マル激!メールマガジン 2020年10月7日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第1017回(2020年10月3日)
安倍政権の検証(5)
公文書管理と情報公開のできない政権は歴史の審判に値しない
ゲスト:三木由希子氏(情報公開クリアリングハウス理事長)
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安倍政権の検証をシリーズで行ってきたが、恐らくその中でも今回こそが一番重要なテーマだと言っても過言ではないだろう。なぜならば、他のすべての問題が今回のテーマに依存しているからだ。
安倍首相は辞任を表明した2020年8月28日の会見で、歴代最長となった自らの政権のレガシーを問われ、「歴史の検証に委ねたい」と語った。しかし、政権の実績を評価するためには正確な記録が残され、それが公開されていることが大前提となることは言うまでもない。
長年、公文書の情報公開に取り組んできたNPO法人情報公開クリアリングハウスの三木由希子理事長は、そもそも日本では政権の意思決定過程を公文書として記録に残さなければならないという概念自体が希薄なところにもってきて、安倍政権以降の官邸一強体制の下で、内閣人事局などで一元管理されるようになった幹部官僚たちが政権に忖度するようになったため、後に政治家、とりわけ官邸にとって不都合になる可能性がありそうな公文書はなるべく残さないようにしようという雰囲気が益々強くなってしまったと指摘する。
加計学園問題では総理を始めとする政府の高官がいつ誰と会ったかを記録した面会記録が1日で廃棄されていたり、首相や官房長官の日程が記者会見や国会出席など1日あたり3~4件しか書き込まれていないものしか公文書としては残されていないという衝撃的な事実も明らかになった。アメリカでホワイトハウスの入退出記録が詳細に記録されていたり、大統領や政府高官の日程が詳細に公文書に記録されているのと比較すると、日本の公文書管理と情報公開は50年以上も世界から後れを取っていると言わざるを得ない状況だ。
安全保障上の理由やプライバシー、刑事捜査に絡む情報など、もしそれが今、公開されれば国益が損なわれるような情報なのであれば、何でもかんでも今すぐに全てを公開しろとまでは言わない。しかし、それでも公文書としてきちんと記録に残した上で、情報公開法の基準に則り一定期間、部分的、あるいは全体を非公開にするという手段もある。しかし、今の日本の政府が記録を残したくない、あるいは残そうとしない理由は残念ながら、そんな崇高な次元の話ではないように見える。それは単に、その役所や官僚自身にとって不都合なものだったり、特に安倍政権以降は、政権にとって不都合だからだったり、記録に残しても恥ずかしくないような十分な根拠や合理性、正当性のない恣意的な意思決定が至る所でなされているからというのが実情なのではないか。
課題は山積しているが、何をおいてもまず公文書管理と情報公開の後進国から卒業しなければ、日本の民主主義は「任せておいてブーたれる」だけの「おまかせ民主主義」から一向に脱皮することができない。その卒業のために一丁目一番地となるのが公文書管理と情報公開だ。現行の公文書管理法と情報公開法は不備も多いが、少なくともその精神を徹底し法律を順守するところから始める必要がある。ところが官僚教育の中で、公文書管理や情報公開の重要性を真剣に教えているという話は終ぞ聞かない。
安倍政権下で明らかになった公文書管理と情報公開の問題点と今後の課題などについて、同分野の一人者で数々の情報公開請求訴訟を今も続けている三木由希子氏とジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・理由も経緯も残っていない、日本学術会議問題
・総理大臣がいつ誰に会ったのかも検証できない日本
・日本には「政治が記録を通じて説明責任を果たす」という前提がない
・公文書が残らず、「創作」されていくレガシー
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■理由も経緯も残っていない、日本学術会議問題
神保: 今回は安倍政権の検証の第5弾です。僕はこれが一番大事で、これさえしっかりしていればさまざまな問題があっても、最後はなんとか改めることができるのでは思っています。つまり、公文書管理と情報公開がテーマです。ゲストはこの問題で何度もお世話になっています、情報公開クリアリングハウス理事長の三木由希子さんです。
せっかくなので最初に伺いたいのですが、菅政権が発足して間もなく、日本学術会議の問題が起きました。さまざまな論点がありますが、今回、学術会議側が推薦してきた6人の新会員候補について、政府が任命を拒否したと。そして、うち5人が特定秘密保護法に反対の意思を表明してきた人で、お一人は共謀罪に反対をしてきた人でした。仮にそれが理由であれば、議論の場ではっきりと意思表明されれば、いいとは言いませんが、まだわかります。しかし、いまの日本では、この6人がダメになったときに、その理由が記録に残りません。
三木: 自分たちが言えること、言いたいことしか言わないという世界なので、広報や会見というものも、本当に何があったかということを知る機会としては、もともとあまり成立していないと思います。説明する側、情報を持っている側がある程度、出すものをコントロールすることはどうしても起こる、という前提で動いていると思いますが、それがすべてになってはいけない、というのが基本的な政府のあり方のベースになければいけません。
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