TSUYOSHIと西崎信太郎のR&B談義

R&Bフリーク以外は置き去りにするR&B評 第13編『Aaliyah』

2015/09/20 14:00 投稿

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「Aaliyah」(アリーヤ)

アメリカ合衆国ニューヨークブルックリン出身の歌手、女優。「アリーヤ」とはアラビア語で「最も高質な者」という意味。
1994年、15歳のときにR・ケリーによるプロデュースでデビュー。歌手としても女優としても絶頂期の2001年、22歳という若さで飛行機墜落事故に遭い死去。


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<TSUYOSHI評>

アレサ・フランクリン、パティ・ラベル、チャカ・カーン、ホイットニー・ヒューストン。アメリカのR&B/Soulの女性シンガーというと、かつてはゴスペル出身であったり声量豊かなタイプのシンガーが比較的多かったような気がする。こちらから歩み寄らずとも、有無を言わせず強烈な個性と共にその歌声を投げつけてくる分かりやすいタイプ。もちろんそれとは逆のタイプもある。ダイアナ・ロス、デニース・ウィリアムス、ミニー・リパートン、ジャネット・ジャクソン。どちらかといえば「か細く」、壮大なパワーをもって歌い上げることをしない、比較的優しい歌声タイプ。アリーヤはこちら側。そのうえ、どこかしら琴線に触れる声の響き。人の機微に触れる歌のニュアンス具合。彼女は見た目の美しさもあいまって、間違いなくスターになっていたであろう才能を持ちあわせていた。

『At Your Best (You Are Love)』を聴いた当時はまさか15歳の歌声とは思えなかった。原曲のアイズレー・ブラザーズのバージョンに触発されたであろう説得力のある歌。15歳の経験値では到底感じとれるような内容の歌詞ではないと思うが、しかしながらいつの時代もやはり素晴らしい歌というのは、ある意味において人々が理解できる範疇を遥かに超えていってしまうもの。幼い頃からショービジネスの世界にいたが故の大人びた表現力の裏にある、未だ無垢のままの心を持ち合わせたかのような天使の歌声。この時のプロデューサーのR・ケリーがただのアイズレー好きだったのは理解できるが、この曲をアリーヤにあてがったセンスはただただ凄いとしか言いようがない。

しかしアリーヤはまだ若かったせいか、必ずしもレベルの高い歌を常にレコーディングできていたとは思えない。当時は現在のような安定した音程補正ソフトなどがなかったので、それこそ歌の「あら」は目立ちやすくはあったであろうが、けれどもである。また全体的にアリーヤの歌はちょっとテンションが低めな印象を受ける。レコーディング中「大事に大事に」「丁寧に丁寧に」歌っていると起こりやすい現象ではあるのだが、けれどもである。結局こういった事などにより、彼女はどことなくミステリアスな雰囲気の歌を歌うという印象を人々に植え付けてしまっているのかもしれない。ところが私の知る限りではあるが、彼女が映画のサウンドトラックに残した歌『Journey To The Past』(http://youtu.be/vDbvjqRuMTA)は、ほかに彼女が残したどの歌よりも「明るい」のである。正直、これはアマチュアシンガーの人がプロのシンガーになったくらいの差である。実際は心の持ちようの話で、常に下を向いて歌っていた人が上を向いて歌っただけで歌は一変するものだったりするのだが。それくらいの明らかな違い。多分この曲だけは普段と違う人がヴォーカルディレクションをしたのではないか。歌声がキラッとしている。それこそデニース・ウィリアムスの『Free』のような輝き。そして曲自体のアレンジのアイデアの出どころは明らかにマイケル・ジャクソンの『Human Nature』。それを本当にほんのちょっとだけ軽快にした雰囲気のトラックの上で軽やかに歌うアリーヤ。途端に歌が上手い。ずっとこの感じの歌唱をしたまま現在も生き続けていたとしたら、今頃は本当に素敵な歌を歌っていたんだろうなと思うとやはり残念である。彼女は女優でもあったわけだから、年齢を重ねる毎に歌の説得力は増していったであろうし。かのバーブラ・ストライサンドのようになっていって欲しかったなと、個人的には思う。


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<西崎信太郎 評>

初めてアリーヤの存在を知ったのは、セカンド・アルバム『One In A Million』がリリースされた頃。当時僕は14歳か15歳で、毎週土曜日の深夜帯に放送されていた「Count Down Groove」という洋楽番組を見る事が最高の楽しみだったわけですが、この「Count Down Groove」でプロモーションで日本に訪れていた際のアリーヤを特集した内容が放送されていました(その時の模様がこちら → https://www.youtube.com/watch?v=6FX631ya1DI)。この番組を見てアリーヤを知ったわけですが、正直当時の革命的だったティンバランドのあのサウンド(チキチキ系)が、当時の僕としてはどうも好きになれず。後追いで聴いたファースト・アルバムで惚れ込んだ、という分かりやすい経緯でアリーヤを好きになりました。

賛否両論あるかと思いますが、絶頂期に突然人生の幕をおろされる運命となったアリーヤは、人々の記憶の中に栄光のみが焼き付いているという見方をすれば、悔やむ気持ちも少しは和らぐのかな、なんて思ったりもするわけです(2パックやレフト・アイもそうですが、むしろそう思うしかない)。そう考えると、遺作となったサード・アルバムのタイトルがセルフ・タイトル『Aaliyah』だったという事も(結構珍しいパターン)、運命的だったのかななんて思ってしまいます。

しかし、デビュー・アルバムが『Age Ain't Nothing But A Number(年齢なんてただの数字)』というインパクト大なネーミング(ティーンズがバブルガムでポップなイメージを持たれやすいというのを避ける為のネーミングでもあったよう)、それをR・ケリーが全面バックアップというトピックで鮮烈なデビュー。注目されない理由がない程の逸材だった訳で、衰えを隠せずに引退期を逃すヴェテラン・アーティストとは一線を画していたであろうと思うと、やはり惜し過ぎるわけです。

ゴリゴリのヒップホップ・ソウル、とはいかないまでも、アリーヤの声はヒップホップ・ビートと相性の良い声質。そう考えると、セカンド、サードと歳を重ねてリリースされたアルバム方が進化の過程と共に良いバランスを保っているかと思いますが、僕個人としてはやっぱりファーストが一番好きなアリーヤ像。バラード"Street Thing"をどれだけ聴いたことか。

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