オ〇ニストによる音楽批評

Vampillia/My Beautiful Twisted Nightmares in Aurora Rainbow Darkness

2014/05/14 22:00 投稿

  • タグ:
  • ポストブラック
  • クラシカル
  • ポストロック
  • 邦楽
  • アヴァンギャルド



1. my beautiful twisted nightmares in aurora rainbow darkness
2. ice fist
3. hiuta
4. seijaku
5. storm of the snow
6. anata ni kakaru niji
7. draumur
8. von
9. tui

日本は大阪出身のポストロック/アヴァンギャルド/モダンクラシカル/ブラックメタルバンドの1st。先日紹介した様々なアーティストとのコラボった企画盤「the divine move」に続く待望のフルアルバムである。デビューから約9年、お蔵入りとなったAnimal Collective/Grizzly Bearなどの有名インディバンドを手掛けたプロデューサーと制作してたらしい幻の1stからEPやらシングルなどを挟みようやくリリースに漕ぎ着けたといったところだろう。そんな本作、Sigur Ros,Bjork,Brian Eno等で知られるアイスランドのGREENHOUSE STUDIOでレコーディングされ、プロデューサーにはTim Hecker,Colin Stetson,Swansなどを手掛け、最近5年ぶりとなる新作をリリースしたBen FrostとBjorkや近年のSigur Ros作品で知られるGREENHOUSE STUDIOのオーナーでもあるValgeir Sigurðssonを迎えている。Mixは全曲world's end girlfriend、マスタリングはKashiwa Daisuke、そして企画盤同様にVirgin Babylon Recordsからのリリース。ゲスト陣は元SwansのjarboeとVampillia作品でお馴染みのツジコノリコ、それに加え現地の聖歌隊やオーケストラも参加。そんなポストロック意識バリバリな体勢を揃えただけあって、過去最高に神秘的でオーケストラの部分が強調された作品に仕上がってて、そのことからクラシカル/ポストロック的な音を極めるためにアイスランドでの全編録音に拘ったんじゃないかと推測できる。ちなみにこのタイトルってたぶんカニエの前作「My Beautiful Dark Twisted Fantasy」から頂いてきてるんだよね?w

アイスランド産ポストロックらしさはタイトルトラック1. my beautiful twisted nightmares in aurora rainbow darknessからモロに出ていて、ツジコノリコによるおとぎ話のような囁く語り(歌詞は結構ダーク)とピアノとストリングスによる繊細かつロマン溢れる調べが見せる前半パートは実に美しい。歌詞のせいか優しさの中にある狂気みたいなものを想起させるのがまたなんともメルヘンでおぞましい気分になるもののこういう雰囲気も好き。そして後半へと移るとそのクラシカルな流れから徐々に不穏な空気が漂い始めて、ドローン/ノイズによるドス黒い世界へようこそ...と誘われる。重圧な荘厳クラシカルパートはそれこそIhsahnやUlverの新作と同じ黒い凄みを発揮しており、最早これ芸術の域にまで達してるんじゃね?と感じたと同時にあ、こないだ行ったライブの最初の曲これだったわーと今更ながら思い出したという流れね。そのセトリどおりに進行し、クラシカルとダカダカダカっと激情的な轟音を交互に繰り返すのが印象的なイントロからマスロックっぽい軽快なパートを挟み、モンゴロイド氏の野獣のような咆哮と感情を爆発させたかのようなエクストリームな苛烈さをぶつける2. ice fist。他にもオーケストラによる優雅な演奏と邪悪な轟音、更にはVelladonによるオペラティックな歌声と破天荒極まりないアヴァンギャルドメタルらしい要素をギュッと凝縮してしまっている。その静と動が繰り返され目まぐるしく情景が変化していく様は、まるで先の読めない自然界の猛威を生で見てるかのようなかんじすらあります。もの哀しい雰囲気を引きずったピアノの旋律から始まる3. hiutaは、ジャズやクワイヤなどを織り交ぜたKayo Dotのようなカオスな静パートを序盤に持ってきて、後半からは轟音ノイズ混じりのブラックを濁流の如く一気にブチまけたかのように思ったら、デヴィンもびっくりの破天荒なミュージカル仕立てな展開に入るなど、これまたカオスという意味で彼ららしい構成の一曲。ミステリアスな雰囲気を放ちつつ、突如強引に現れるドラミングの嵐が印象的な4. seijaku、マスロック調のノリで程よいやかましさの5. storm of the snow、ピアノのイントロから愉快なノリで爆走する6. anata ni kakaru nijiの1分少々ながら濃い2曲を一気に駆け抜ける。7.から完全にSigar Ros化じゃないけどクラシカル/ポストロックな路線へと突入。アイスランド語による語りを含んだアコースティック調の7. draumurは、単にアコースティックというだけではなく、ニカっぽいミニマルな感覚や軽快に駆けるパートもあったりで器用な一面も見せる。そして8. vonとかマジでシガーロスやwwってなるんだけど、シガロを意識したであろうアイスランドの壮麗な情景を映し出すような壮大な展開を繰り広げ、特に後半にかけての高揚感に満ちた流れはヘブン状態に陥りそうなくらいでとにかく美し過ぎる。「Alchemic Heart」にも参加していた元SwansのJarboeによる凛としつつも怪しげで艶やかな歌声をフューチャーした9. tuiにて壮大なポストロック劇は静かに幕を閉じる。

流石に1stと銘打っただけあって作品の完成度は過去最高と言える出来です。静に寄ってはいるものの激しいブラッケンな轟音などもここぞという場面で爆発させており、非常に彩り豊かで独特の世界観を描いた作品となっています。企画盤が一曲単位でポップに聴かせるタイプの作品だとすると、本作はアルバムトータルでじっくり聴かせるタイプの作品で、どちらが好みかと言われたら両方と答えたいところだけど、静のVampilliaのが好きってあたりから今作を取るでしょうね。インパクトの点で言えば企画盤が圧倒的なんだけどさ。ただ大胆にオーケストラを導入したことにより、魅力の一つであった和のテイストが薄い点は少し気になりました。ですが、完全アイスランド産でシガロライクなポストロック目指したとあればしょうがないかな。特に7. draumur以降は完全に静のVampilliaと化してましたからねー。あとは本気度が高いせいか時折見せていた悪知恵のようなものは皆無で、企画盤における某アイドルがでしゃばったりとかは一切ないのも嬉しい。んで前回も似たようなこと書いた気がするけど、このオワコン邦楽界からここまで本気度の高いバンドが出てきて、しかもポストやブラックなどといったジャンルをクロスオーヴァーさせた前衛的な音楽性っていうあたりまだまだ国産界隈にも希望が残ってるなとちょっと嬉しくなったり。ということで初めて聴くなら企画盤をオススメしますが、本来のVampilliaらしさが溢れてるのは本作だと思うので、こちらも一緒にチェックして頂きたい。当然ベスト行きも決まったようなもんで、このままだと邦楽のベストはVampilliaの1.2.フィニッシュになりそうだわ。にしても先月はVampilliaの新作を2枚も聴けてAlcestと同時にライブも堪能できた大満足の月でした。


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