではつながっている問題なのかもしれない。
2つのテーマとは、まず1つ目は、秋篠宮家の長女眞子内親王の結婚を機にあらためて考えてみたい天皇・皇族の人権の問題。そしてもう一つは、来週の総選挙と同時に行われる最高裁判所判事の国民審査を前に、今回審査の対象となる判事たちが主要な裁判、とりわけ基本的人権が問われるような裁判でどのような判断を下してきたかを検証することで、どの判事を承認すべきか、あるいは罷免要求すべきかの判断材料を提供することだ。
天皇、皇族の人権問題については、今回の眞子内親王の結婚が、マスコミ報道などによって誰からも無条件で祝福されるような性格のものではなくなってしまったことから、期せずして天皇、皇族の権利、とりわけ人権の有無という根本的な問題をきちんと考えざるを得ない状況が生まれている。
憲法学者で近著に『むずかしい天皇制』がある木村草太東京都立大学教授は、現行憲法の下では天皇、並びに法的にはそれに準ずる立場にある皇族には、秋篠宮が語ったような憲法24条に基づく「婚姻の自由」というものは存在しないと解されると説く。
しかし、木村氏によると、こと女性皇族の場合、皇室典範10条が立后(天皇が結婚して皇后を迎えること)と皇族男子の結婚のみが皇室会議の承認を要求しており、皇族女子の婚姻については何ら定めがないことに加え、皇室典範12条では「皇族女子が天皇、皇族以外のものと婚姻したときは皇族の身分を離れる」ことのみが定められていることから、現行法の下でも本人の意思に基づいて結婚することができると解されるという。
つまり、現行憲法、並びにそれに基づく皇室典範の下では、男性皇族には「婚姻の自由」は認められていないが、女性皇族については、それが制限されるべき法的な根拠が見当たらない、よって婚姻の自由が存在するということになる。少なくとも法的には、眞子内親王が誰と結婚しようが、他人があれこれ言うべき問題ではないということになるようだ。
その上で、眞子内親王の結婚に限らず、天皇及び皇族の法的な地位を現在のような「日本国憲法上の飛び地」(木村氏)、つまり例外的に憲法が適用されない特殊な存在として、生まれながらにして権利は大幅に制約されるが義務だけは存在するような地位に留め置いたまま、見方によってはひどい人権侵害が起きている現状を放置しておくことが日本人として本当にいいのかどうかは、もう少しオープンに議論されてもいいのではないだろうか。ましてや、皇室を愛しその存続を願うものであれば、なおさらのことではないか。
番組前半では木村氏と、眞子内親王の結婚を機に、天皇、皇族の法的な地位と人権、そして日本人としてこの問題をどう考えるべきかなどを議論した。
番組の後半は、10月31日の総選挙と同時に行われる最高裁判所裁判官の国民審査について、今回審査の対象となった判事がこれまでどのような裁判でどのような判決を下してきたかを検証した。
今回は2017年の衆院選と2019年の参院選の一票の格差違憲訴訟、夫婦別姓違憲訴訟、沖縄の米軍基地の移転を巡る判決2件、袴田事件と大崎事件の再審請求などで、今回審査対象となっている裁判官がどのような立場を取ったかをとりあげた。どの判決もそれぞれ裁判官の価値基準を判断する上では有益な判決・決定となっていた。
ただし、今回は11人の裁判官が審査の対象となるものの、制度上の欠陥ゆえにそのうち4人の裁判官はつい最近任命されたため、最高裁の主要な判決や決定には関与しておらず、判断材料がなかった。これは制度上、最高裁の国民審査が、判事に任命された後の最初の総選挙時に国民審査を受けることになっていることから生じる問題だ。
個々の裁判官の評価もさることながら、最も審査でダメ出しをされなければならないのは、このようなでたらめな制度とそれを放置している今の政府、そして国会ではないかと思うのは、われわれだけだろうか。
日本は三権分立がきちんと確立しているものと理解されているが、最高裁の判事を任命するのも内閣だし、三権の長となる最高裁の長官を指名するのも内閣だ。つまり最高裁判事の国民審査で意思表示をすることは、単にその裁判官に対する承認、あるいはダメ出しの意思表示を超えて、そのような人事を敢行している内閣に対する意思表示を意味していることも知っておくべきだろう。
木村氏とともに今回、国民審査の対象となる最高裁判所裁判官が主要な判決・決定でどのような立場を取ってきたかを検証した上で、現在の最高裁のあり方などを、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・「身分制の飛び地」にある皇族
・国民は「天皇に見捨てられないように」しなければならない
・最高裁裁判官の国民審査で押さえておきたい、一票の格差/夫婦別姓問題
・結論とともに需要な「理由づけ」 判決文の内容を見よう
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■「身分制の飛び地」にある皇族
神保: 今回は選挙の1週間前の番組です。選挙の直前は、総選挙と同時に行われる最高裁判所裁判官の国民審査について考えるのが恒例になっていましたが、最近は有効投票数の5分の1とか4分の1、場合によってはそれ以上が期日前投票をしてしまうので、前日にやっても遅いし、あまり前にやっても忘れてしまうと思うので、今週やることにしました。ただ、それだけでは物足りないというか、つまらないと思いまして、秋篠宮家の長女、眞子内親王が婚姻届を出す日が10月26日ということで、皇族の人権についても議論したいと思います。これをあまりにもいい加減にしすぎてきたために、世の中のリアクションがどうもわからないことになっている。銀座で結婚に反対するデモがありましたね。識者のなかには「私事ではないのだから当たり前だ」という人もいる。
宮台: そういう人は、ほとんど死刑に値すると思いますね。
神保: 一方で、そのお父様にあたる秋篠宮が「婚姻の自由」というようなことを認めてあげたいと。
宮台: しかし、にもかかわらず婚約は認められない。婚姻については両性の意思に基づいて行われるが、婚約は家と家の、一般人で言えば結納の儀式のようなものであるから、納采の儀はさせない。これもちょっと曖昧でした。
神保: そうしたことをそもそも整理する必要があるのか、ということも整理したいという感じです。
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