マル激!メールマガジン

坂元雅行氏:なぜ日本は世界から指弾される象牙取引をやめられないのか

2019/11/06 20:00 投稿

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マル激!メールマガジン 2019年11月6日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第969回(2019年11月2日)
なぜ日本は世界から指弾される象牙取引をやめられないのか
ゲスト:坂元雅行氏(トラ・ゾウ保護基金事務局長)
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 今回はアフリカゾウの絶滅危機と日本のはんこのつながりについて。
 アフリカで象の密猟が続き、一部の地域ではアフリカゾウの個体数が激減し、絶滅が危惧される事態となっていることは、日本でもそれなりに知られているかもしれない。しかし、日本がその主たる原因となっていることを、どのくらいの日本人が知っているだろう。
 今年8月にジュネーブでワシントン条約締約国会議(COP18)が開かれ、象牙取引を禁止していない国に対して、より厳しい説明責任を課す決議案が可決されたが、実はこの決議案は事実上、日本を念頭に置いたものだった。
 1970年代からアフリカでは象牙を目的とする象の密猟が横行し始め、1980年代に入るとアフリカゾウの個体数が激減し、いよいよ絶滅が危惧される事態となったため、1989年にワシントン条約で象牙の国際的取引が全面的に禁止された。
 日本に大きな象牙の需要があるため、1989年の全面禁止後も、アフリカでの象の密猟は止まらず、毎年2万~3万頭が乱獲され続け、アフリカゾウの危機的な状況は続いた。そのため2016年のワシントン条約締約国会議では、需要国側が取引を禁止にすべきとの勧告決議が採択されるに至った。これを受けて、アメリカや中国、台湾、シンガポール、フランス、イギリスなどが相次いで国内市場の閉鎖や国内取引の禁止を発表している。
 しかし、いくら日本にはんこの文化があるとは言え、はんこは象牙以外でも代替が利くものだ。しかも、それほど日常的に買い換えるものでもないし、はんこ産業がそれほど強い政治力を持つとも思えない。どうしても象牙のはんこを買いたい人がどのくらいいるのかは知らないが、そのために日本がアフリカゾウの絶滅を意に介さない冷酷な国の烙印を押されるのは、どうも釣り合いが取れないような気がする。世界各国が象牙の取引を禁止しているのに、なぜ日本だけが依然として象牙取引を続けようとしているのだろうか。
 長年この問題に取り組んできた認定NPO法人トラ・ゾウ保護基金の事務局長で弁護士の坂元雅行氏は、象牙に関しては日本政府は最初に誤った政策判断をしてしまい、その後その判断を修正できないために、誤った政策がそのまま続いていると説明する。またしても、一度走り出したら止まらない官僚の暴走列車説だが、逆の見方をすると、その暴走列車を止めようとする政治的意思がこれまで全く働かなかったということになる。
 しかし、今回はそれを止めることが政治的・経済的にもそれほど難しいとは思えない一方で、それを続けることによって、日本がアフリカゾウ絶滅の責任を問われかねないという深刻な対価が付いてくる恐れがある。
 政府は一体誰を守るために、国際的な批判をものともせずに、象牙取引を続けているのだろうか。本気でこの問題を放置したまま東京五輪に突入する気なのだろうか。象牙取引をめぐる世界の動きと、それから完全に隔離されたかのように我が道を行く日本の現状とその背景について、坂元氏とジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。

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今週の論点
・象牙問題で、日本は“世界最大の悪役”である
・名指しで批判されても、動きを見せない日本
・規制の体をなさない追加対策
・節目の東京五輪までに、全面禁止はあり得るか
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■象牙問題で、日本は“世界最大の悪役”である

神保: これが969回目のマル激です。969回もやっているのに、実はわれわれはこの問題を一度も取り上げていませんでした。テーマは「象牙」で、しかも日本が問題になっています。

宮台: 過去形ではなく、まさにいま問題ですね。

神保: 各国が取引をやめているのに、日本だけが……という、捕鯨のような様相を呈しています。日本が捕鯨を続けてきたのは、圧力団体が強いからだったり、票になるからという理由ではなく、ほとんどポリティカルウィルの欠如のようなものと、一部の有力議員がいたからです。宮台さんはどんな印象ですか?

宮台: 社会学者として言えば、動物保護は規範よりも感情の問題です。そのため人によって異論がありますが、 

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