「本当はタブーなんてないのに、勝手に自己規制をしているのが日本のマスコ
ミだ。記者やディレクターたちは勝手に自己規制をして、勝手にタブーのふり
をしている。これが最大の問題だ」

 こう言い切った田原さんの発言を端緒に、議論は白熱していく。

「政治家に質問できない政治記者が増えた」

「論争になることを避けようとする」

「ディレクターが上司から怒られることを嫌がって勝負しない」

 こうして自主規制をテーマに話が広がっていった。

 確かに日本のメディアの「タブー」と言い訳される自主規制はヒドい。

 1999年、私がニューヨークタイムズに入った際に一番驚いたのは、ほか
でもない日本のメディアとの「タブー」における感覚の違いだ。それは善悪の
問題ではなく、根本的な価値観の違いだとシンポジウムの冒頭でも私は述べた。

 ニューヨークタイムズでは「自主規制」は明確に「恥」であり、ジャーナリ
ズムにおける「罪」であっ