マル激!メールマガジン 2018年10月3日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第912回(2018年9月29日)
トランプ政権下で起きている2つの異常事態の意味するもの
ゲスト:前嶋和弘氏(上智大学総合グローバル学部教授)
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これを異常と呼ばずに何と呼ぼうか。かねてより前例のない異例続きだったトランプ政権だが、11月の中間選挙を前に、いよいよその異常さに拍車が掛かっている。今回の異常事態は最高裁判事候補の性的暴行疑惑と、司法省高官による政府転覆の2つだ。
トランプ大統領が最高裁の判事に指名したブレット・カバノー氏は、輝かしい経歴に加え、上院で過半数を占める与党共和党の手厚い支持を受け、難なく承認される見通しだった。
ところが、承認の直前になって、突如としてそのカバノー氏に36年前の性的暴行疑惑が持ち上がった。被害を名乗り出たクリスティン・ブラジー・フォード氏は9月27日、上院司法委員会の公聴会に証人として呼ばれ、36年前の暴行を受けた際の状況を生々しく説明。その後、彼女と入れ替わりで証言台に座ったカバノー氏が、涙ながらに自らの潔白を訴えるという、映画さながらの劇的なシーンが展開された。
今回の最高裁人事は、唯一の中道派として最高裁で長年キャスティング・ボートを握っていたケネディ判事の引退を受けたもので、保守派のカバノー氏が承認されると、向こう30年にわたり保守派が最高裁の多数派を握ることになる。トランプ大統領が全幅の信頼を寄せるカバノー氏の承認が頓挫するようなことがあれば、政権の大きな失速原因となるばかりか、11月6日の中間選挙への影響も避けられないだろう。
もう一つの異常事態は先週、司法省のナンバー2で、同省でトランプ大統領の「ロシア疑惑」を指揮する最高責任者を務めるロッド・ローゼンスタイン司法副長官が昨年5月、大統領の解任要件を定めた憲法第25修正条項に則り、トランプ大統領の解任を企てていたというスクープ記事がニューヨーク・タイムズに掲載されたことを受けたもの。
ローゼンスタイン氏は昨年5月にコミー長官が事実上罷免された後、トランプが大統領に不適格であることを証明するために、大統領との会話を盗聴することなどを政権幹部に提案したとされる。今のところローゼンスタイン氏は、ニューヨーク・タイムズの記事は不正確としながらも、記事の趣旨は全否定していない。
普通であれば、もし報道内容が概ね事実だとすれば、政権幹部が事実上のクーデターを企てたに等しく、トランプ大統領は直ちにローゼンスタイン氏を解任したいところだろう。しかし、ローゼンスタイン氏がトランプ大統領を捜査する立場にあるため、これを解任することが「司法妨害」にあたる可能性があり、事はそう簡単にいきそうもない。
トランプ政権は満を持して指名した保守派の判事の承認を得ることに失敗する可能性が濃厚になってきた上に、政権内には抵抗勢力やクーデター未遂をした幹部が、トランプ政権の命脈を左右する疑惑を捜査しているというこの異常事態を、われわれはどう捉えればいいか。日本はそのような状態にあるアメリカと、新たな自由貿易交渉など始めて大丈夫なのか。これもまた民主主義の新しい形なのかなどを、希代のアメリカウオッチャーである前嶋氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・アメリカで「最高裁の判事」が注目される理由
・“トランプワールド”では「陰謀論」で終わる
・“トランプ政権内の抵抗勢力”はいかに報じられたか
・アメリカのほころびが、世界に与える影響
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■アメリカで「最高裁の判事」が注目される理由
神保: 今回はアメリカの話をどうしてもしたいと考えました。状況が面白すぎるので、少しアメリカオタクが入っているような話になるかもしれません。朝まで歴史的な公聴会があり、アメリカ関係者は眠い目をこすりながら1日を過ごしたと思います。ゲストは、上智大学総合グローバル学部教授の前島和弘さんにおいでいただきました。
日本では相変わらず、日米関係やトランプが金正恩の手紙を受けてどう言った、というようなニュースが出てきますが、政権の足元が揺らぐような異常事態になっています。3大ネットワークが朝からぶち抜きでずっと報じているという、9.11以来初めてじゃないか、というくらいの問題になっていますが、日本ではほとんど報じられておらず、この温度差はなんなのかと思いました。
前嶋: 最高裁判事に指名されたブレット・カバノー氏にまつわる問題ですが、日本の場合、司法消極主義なので、最高裁がそれほどモノを言うことはありません。アメリカの場合は、最高裁が社会を変えてしまいます。
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