マル激!メールマガジン

岩村充氏:ビットコインが変えようとしているもの

2017/09/06 20:00 投稿

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マル激!メールマガジン 2017年9月6日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/
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マル激トーク・オン・ディマンド 第856回(2017年9月2日)
ビットコインが変えようとしているもの
ゲスト:岩村充氏(早稲田大学大学院教授)
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 何やらビットコイン周辺が喧しくなってきた。仮想通貨「ビットコインの価格が急騰しているそうだ。中国を中心に世界で利用が進んでいるビットコインだが、日本では2014年にビットコイン取引所「マウントゴックス」が破綻して、利用者に大きな被害が出たこともあり、まだ不安を持つ人が多いのではないか。
 ビットコインは一般に「仮想通貨」とか「暗号通貨」と呼ばれるが、その仕組みはわれわれの従来の「通貨」の概念を覆すもので、やや謎に満ちている。『中央銀行が終わる日 ビットコインと通貨の未来』などの著書のある早稲田大学大学院の岩村充教授は、野球やサッカーと同じように、ビットコインは参加者たちが決めたルールによって運用されているもので、最初に集まった少人数の人々が決めたルールに則って普及していったので、特定の国の政府や企業のコントロールを受けないのが特徴だそうだ。
 とは言えビットコインも通貨だ。他の通貨が通貨としての価値を持つのは、発行した政府の信用の裏付けがあるからだ。ビットコインの価値は何によって裏付けられているのか。
 実はビットコインには独特な、そして素人目にはやや謎めいたカラクリがある。ビットコインは10分ごとに数式の問題が発生し、それを最初に解いた人に12.5BTCが発行されることで、新たなビットコインが市場に投入される仕組みになっている。その問題を解く能力は保有するコンピュータの処理能力に依存し、より多くのCPUを稼働させた人が最初に問題の解を見つけられる可能性がより高くなるように設計されている。
 これはかつての金鉱山の採掘と似ている。金の価値は金を採掘するコストに裏打ちされている。需給関係によって金の価値が上昇すれば、ある程度の採掘コストをかけてでも金を掘り出す価値が出てくるが、金の価格が安くなり採掘コストが金の価格を上回るようになると、わざわざ損をするために金を採掘する人はいなくなり、金の流通量が増えなくなるので、再び需給関係が調整される。数式を解いてビットコインを掘り当てようとする作業をマイニング(採掘)、それを行う人をマイナー(採掘人)と呼んでいるのはそのためだ。
現時点では10分ごとに12.5BTCのビットコインが新たに発行されているが、この発行ペースもほぼ4年毎に半分になっていくようにルールが設定されている。これはちょうどオリンピックイヤーごとに半分になっていく計算で、東京五輪が開かれる2020年にはマイナーが問題を解くことで得られるビットコインは現在の半分の6.25BTCになる。この方法で行くと2141年には、金の埋蔵量が枯渇するのと同じように、計算上は新たなビットコインが発行されなくなる。
 ビットコインのこのようなルールも、将来は変わっていく可能性はある。結局のところビットコインのルールは運用者たちが決めていることだからだ。また、今のところ「ビットコイン」という特定の仮想通貨に多くの注目が集まっているが、世界には既に1000種類以上の仮想通貨が存在する。ビットコインの欠点を改良した新たな仮想通貨が登場し、ビットコインに取って代わり主役の座に座ることも十分にあり得る。
 将来、何が仮想通貨のディファクト・スタンダードとなるかはわからないが、ビットコインには既存の通貨にない多くのメリットがあることは事実だ。また、その値動きの激しさ故に、投資・投機が目的でビットコインを売買している人も増えている。そこがビットコインの魅力でもあるわけだが、あまりにも投機目的での利用が主流になってしまうと、当局の規制が入るなどして、その画期性が損なわれてしまう恐れもある。
 ビットコインは何を変えようとしているのか。国家の専権事項だった貨幣発行の独占権が揺らぐことはあるのか。そもそも通貨とは何なのかという基本的な問いにも触れるビットコインについて、岩村教授と議論した。

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今週の論点
・そもそもビットコインとは何なのか
・ビットコインが生み出される仕組みと、ブレイクのきっかけ
・ビットコインのメリット/デメリット
・ビットコインから透けて見える、通貨制度の未来
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■そもそもビットコインとは何なのか

神保: 今回のテーマは、実は一度も取り上げたことがなかった「ビットコイン」です。言葉はよく聞くのに、これほど訳がわからないものは初めてかもしれません。

宮台: そうですね。「海外送金がそんなに安くなるのか。いろんな事業をやっている方々にとっては便利だろうな」というのはわかりましたが、しかし仕組みや概念的な意味もわからないので、僕らは怖くて手が出ない感じなんですよね。ただ、「お金とは何なのか」ということを考える、いいきっかけになると思います。

神保: ビットコインは多くの可能性を秘めていて、場合によっては通貨のあり方を今後変えていく可能性もあると。今回、ずいぶん勉強したのですが、わからないことだらけだったので、「いろは」から伺いたいと思います。ゲストは元日銀に長く勤められていて、現在、早稲田大学大学院の教授をされている岩村充さんです。
 最新のニュースとして、「ビットコインの価格が50万円を超えた」というものがありますが、これだけ聞くと、要するに金貨のように値段が上った、下がったという話をしているように思ってしまいます。

岩村: ビットコインというのは、ある意味で確かにバーチャルゴールドなんです。詳しく説明すれば面倒な話になるのですが、ビットコインの価値というのは「電気代の固まり」。つまり、コインとしてのデータの体系をつくるために、非常に大きな計算コストがかかる――要するに、コンピュータの電気代がかかるんです。

 

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