マル激!メールマガジン

山田敏弘氏:世界サイバー戦争への備えはできているか

2019/09/11 22:00 投稿

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マル激!メールマガジン 2019年9月11日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第961回(2019年9月7日)
世界サイバー戦争への備えはできているか
ゲスト:山田敏弘氏(国際ジャーナリスト)
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 サイバー戦争などというものはまだまだSFの世界の話だと思っていた。しかし、今や日常的に国家間のサイバー戦が世界の方々で繰り広げられているという。
 今年6月、イランがアメリカの無人偵察機を撃ち落としたが、実はアメリカはその報復としてイランにサイバー攻撃を仕掛け、ロケット弾やミサイルの発射装置を制御するイラン軍のコンピュータ・システムを無力化したと、ワシントンポストが報じている。
一方、ロシアは2016年の米大統領選挙で、民主党全国委員会のネットワークに侵入し、盗み出した19,000件にのぼるメールをウィキリークスで公開した。その多くが、ロシアに対する強硬路線を主張していたクリントン候補にとって不利になる内容だったために、ロシアのサイバー攻撃がトランプ大統領を誕生させた一つの要因になったとまで言われている。
 こうした状況を受けて、アメリカも本気でサイバー軍の強化に乗り出しており、トランプ大統領はサイバー軍に対して、大統領の承認を得ずにサイバー攻撃を実行する権限を与えている。これを受けてアメリカのサイバー軍は、断続的にロシアに対するサイバー攻撃を実行に移しているとされる。
 中国も世界中の国家機密データを盗むために様々な国にサイバー攻撃を仕掛けている。近年アメリカで相次いだ停電の背後にも中国のサイバー攻撃の存在が疑われている。さらに、イスラエル、イラン、北朝鮮などの小さな国も大国に対する抑止力を保有するために、サイバー軍の強化に躍起になっている。今や世界のサイバー戦競争は激しさを増す一方だ。
 『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』の著者で世界のサイバー戦情勢に詳しい国際ジャーナリストの山田敏弘氏は、既に大国の間ではお互いの国のネットワークに侵入し、いつでも通信ネットワークや電力グリッドなどの大規模なインフラを麻痺させるためのマルウェアを、方々に埋め込んでいる状態だと指摘する。正に核兵器の抑止論と同じように、相手に破滅的な打撃を与える能力を持つことが、自国に対する相手の攻撃を思いとどまらせる唯一の方法になっているというのだ。
 さて、問題は日本だ。憲法上の制約がある日本は、サイバー戦でも先制攻撃は難しいと考えられているため、どうしても受け身にならざるをえない。しかし、山田氏によると日本は既にこの分野でもアメリカの傘の下に入ることを決め、アメリカと安保条約上そのような取り決めをしているそうだ。
 システムが乗っ取られて夏に電気が止められてしまえば、万単位の人が熱中症で死ぬだろう。寒い地域で冬に電気が止まれば、やはり万単位で人が凍死するだろう。飛行機の管制システムや電車の運行システムが乗っ取られたらどうなるだろう。原発の制御システムはどうだ。いや核兵器の発射システムだって。そう考えていくと、今、世界のサイバー戦が抑止力を前提に辛うじて均衡が保たれているという現状の危うさを感じずにはいられない。
 そんなわけで今回のマル激は、山田氏に世界サイバー戦争の最前線の現状を聞いた上で、日本の立場やネットワークに支えられた今のこの上なく便利な生活に潜むリスクなどを山田氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者宮台真司で議論した。

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今週の論点
・日本では報じられない“サイバー戦争”の現実
・防ぐのは事実上不可能? サイバー攻撃の種類
・日本はアメリカの「サイバーの傘」に守られるだけなのか
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■日本では報じられない“サイバー戦争”の現実

神保: 今回は「サイバー戦争」をテーマに議論したいと思います。今年の夏、アメリカに行っていたときに、ニューヨーク・タイムズなどさまざまなメディアで、サイバー攻撃の話題が出ていました。例えばこの間、イランでアメリカの無人機が撃ち落とされた後、日本ではあまり知られていませんが、アメリカは報復としてイランを大混乱に陥れるようなサイバー攻撃をしたらしいです。その他にも、ウクライナでしょっちゅう大停電が起きているのもロシアのサイバー攻撃だった可能性が高いという話もあります。

宮台: この番組でも、トランプ大統領誕生の立役者がロシアのハッキングだったということを何度か話題にしてきていますが、まさにそのことを帯に書いて本を出された方が、今回のゲストですね。 

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