オ〇ニストによる音楽批評

Oneohtrix Point Never/Garden Of Delete

2016/09/19 23:55 投稿

  • タグ:
  • エレクトロニカ
  • アンビエント
  • テクノ
  • ヴァイパーウェイブ



1. Intro
2. Ezra
3. ECCOJAMC1
4. Sticky Drama
5. SDFK
6. Mutant Standard
7. Child Of Rage
8. Animals
9. I Bite Through It
10. Freaky Eyes
11. Lift
12. No Good
13. The Knuckleheads

USはマサチューセッツ州ウェイランド出身、現在はNY/ブルックリンを拠点に活動するエレクトロニカ/アンビエント/ヴァイパーウェイブ系ミュージシャンの最新作。特異的な前衛電子音楽で聴く者をアッと言わせる奇才Daniel LopatinによるプロジェクトOneohtrix Point Never(OPN)と言えば、代表作「Replica」や前作「R Plus Seven」を筆頭とする「R」シリーズでエレクトロニカ/テクノ周辺だけでなく各メディアからも絶大な支持を集めて、今やAphex TwinやBrian Enoの後継者なんて呼び声すら上がっている。そんな彼のWarpからリリースされた最新作「Garden Of Delete」はなんでも幼少~学生時代にハマっていたとされるPanteraやSlayer、Def Leppardといったハードロック/メタルバンドや初音ミクといった近年のヴォ―カロイド音楽からの影響、そしてNine Inch NailsやSoundgurdenとのツアーから触発されたもので、商業主義の在り方を通して自分なりのポップミュージックを目指した作品だと知ったときはやっぱりこの人頭おかしいんじゃないのとも思ったけど、それ以上にその一つ一つの影響が彼自身の音楽にどのように混ぜ合わせ料理されていくのか全くもって想像が付きませんでした。

その前評判通り一回聴いただけでは案の定善し悪しの判断にとても悩むことになりましたが、何週か通して見ると多少なりとも見えてくるところがあって、ヴァイパーウェイブ/アンビエントの卓越した静の構築美の上に成り立っていた前作と比べると、ハードな高音ノイズやサイバーテクノ風味の粗暴な音雨の数々からしても明らかにアッパーで縦横無尽に空間を飛び交う電波の数も計り知れないレベルにまで達していて、全くもって間逆の作品であると同時にある種の高揚感を覚えずにはいられない謎の中毒性を孕んでいるのも事実。更に言えば暴力的な音塊の合間に見え隠れする喪失感を匂わせる憂いを帯びた旋律の主張もより強くなっているようにも思える。これは一時ムーブメントとなった「たまごっち」を山ほど付けた鎧?を纏い戦争ごっこのような遊びを繰り広げる謎PVの4. Sticky Dramaや9. I Bite Through Itあたりが特に顕著に思えて、変声期を用いて少年期の声へとタイムスリップした彼のあどけない歌声や緩めのシンセ曲調から一転、バキバキの電子ノイズをマシンガンのように飛ばしたりと思いのままに場面がブツ切りに入れ換わっていく展開力に溢れた曲の数々は、本作のコンセプトになっている「思春期の精神状態」を表すような感情が揺れ動く様が音に反映されたかのような先の見えない不安定さが付きまとっている。当然へヴィメタルを聴いていた時期の彼や(僕ら)にも当てはまる可能性は十分に考えられるし、そういったアーティストを聴きながら制作していたという逸話にも妙に納得がいく。そしてその思春期特有のチクチクモヤモヤするような感情は大半の人間であれば一度は体験したことのあるもので、そういった背景をある程度理解してから聴き直すと本作の味わいがガラリと変わってくるし、未だモラトリアムを抱え込んでるような童貞リスナーであれば本作を聴いてなんらかしらのメッセージを感じ取れるはずだろう。

前項では毛色の違いや制作の背景についてでしたが、Aphex TwinやBoards of Canadaのような安定したサウンド構成からなる極めて完成度の高いテクノ/アンビエントとはタイプの異なる、ここからこういう風に流れていくだろうなという既存の固定概念をまんまと裏切ってしまう狡猾な胡散臭さやジャンク感、その不規則で多彩な音がいびつながらもしっかり成り立っている絶妙なバランス感覚などの圧倒的な個性も魅力の一つだ。それは過去作を聴いた時点でも存分に味わっていたつもりでありましたが、コロコロとチャンネルが変わる摩訶不思議なEDMといったかんじの2. Ezraや混沌に満ちたサイバードローンへと雪崩込んでいく10. Freaky Eyesにしても妙な違和感がもたらしてくれる謎の中毒性にズブズブとハマり抜けられなくなります。他にもユラユラと波打つように刻まれるビートの気持ち良さったらない6. Mutant Standardやスペーシーなシンセが生み出す壮麗な煌びやかさにハッとさせられる7. Child Of Rage~8. Aniamlsの広大なスケールや瞑想的な静寂サウンドに浸れる中盤も尚良し。既に去年の年間ベスト公開からかなり時間が経ってしまいましたが、そのトップ3(同率1位)に選出するだけの内容ではあると思います。多様化するエレクトロニカ/テクノ周辺の最先端を表し、未来をも切り開いていくかのような革新性に満ちた傑作アルバム。


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