米村滋人氏:安倍・菅政権のコロナ対策はどこに問題があったのか
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マル激!メールマガジン 2021年9月8日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/)
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1065回)
安倍・菅政権のコロナ対策はどこに問題があったのか
ゲスト:米村滋人氏(東京大学大学院法学政治学研究科教授・内科医)
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菅首相が退陣を表明した。コロナ対策で国民を納得させることができ、ある程度の支持率を保つことができていれば、特に野党の支持率が高まっているわけでもない今、発足から1年も経たない政権の首をすげ替える必要などなかった。結局、今回のコロナ禍とその対応の失敗が、安倍・菅と2代にわたる政権を退陣に追い込んだと言っても過言ではないだろう。
安倍・菅政権のコロナ対策はどこに問題があるのだろう。菅政権はデジタルやカーボンニュートラルなどの旗印を掲げようとはしていたが、この1年、ほぼコロナ対策だけに終始せざるを得なかった。その菅政権のコロナ対策は、元々居抜きで安倍政権を継承する形となったこともあり、丸ごと安倍政権の路線を踏襲したものだった。
8月25日の記者会見でビデオニュース・ドットコムから「自民党総裁選に出馬されるということは、総理ご自身は菅政権のコロナ対策が上手くいっていると考えているということなでしょうか」と問われた菅首相は、「ワクチン接種が進んでいること」、「欧米と比べて日本の死者数が少ないこと」などを理由に、自身のコロナ対策はうまく機能しているとの認識を示した。しかし、もし政権のコロナ対策が機能しているのであれば、なぜ日本国民は今年に入ってからほぼ毎日のように緊急事態宣言だのまん延防止等重点措置などで制約を受けた生活を強いられているのだろうか。
8月に3週間、ドイツのコロナ対策を視察してきた法学者であり医師でもある米村滋人・東京大学大学院法学政治学研究科教授は、ドイツと比較した時、ここまでの日本のコロナ対策がいかに科学的にも法律的にもいい加減なものばかりだったかを痛感させられたと語る。
ドイツではコロナ禍に見舞われてから3回も感染症関連の法律を改正し、新たな状況に対応してきた。民主国家の政府が感染症の蔓延という緊急事態下で国民に犠牲を求める措置を取る以上、そこには明確な法的権限が求められる。そして、その法律は科学的な根拠は言うに及ばず、「合理性があり平等なものでなければならない」(米村氏)。
一方、日本は残念ながら、できるだけ政府に裁量を残すようなアバウトな文言の法律で、この状況を乗り切ろうとした。その結果が、国民の行動制限のために多用された「自粛要請」だったり、病院のコロナ病床への転換を進めるための「お願い」(菅首相)だったりした。法律にはソフトローとハードローという考え方があるが、緊急事態に国民の自主性に依存したソフトロー方式で対処していれば、いずれ法律の効果が利かなくなるのは必至だった。
日本では政府に強制力を与えることに抵抗がある人が多いのではないかとの問いに対して米村氏は、日本の政府が合理的で平等な法の制定と執行ができないことこそが、いつまでたってもその不信感が払拭できない要因になっていると語る。
結果的に日本では、感染源の特定と遮断という感染症対策のイロハの要となるPCR検査を、正体不明の「目詰まり」(安倍元首相)のために十分に拡充することができなかったり、人口あたりの病床数では世界一を誇るにもかかわらず、一向にコロナ病床を増やすことができず、欧米の数十分の一の感染者数であっという間に医療が逼迫してしまうといった謎の現象のために緊急事態宣言を出し続けざるを得ないという現在の事態につながった。
では、次の政権はどうしたらいいか。米村氏は、まずこれまでのコロナ対策が間違っていたことを認めるところから始める必要があると言う。その上で、医療法など必要な法改正はできるだけ速やかに実行すると同時に、もしPCR検査を増やすのが難しければ抗原検査でも構わないので、「いつでもどこでも誰でも」が検査を受けられる体制を整備し感染源を把握する。また、医療体制の強化については、病床の不足もさることながら、その偏在に大きな問題があるとして、地域の医療機関の代表者から成る「協議会」を作り、患者や医師、看護師などを融通し合う仕組みを早急に作るべきだと語る。
ドイツから帰国し、現在自宅で2週間の自主隔離中の米村氏と、氏がドイツで見てきたコロナ対策の実例を元にこれまでの安倍・菅政権のコロナ対策はどこに問題があったのか、次の政権は何をどう変えればいいのかなどについて、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・合理性に基づく法律で対応するドイツと、「お願い」に頼る日本
・医療機関の連携はなぜできないのか?
・検査の拡充もなされず、水際対策もザルな日本
・治療薬の開発とともに、求められる“科学の民主化”
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■合理性に基づく法律で対応するドイツと、「お願い」に頼る日本
神保: 今回は、東京大学大学院法学政治学研究科教授で内科医の米村滋人さんがドイツのコロナ対策を見て帰国され、2週間の自主隔離中なのでオンラインでお話を伺おうと考えていたところ、今朝になって菅総理が事実上の辞意を表明。大騒ぎになっています。思えば、まったく総理になるための準備もしていなかった菅さんが、岸田と石破の一騎討ちになったら石破が勝ってしまうからと、みなさんが乗っかって棚ぼたのように総裁になり、そこでいろんなことを要求され、気の毒な面もあったかもしれない。
さっそくですが、米村さんにお話を伺おうと思います。いまは2週間の自主隔離中で、自宅から一歩も出られないということで、水際対策が厳しくなっている、というようにも思えますが、どうなのでしょうか。
米村: 厳しいと言えば厳しいのですが、国ごとの感染状況の違いをあまり反映しない仕組みになっています。東南アジアなどごく一部の国だけ例外になっていますが、それ以外はすべて、自主隔離2週間になるんです。もちろん検査はしていて、陰性でした。
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