マル激!メールマガジン 2016年11月30日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第816回(2016年11月26日)
何とかして自衛隊に銃を撃たせた人たちがいるようだ
ゲスト:伊勢崎賢治氏(東京外国語大学大学院教授)
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自衛隊員たちはいったい何のためにこれだけのリスクを負わされているのだろう。政府は11月15日、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に参加する陸上自衛隊に新たに「駆け付け警護」任務を加えることを閣議決定し、20日には部隊の先発隊が、青森空港を出発した。
内戦など政情が不安定な国での国連平和維持軍(PKF)に参加した日本の自衛隊が、派遣先の近くで国連職員やNGOのスタッフが武装勢力によって危険な状態に陥った時、必要となる武力を行使した上でこれを救出するための権限を与えるのが、いわゆる「駆け付け警護」と呼ばれるものだ。
たまたま困った民間人の近くに武装した自衛隊がいるのだから、助けるのは当然だと政府は説明しているが、紛争国の実情に詳しい東京外語大の伊勢崎賢治教授は、それは現在の国連PKOの実態をあまりにも知らない人の議論だと指摘する。
国際貢献は重要だが、法的に軍隊として認められていない以上、武力行使には厳しい制約が課されることになる。結果的に日本のPKOはできる限り安全で治安の良い地域に施設部隊を送り、道路や橋を建設したり井戸を掘ったりする兵站に専念するしかない。それがこれまでの日本の国連PKOの実態だった。
結局、日本が合法的に国連PKOに参加するためには、憲法を改正して自衛隊を正規の軍隊として認定するか、国連PKF(国連平和維持軍)への参加はあきらめ、国連文民警察、国連軍事監視団など他の分野の国連PKOに参加するかの、いずれかしかない。
しかし、歴代政権はその無理筋を、何とかして自衛隊が武力を行使しないで済む状態を死守し、自衛隊員にも犠牲が出ないような綱渡りを繰り返すことで、何とか日本のPKFへの参加を続けてきた。これに対して従前より伊勢崎氏は、「撃ちにくい銃」を持たされている日本の自衛隊は、何らかの武力衝突に巻き込まれた場合のリスクが大きすぎるとして、日本のPKO参加のあり方を批判してきた。
しかし、今回「駆け付け警護」なる新たな任務を与えられたことで、「撃ちにくい銃」が、少なくともこれまでよりは「撃ちやすく」なることを伊勢崎氏は懸念していると言う。
武装した相手に一発でも発砲すれば、当然相手も発砲してくるので、交戦状態になる。そのような事態になれば、自衛隊員に死傷者が出なかったとしても、これまでの「自衛隊は軍隊ではない」という前提が崩れることは必至だ。撃たなければ自衛隊員に死傷者が出る可能性が増し、撃てば憲法上の問題が生じる。
伊勢崎氏は今回の「駆け付け警護」について、建前では「国際貢献」を謳いながら、本当の意図は自衛隊が元々抱えていた問題をより顕在化しやすくするという、隠れた目的があるのではないかと訝る。
実際、防衛省は駆け付け警護の権限が付与されることで、現在南スーダンに派遣されている自衛隊の警備小隊が、国連PKFの指揮官から歩兵部隊同然に扱われることを恐れ、部隊の引き上げを検討していたことが明らかになっている。国際貢献の美名のもとで着々と進む、憲法改正へ向けた政治ゲームが生み出すリスクのすべてを抱え込むことになるのが自衛隊であることを、当事者となる防衛省は嫌というほど知っているのだ。
国連PKOの現場を知る伊勢崎氏も、何かの事故が起きるのは時間の問題だと言う。伊勢崎氏自身は新憲法9条を提唱するなど、自身も憲法改正には前向きだが、とは言え、事故で世論が沸騰し、その勢いで憲法改正議論に突入するような、そんな憲法改正は嫌だと言う。
新たに付与された駆け付け警護任務によって自衛隊が抱えることになるリスクと、自衛隊員の銃をより撃ちやすくしたい人たちの狙いなどを、伊勢崎氏とともにジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・「以前より撃っていいが、何か起きたらすべてお前の責任だ」
・「事故」が望まれている可能性
・憲法にも矛盾しない、文民警察の派遣
・日本人に憲法は書けるのか
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