マル激!メールマガジン

吉澤文寿氏:日韓すれ違いの根底にある1965年協定の玉虫色決着

2019/02/13 23:00 投稿

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マル激!メールマガジン 2019年2月13日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/
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マル激トーク・オン・ディマンド 第931回(2019年2月9日)
日韓すれ違いの根底にある1965年協定の玉虫色決着
ゲスト:吉澤文寿氏(新潟国際情報大学国際学部教授)
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 従軍慰安婦問題に続いて徴用工、そしてレーダー照射と、日本と韓国の政治関係が最悪の状態に陥っている。日本政府は徴用工についても、「完全かつ最終的に解決された」と書かれた1965年の日韓請求権協定第2条を引用しつつ、この問題は既に解決済みであるとの立場を貫いているが、韓国側はまったく納得していないようだ。
しかし、そうした各論で口角泡を飛ばす前に、どうもわれわれには知っておかなければならない重大な課題がある。過去20年あまり、日韓の間に歴史を巡る紛争が生じる時は、必ずといっていいほど、この課題が問題になっているからだ。これを棚上げしたままでは、日韓関係の真の正常化は難しいと語るのが、朝鮮半島情勢や日韓関係が専門の吉澤文寿・新潟国際情報大学教授だ。
 それは1965年の請求権協定にいたる交渉の過程やその背景と、韓国側がその協定をどう認識しているかという問題だ。確かに日韓請求権協定では、日韓間の請求権は「完全かつ最終的に解決された」が確認されている。しかし、その交渉の過程では、両国の立場が大きく乖離した一つの根本的な懸案事項があった。それは、日本による韓国併合の法的責任だ。請求権協定の交渉過程の外交文書などを見ると、両国のこの問題をめぐる立場の隔たりは極めて大きく、10年を超える交渉を経ても、その距離は一向に縮まらなかった。
 とは言え韓国は当時、経済発展で北朝鮮の後塵を拝する形となり、かなり焦りがあった。時は米ソ冷戦の最盛期だ。一刻も早く日本と和解し、経済援助を取り付けることで、北朝鮮との国力の差を縮めることが、日々、北朝鮮の脅威に晒されていた韓国にとっては最優先事項だったことは言うまでもない。日本は1905年に日本が韓国を保護国とし、1910年には韓国を併合しているが、その過程で結ばれた諸条約が合法的なものであったかについて、実は日韓の間では正式には決着がついていない。韓国は併合は軍事力を背景に一方的に強いられたものであり不当なものだったと主張するが、日本はそれが正式な手続きに則った有効なものだったとの立場を一貫してとっている。
 そして、請求権協定では、その点での両国の乖離があまりにも大きかったために、ひとつの手品のような文言が捻り出され、玉虫色の決着が図られた。
 無論、諸事情があったにせよ、国と国とが正式に結んだ協定は尊重されなければならない。しかし、韓国側が何に不満を持っているのか、また当時の両国間の交渉がどういう性格のものだったのかについてのファクトを外交文書などを通じて知ることは、日本が今後どのような態度で日韓関係に臨むべきかを考える上で重要な示唆を与えてくれるはずだ。
 国家間で玉虫色の決着がなされたとき、政府は当然、自分たちにとって都合のいいバージョンを強調するだろうし、それが唯一のファクトであるかのように自国民に説明するだろう。政治とはそういうものだが、何も市民がすべてを政治と同じように考える必要はない。
 吉澤氏は日本と韓国は既に経済や国民レベルで揺るぎない盤石な友好関係を築いているが、植民地時代の法的責任という懸案が未解決なために、政治だけがぶつかり合っている面があると語る。今こそ、政治のレトリックだけに踊らされることなく、両国の市民の一人ひとりが事実関係をしっかりと押さえた上で、相手の立場を理解することが求められているのではないだろうか。
 日韓両国の前に横たわる玉虫色の決着とはどのようなものだったのか。当時、そのような形で棚上げされた背景に何があったのか。なぜ韓国は日本に対してそこまで不満を募らせているのか。そして日本はこの問題にどう対応すべきなのか。日韓交渉の過程を研究してきた吉澤氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。

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今週の論点
・日韓で合意されていない、植民地支配の合法性・不法性
・「もはや無効」という玉虫色の表現で先送りにされたもの
・優位な立場にいる日本から、反韓的な言説が噴出する理由
・ヴァイツゼッカーのように国と国民を切り分け、責任を取ることができるか
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■日韓で合意されていない、植民地支配の合法性・不法性

神保: 今週は日韓問題をきちっと取り上げたいと思います。普通にニュースを見ている限り、非常に異常な状態になっていると言われている日韓関係。特に日本から見れば、韓国が異常だという言説が圧倒的に多いと思いますが、韓国側がどういう思い、立場であのような言動に至っているのか、ということがあまりにも考えられていないようです。そこで、まずは事実関係を知っておかなければということで、ゲストに新潟国際情報大学国際学部教授の吉澤文寿さんをお招きしました。

 

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