マル激!メールマガジン 2019年11月13日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第970回(2019年11月9日)
君主制が民主主義を強くするための条件
ゲスト:君塚直隆氏(関東学院大学国際文化学部教授)
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10月22日に即位礼正殿の儀が執り行われ、世界各国から集まった国賓を前に今上天皇の即位が公に宣明された。これをもって、約200年ぶりとなる平成の天皇の生前退位に伴う皇位継承は滞りなく完了した。きたる日曜日には、当初即位礼と同日に予定されていた祝賀パレードも執り行われる予定だ。
世界には今、王室や皇室など何らかの君主をいただく国が28ヶ国ある。世界には約190の国があるので、君主を持つ国は全体の6分の1以下しかないことになる。君主の中には政治的にも強い権限を持つ絶対君主もいるが、今日そのほとんどは政治的な力を持たず象徴的な存在にとどまる立憲君主だ。
今日、経済のグローバル化が進み、ヒト、モノ、カネが国境を越えて自由に動くようになった結果、世界の多くの国では行き過ぎた自由主義・資本主義に対するバックラッシュとして、民主主義を否定するようなポピュリズムの台頭が見られるようになっている。そうした中にあって、国の統合の象徴であり、自分たちの立ち位置の普遍的な参照点を提供してくれる君主制は、民主主義を安定させる力を持ち得る可能性があると、歴史学者でとりわけイギリスの君主制に詳しい関東学院大学教授の君塚直隆氏は語る。政治権力はなくても、君主の権威や尊厳がそれを可能にするのだと、君塚氏は言う。
しかし、その一方で、君主制の持つそうした力を自分たちの政治目的のために利用しようとする勢力が後を絶たないのも事実だ。日本には過去にそれで失敗した歴史がある。君主制を民主主義を強くするために必要な条件と、それが悪用されないようにするために必要な対策を、われわれは常に注意深く考えていく必要があるだろう。
既に世界の中でも希有な存在となりつつある君主国の中でも、とりわけ長い歴史を持つ日本の皇室は、世界でも稀に見るほど深い敬愛の念を国民から集めていると言われている。その皇室という尊い存在を護り、日本の民主主義を強化していくために、今、われわれが何をしなければならないかを、君塚氏とジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・「参照できる、変わらないもの」としての君主制
・「権力」と「権威」の違い
・君主が持つべき権利――現政権はなぜ「不敬」なのか
・天皇を「御簾の奥にいる存在」にしたい勢力の思惑
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■「参照できる、変わらないもの」としての君主制
神保: 今回は、どうも民主主義が機能しなくなってきているという問題をテーマにお送りします。これまで、マル激ではその理由をさまざまな方向から見てきました。グローバル化の問題もあるし、トランプ大統領しかり、安倍首相にしてもしかり、とにかくポピュリズムが台頭する条件が揃ってしまいました。そのなかで、もしかすると変わらないもの、ひとつの参照点として、君主制というものを見直す契機が今なのかもしれない、と思いました。
宮台: そうですね。立憲君主制に限らず、立憲制度の持続可能性のポイントは基本的に、ローレンス・レッシグという憲法学者が言ったように、「国民が変わらないものを参照できるかどうか」なんです。
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