マル激!メールマガジン

武村政春氏:この世界はウイルスでできている

2020/05/06 20:00 投稿

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マル激!メールマガジン 2020年5月6日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第995回(2020年5月2日)
この世界はウイルスでできている
ゲスト:武村政春氏(東京理科大学理学部教授)
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 目下日本は、新型コロナウイルス感染症の蔓延を抑え込むことと、そのための行動制限の結果生じている経済的な影響にいかに対応していくかが、喫緊の課題となっている。
 しかし、よくよく考えてみると、われわれはそもそもウイルスがどんなものなのかについて、ほとんど何も知らない。そこで今週のマル激では感染症とは直接関係のないウイルスそのものの専門家をゲストにお招きし、ウイルスとはどんな”物”で、どのように人に”吸着”し、どのように”増殖”するのかなど、ウイルスのイロハについて話を聞いた。
 そもそもウイルスが”物”だということを、どれほどの人が知っているだろうか。そう、ウイルスは自分自身では増えることができないので、”生き物”ではなく、あくまで”物”なのだそうだ。そしてウイルスは宿主(しゅくしゅ)を見つけてその細胞に入り込み、その中で増殖することによってのみ自らの子孫を残すことができる。だから、われわれから見ると”感染”に当たるものが、ウイルスにとっては自分の遺伝子を増やす唯一の手段、言うなれば再生産活動なのだ。
 ウイルスは自分の意思を持たないので、ウイルスにとって”感染”というのは、どこかを浮遊していて、何かのタイミングである動物細胞に接触した時、たまたまそれが何億、何兆分の1の可能性で”吸着”できた時に起きる現象ということになる。ウイルスが専門の武村政春・東京理科大教授によると、これは誰かが適当に鍵を振り回していたら、偶然それがすっぽり入る鍵穴にはまったというほどの、奇跡的と言っても過言ではないほどの偶然の産物なのだそうだ。
 しかし、その偶然の結果、新型コロナウイルスは人間の細胞に入り込む鍵穴を見つけてしまった。ウイルスには意思はないので、見つけてしまったというよりも、ウイルス側の鍵が人間が持つ鍵穴に何かの偶然ではまってしまったというべきなのかもしれない。その偶然の結果、もはやこのウイルスと人間は遭遇してしまい、しかも人間という生き物は不顕性感染などという形で症状が出ないまま感染者を増やすことが可能なため、このウイルスにとってはとても好都合な宿主だったことになる。しかし、一度出会ってしまった以上、もう二度と出会う前の世界に戻ることはできない。
 巨大ウイルスを専門に研究する武村氏はウイルスが生物の進化の鍵を握っている可能性があり、ウイルスの存在があったからこそ、現在の人類が存在するといっても過言ではないと語る。無論、病原性のあるウイルスについては致死率を下げる努力をしなければならないが、ウイルスを頭ごなしに悪い存在と位置づけ、これを撲滅すべき対象としてしか見られなくなってしまうと、大局を見誤るのではないかと武村氏は言う。
 戦うにしても、共存するにしても、まずは敵を知ることが大切だ。今週はそもそもウイルスとは何なのかについてウイルス研究者の武村氏に、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が話を聞いた。

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今週の論点
・「生物」でないウイルスはどうやって感染、増殖するのか?
・ウイルスという「鍵」が、たまたま「鍵穴」にハマるという偶然
・広く長い視座でウイルスを捉えるということ
・日本は疫学的なPCR検査による“実態把握”がなぜできないのか
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■「生物」でないウイルスはどうやって感染、増殖するのか?

神保: 今回もリモートで番組をお送りします。まずは宮台さんを呼んでみましょう。今回はテーマとして、ウイルスそのものについて勉強させていただこうと思います。宮台さんは『ブルーバックス』少年ですし、ウイルスについても詳しいんですか。

宮台: はい。祖父が昭和天皇にご進講差し上げる生物学者でしたし、麻布中学では生物の先生が生物学者で、分子生物学を興奮気味に教えてくださいました。高一の時は生物学者になろうと思っていました。

神保: 僕はウイルスについていかんせん基礎的な素養がないもので、今回、ゲストの先生のご著書を読ませていただき、まったく不正確にさまざまなことを理解していたということを思い知らされました。そういう意味でも、今回はウイルス学入門的な感じになると思いますが、それをやってみる意味があると考えています。ゲストは、東京理科大学教授で、細胞生物学や分子生物学がご専門ですが、とりわけ「巨大ウイルス」というものを研究されている武村政春さんです。 

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