マル激!メールマガジン 2021年6月23日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1054回)
台湾有事の現実味と日本への影響を考える
ゲスト:小原凡司氏(笹川平和財団上席研究員)
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 日本はただアメリカの後ろを付いていくだけで、本当に大丈夫なのだろうか。
 アメリカは他国を巻き込んであからさまな中国包囲網の形成に走り、中国は「アメリカは病気だ」とこき下ろすなど、米中関係が退っ引きならない状況に来ている。特に台湾を巡る米中の睨み合いは、今年3月、米議会の上院軍事委員会の公聴会でアメリカ太平洋軍のデービッドソン司令官が向こう6年以内の軍事衝突の可能性が高いと証言するなど、日本の目の前で2つの核超大国がドンパチをおっ始める可能性が現実のものとなってきている。
 しかし、当の日本は、4月の日米首脳会談でも台湾情勢を引き合いにしながら両国の懸念対象として中国を名指しにする共同宣言に署名するなど、相変わらずのアメリカ一辺倒の姿勢しか見えない。菅首相の多国間外交デビューの場となった、今週のG7サミットの首脳宣言でも、まったく同じ表現で中国が名指しにされ、そのたびに中国の報道官が激しくアメリカを罵るというパターンが半ば常態化している。そしてその間も休むことなく中国の軍備増強は続き、東アジアの安全保障は不安定の度合いを増しているのだ。
 安全保障政策、とりわけ中国の軍事が専門の小原凡司氏によると、中国とアメリカでは軍事力ではまだアメリカが優位ではあるが、その差は縮まってきている。しかし、とは言え中国はまだアメリカが怖いので、アメリカとの軍事衝突は避けたいのが中国の基本的な外交スタンスだと言う。
 現時点では中国はアメリカとの真正面からの衝突は避けたいし、アメリカも単独で中国と対峙する気はないことから、台湾を巡り両国が軍事的に相まみえる事態は、直ちには想定しにくいと小原氏は言うが、とは言え両国が睨み合いながらギリギリのところで現在の東アジアの軍事バランスが保たれていることだけは間違いない。何かの間違いで不測の事態に陥る可能性とは常に隣り合わせだ。また、中国はアメリカとはやりたくないが、日本は怖くないので、巧みに日米の分断を図りつつ日本にちょっかいを出してくる可能性もある。
 小原氏は日本では台湾有事を想定した議論は、少なくとも政府レベルではほとんどまったく行われていないと指摘する。先週、国会も閉会してしまったが、コロナ対策と五輪対策だけで汲々としている現在の菅政権に、台湾有事まで視野に入れた外交政策の方向性を示すよう求めるのは、無いものねだりの無理筋というものなのだろうか。
 しかし、そもそも台湾有事は平和安全法制で定めるところの「存立危機事態」に該当するのか。万が一台湾有事となった時、台湾に在留する2万人を超える日本人をどうやって救出するのか。台湾からの大量の避難民が日本に向かってくる可能性もある。日台関係は日本からのワクチンの贈与などで非常に良好な状態にあるとされるが、日本のすぐ裏庭で軍事衝突が起きた時に日本が無傷でいられるはずがない。議論もない状態のままで何かあった時に対応できるはずもなく、また場当たり的な対応に終始するのが関の山だろう。
 平和を守るためには普段の努力が必要だ。平和にただ乗りを続ける者が増えれば増えるほど、平和は危うくなる。今週は自衛隊出身で中国の軍事問題の専門家でもある小原氏に、そもそも台湾有事の蓋然性はどれほど高まっているのかや、米中それぞれが本音で考えている事、いざ有事となった場合の日本への影響や、日本がそのために備えておくべきことは何かなどを、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が聞いた。
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今週の論点
・互いを恐れる中国とアメリカ
・尖閣問題含め、日本にも危機は迫っているのか
・米中の競争が生む「新しい秩序」
・準備不足の日本と、高度に複雑化する世界情勢
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■互いを恐れる中国とアメリカ

神保: 今回は台湾情勢と米中関係、そして日本というところで議論していきたいと思います。軍事バランスの変化、香港の問題、またアメリカがトランプ政権からバイデン政権に変わり、2022年には中国の共産党大会で習近平が三選目を狙っているというところもあり、状況がこれから大きく動く可能性があります。日本に主体的なコントロールができる要素はないような感じもしますが、何かが起これば当然、大きな影響があるので、しっかりみていく必要があるだろうということです。
 さっそくゲストをご紹介します。中国の軍事問題に詳しい、笹川平和財団常設研究員の小原凡司さんです。今週のG7サミットで香港もそうだし、ウイグルも含めて中国の問題が明確に指摘されました。中国の国内のことにあそこまで言及したことをどう見ればいいでしょうか。

小原: 捉え方はいろいろあると思いますが、実は中国は、公式にはあまり強く反応していません。