マル激!メールマガジン 2019年2月6日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第930回(2019年2月2日)
ゴーン逮捕とJOC贈賄疑惑とファーウェイCFO逮捕の接点
ゲスト:北島純氏(経営倫理実践研究センター主任研究員)
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昨年11月19日に日産のゴーン会長が逮捕され、長期の勾留に対してフランス政府が懸念を表明する中、今後はフランスの当局が12月10日に2020年の東京五輪招致を巡る贈収賄疑惑で、日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長を事情聴取していたことが明らかになった。既に予審判事が、贈賄の疑いで竹田会長に対する捜査に着手しているという。
その一方で、米政府の意向を受けたカナダの検察が、中国の通信機器大手ファーウェイの孟晩舟副会長兼CFOを1月3日に逮捕すると、今度は中国当局が相次いで13人のカナダ人を拘束。一見、報復合戦とも思えるような司法権力を使った国家間の衝突が激化している。
確かに司法権力は国家にとっては軍隊に次ぐ「実力組織」であり「暴力装置」でもある。軍隊を使った戦争の代わりに、司法権を使って競争に勝とうとするのが、グローバル化時代の覇権と経済利権をめぐる新しい戦いの形なのだろうか。
外国公務員の贈賄罪に詳しい経営倫理実践研究センター主任研究員の北島純氏は、東京五輪の招致委員会の贈賄疑惑に対する捜査自体は2016年から始まっているものなので、今回の捜査が政治的な意図を持った報復と考えるのは無理があると指摘する。また、東京五輪の招致委員会への疑惑自体が、もともとはロシアのドーピング問題に対する調査報告に端を発するものだったことから、そこに日本に対する何らかの政治的な意図があったとは考えにくいという。とは言え、不自然な点が多いのも事実だ。例えば、ゴーン会長に対する逮捕の容疑にしても、7年も前から行われていた行為をなぜ今になって急に逮捕に至ったのかなど、不可解な点は多い。
日産の43%の株を支配するルノーの筆頭株主はフランス政府だ。経済的に苦境に陥っているフランスが、日産の株を買い増すことで日産を子会社化し、より自国の経済にメリットをもたらすために利用しようとしたとしても、それほど不思議な話ではない。その一方で、日本政府にとっても、日産を他国に奪われることは、是が非でも避けなければならない。日産の社内に蔓延するゴーンのワンマン体制やルノーとの不平等な取り引き関係に対する不満と、日産の国外流出を避けたい政府の意向が、ルノーによる植民地支配のシンボルだったゴーン氏の排除で一致した結果が、日産による内部告発であり、恐らく政府も承認している日産と検察の司法取引という形で結実した可能性が高いのではないか。
日本は昨年6月から司法取引が可能になり、検察の裁量が大幅に拡大している。北島氏は司法取引によって「コンプライアンス・クーデター」が容易になったと指摘するが、どんな企業でも、あるいは個人でも、大なり小なりコンプライアンス上不都合なことの一つや二つはあるだろう。特定の企業や個人を狙い撃ちにして、その側近に司法取引を持ちかけて標的についての不利な証言を引き出せば、もはや日本には検察が逮捕できない相手などいないのではないかとさえ思える。
グローバル化が進むところまで進んだ今、やや遅れながら、国の司法権が国外にまで及ぶことが当たり前になる時代が到来する気配だ。既にほとんどの国が、外国の公務員に対する賄賂を違法化する法制度を整備している。今回の東京五輪招致委に対する贈賄の嫌疑は、それがいよいよ民民取り引きにまで及ぶ先駆けとなるかどうかが注目される点だが、その事件も、また他の事件を見ても、その背後には高潔や公正さの維持のためというよりも、国と国の国益をめぐるエゴのぶつかり合いが先行しているように見えるところが気になる。
世界は国家間の司法権力がぶつかり合う時代に突入したのか。そうした中にあって、日本で導入された司法取引やフランスや米英で導入されている民民取引にまで贈収賄の枠を拡げるような、より大きな裁量を捜査当局に持たせることにリスクはないのか。北島氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・民間の「贈賄」も問題視されるようになった現在
・東京五輪招致にかかわる不正問題が浮上した経緯
・民民の贈収賄のようなやり取りを禁止にするか、ガラス張りにするか
・ファーウェイ事件の見立てと、コンプライアンス・クーデター問題
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■民間の「贈賄」も問題視されるようになった現在
神保: 日産問題に五輪招致不正、カナダとファーウェイの問題など、国際間の贈収賄や事件が多発しています。グローバリゼーションというと、主に経済活動を指すと思いますが、不正や犯罪も完全にグローバル化されている時代に、実は司法制度がちょっと遅れているのではないかという気がします。
宮台: 僕は昔、マーケットリサーチの仕事をしていましたが、海外で製品を売り出し、プロモーションしていく場合に、どういう名称がタブーに抵触するか、CMのコンセプトに問題がないかなど、自分たちが知っているローカルルールの範囲を超えている部分については、法務の専門家に細かく検討してもらっていました。一般的にそういうことがあると思うのですが、今回は司法の担当者がグローバルに任務をまっとうしようとするときに、これまで突き当たらなかったような問題にぶつかって驚いていると。グローバル化がある程度、進んだ状態で初めて出てきた問題だということがよくわかります。
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