マル激!メールマガジン 2020年8月19日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第1010回(2020年8月15日)
この戦争観はアメリカに押しつけられたものだったのか、日本人が自ら選んだものだったのか
ゲスト:有馬哲夫氏(早稲田大学社会科学総合学術院教授)
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毎年この時期になると、先の戦争についてメデイア上で様々な特集が組まれる。特に今年は終戦75周年ということもあり、テレビは映画を含め普段よりも多くの関連番組を放送しているようだ。
しかし、公文書研究を続けてきた早稲田大学教授の有馬哲夫氏と話をすると、戦争や原爆についてこんなにも多くの情報が溢れているにもかかわらず、われわれが本当に重要な情報をことごとく知らされていないことを痛感させられる。そして、そのかなりの部分が、残念ながら意図的にそうなるように仕向けられているようなのだ。
中でもなぜアメリカが広島と長崎に原爆を落とさなければならなかったのかという疑問については、日本は被害当事国でありながら、一番重要な点がほとんど問題にされていないように思える。
一般的にはアメリカは日本に降伏を促し戦争を一刻も早く終結させるために、やむなく原爆の使用に踏み切ったという説明が日本でもアメリカでも広く信じられているようだ。 そうすることで両国の戦争の犠牲者を最小限に抑えることが目的だったというのが、それを正当化する理由となる。しかし、その説はとうの昔に否定されていて、アメリカでもABCテレビがその説を覆すドキュメンタリーを放送しているほどだ。
アメリカが日本の占領に際して当初から積極的に実施したのが、WGIP(War Guilt Information Program=戦争責任広報計画)と呼ばれる広報政策だった。広報政策といっても、占領軍が軍事力を背景に日本中のあらゆるメディアを掌握して実施する情報統制なので、早い話が力によるプロバガンダ以外の何物でもない。
アメリカは特に原爆と東京裁判に対してWGIPをフルに使い、日本人に対する情報操作を徹底させた。逆の見方をすれば、その2つは常識ではどうにも正当化できないことを知っていたことになる。その結果、日頃の新聞・ラジオ報道はもとより、多くの映画やニュース映画がWGIPの監督の下に作成され、それが日本人の戦争観に決定的な影響を与えた。
WGIPはGHQによる7年間の統治の間に実行されたものだが、その間に形成された日本人の思考回路や教育を含むさまざまな制度、マスコミのマインドセット(物事を考える基本的な姿勢)などは占領が終わった後も日本人の原爆や東京裁判のみならず、先の大戦に対する考え方に大きな影響を与え続けたと考えられると有馬氏は指摘する。
今日の日本人の戦争観や歴史観が、実際にどの程度のWGIPの影響を受けているかを正確に推し量ることは難しい。しかし、WGIPがどれほど優れた洗脳プログラムであったとしても、7年間の検閲と情報統制だけで一国一億の国民の戦争観や歴史観を完全に塗り替えることなどできようはずもない。そこには何か日本側にもWGIP的な歴史の上書きを容易に受け入れてしまう、あるいはそれを待ち望んでいた何かがあったとしか思えない。
だとすれば、まずはWGIPの実態を知りその効果を検証すると同時に、それをいとも簡単に受け入れ、その効果を倍増、三倍増させてしまう日本側の要因についても考えておく必要があるだろう。そして原因がWGIPであろうが何であろうが、75年経った今日まで向き合ってこなかった様々な不都合な歴史の真実についても、あらためて向き合う必要があるのではないか。
75回目の終戦記念日を迎える今回は、原爆投下に際してアメリカにはどのような選択肢があり、なぜアメリカはそれでもどうしても原爆を落とさなければならなかったのか、その歴史の汚点を書き換えるためにアメリカが行ったWGIPとはどのようなものだったのか、特に原爆について被害当時国の日本、そして日本人がWGIPの情報操作をいとも簡単に受け入れてしまったのはなぜだったのかなどについて、公文書研究者の有馬氏とジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・多くの日本人が認識していない、WGIPによる戦後の“心理戦”
・新聞連載から黒澤映画まで、WGIPのプロパガンダとその目的
・「原爆の使用は正しかったか」という日米調査が示すもの
・WGIPの効果はなぜ日本でいまも続いているのか
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■多くの日本人が認識していない、WGIPによる戦後の“心理戦”
神保: 今日は2020年8月14日金曜日、番組の更新は15日になります。宮台さん、冒頭に何かありますか。
宮台: 僕のゼミは夏休み期間も継続しているのですが、そこでたまたま吉本隆明氏の『共同幻想論』を読む、ということをやっていました。それは、今回のマル激の主題と密接にかかわっています。
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