吉田徹氏・福山哲郎氏:これが野党の生きる道
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マル激!メールマガジン 2021年10月6日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/)
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1069回)
これが野党の生きる道
ゲスト:吉田徹氏(同志社大学政策学部教授)/福山哲郎氏(立憲民主党幹事長)
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自民党の総裁選挙が終わり、決選投票で河野太郎行革担当相を破り新総裁に選出された岸田文雄元外相が事実上、次の総理大臣となることが決まった。
この8月、新型コロナウイルス感染症者の急増などで菅政権の支持率が低迷し、このまま総選挙に突入すれば自民党は大敗、野党の大躍進が確実視されていた時期があった。現に、8月下旬に行われた首相のお膝元の横浜市長選挙では、菅政権の閣僚を辞職して出馬した自民党の小此木八郎元国家公安委員長が、立憲民主党が推薦する山中竹春横浜市立大学教授に大敗を喫するなど、明らかにその段階では野党陣営に強い追い風が吹いていた。
ところが菅首相の突然の辞意表明と、それを受けた表面的には華やかな自民党総裁選が始まり、自民党は見事にメディアジャックに成功する。総裁選までの約1ヶ月間、既存メディア、とりわけテレビが時間を割いて総裁選の最新状況や各候補のプロフィールなどを事細かに報じたおかげで、政権及び与党の支持率は急回復した。また、ちょうどそれがコロナの感染者数が急速に減少するタイミングとぶつかったため、ネタ枯れ状態にあった既存メディアは世間の耳目を集めるために、実際は旧態依然たる派閥の論理に支配された茶番劇を、蓋を開けるまでどうなるかわからないガチンコの戦いであるかのように報じた。
その結果、当初の野党の目算が大幅に狂ったことだけは間違いないだろう。
しかし、いずれにしても敵失に期待しているだけでは、この先、野党に展望が開けようはずもない。政権党の座にとどまるためであればいかなる妥協も辞さないところが、戦後ほぼ一貫して政権を担ってきた自民党の最大の強味であると同時に、自民党という政治集団の最大の特徴であることは、野党も重々承知のはずだ。
フランス政治に詳しく、近年では野党の存在意義について多くの発信を続けている同志社大学の吉田徹政策学部教授は、現在の野党、とりわけ野党第一党の立憲民主党の立ち位置では政権を担うために必要な有権者の幅広い支持を獲得することは難しいだろうと語る。総裁選のさなかに立民、共産党、社民党、れいわ新選組の野党四党の間で合意した「共通政策」を見ても、明らかに岩盤リベラル層の方を向いており、政権の奪取に不可欠となる中間層や無党派層に対するアピールには欠けていると吉田氏は言う。
では、伝統的なリベラル層の支持を維持しながら中間層へ支持を拡げるために立憲民主党やその他の野党は、何をすればいいのか。まず野党各党は他の野党に負けないための選挙戦をやめなければならないと吉田氏は言う。有権者は野党同士の争いなどにはまったく関心がないからだ。
吉田氏は、自民党の安倍政権が長期政権を築けた背景に、自らは「岩盤保守」を支持基盤としながらも、幅広い層にアピールするアベノミクスなどの経済政策の存在があったことを指摘した上で、野党陣営も「岩盤リベラル」を支持基盤としつつも、より中間層に訴えかけることが可能な経済政策が必要だと語る。そして、現在の政治状況の下では、野党にとっては新自由主義勢力を取り込むことが不可欠になると吉田氏は言うが、立憲民主党は2020年にまとめた党の政策綱領で新自由主義との決別を打ち出している。伝統的な岩盤リベラル層の期待に応えながら、新自由主義的な傾向のある中間層をも取り込まなければ政権奪取への展望が開けないところに、野党の大きな課題があるということになり、いずれにしても共産党との選挙区調整を含め、枝野代表にとっては難しい舵取りが求められそうだ。
番組の後半からは立憲民主党の福山哲郎幹事長も議論に加わり、支持率を回復したものの早速幹部人事で2A(安倍・麻生)支配が続いていることを露呈させている岸田自民党を相手に、現在の野党が抱える課題について吉田氏とジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・日本最大の政党は「支持政党なし」
・ポピュリズムの時代に不利を被るリベラルと、訴えるべき論点
・立憲民主党はいかにして、中間層にアピールするのか
・自民党のいい政策を継承し、できなかったことを実現する
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■日本最大の政党は「支持政党なし」
神保: 昨日、自民党の総裁選がありました。僕はとてつもない茶番劇だとずっと言い続けています。
宮台: 2Aは訴追されず、いわゆる森友・加計・桜の再調査があるかないかをめぐる離散集合に過ぎない。そのため、安倍・麻生に近い人たちを当選させるために、なんと対抗に対する当て馬を使うというのが一次選挙で、その当て馬に投票していた人も決選投票で2Aに近いところに投票させる、というそれだけのストーリーですね。
神保: さらにたちが悪いのは、メディアをジャックし、いかにも侃々諤々の政策論争をやっているように見せて、内閣支持率も完全に回復してしまっている。
宮台: しかし、この選挙結果を喜んでいるのは野党で、岸田でなく河野だったら戦いにくかったでしょう。しかし、「これで総選挙を戦いやすくなった、ありがとう」という構えこそが、日本の野党のへたれぶり、だらしなさをよく表しています。いい政策を通じて社会を変えていくという志がない。前から知っていることだから驚きでも何でもありませんが、残念ですね。
神保: そういうことで、今回は野党論をお届けします。ゲストは同志社大学政策学部教授の吉田徹さんです。前回ご出演いただいたのは2017年、テーマはフランス大統領選でしたが、吉田さんは野党についていろいろ書かれており、今回は近著の『「野党」論―それは何のためにあるのか』を参考にさせていただきました。吉田さんは政治学者として、今回の自民党総裁選をどうご覧になりましたか。
吉田: 近年の自民党において、安定した総理になるためには、派閥を押さえ、選挙で勝たなければなりません。まさにそれを露呈したのが菅さんで、二階派のバックアップをなくしてすぐに失墜した。選挙でも一度も勝ったことがなく、やはりその正統性のなさのようなものが、総理の立場を脆弱にするのだと。岸田さんは総選挙で勝ったが、まだ選挙で勝っていない。だからとりあえず、守護霊というか保証人として、二階派から2Aへ、ツー・ツーで移動するという感じにせざるを得なかったのではないかと思います。
また野党から見ると、冒頭にあったように戦いやすくなったという面もあると思います。自民党の古い体質を残し、2Aが背後にチラチラしているという意味では、抗議の材料になる。一方で戦いにくい部分もあり、ひとつは政策が多少被るということです。
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