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つめづめ草

「最遅」の経緯から考えたこと

2017/04/26 21:08 投稿

コメント:4

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「マリオメーカー学会」の「最遅クリア部門」は私が言い始め、14年20万年と記録を伸ばし、これが驚くほど視聴が伸び(50万越え)、その後謝罪会見をして、記録を380万年としたところで、その翌日にそーさんという先輩研究者によって2兆年という圧倒的な記録が発表された。

完敗である。「きれいに負かされた」というのがぴったりくる表現だ。そしてそのきれいさが、私にとってなかなか面白い経験となった。

この一連の過程で、私が考えたことを書いてみよう。




●欲と純度

楽しんでいただいている方がたくさんいる中で恐縮ではあるが、私は正直、「380万年」は妥協の産物だと思っている。これが大していいものにはならないというのは、自分でもわかっていた。そう思いながらコースと動画をつくる作業は、それまでとは違って、なかなかにつらいところがあった。

理由を挙げると、まず前回コースの地味なバージョンアップでしかないことがある。大幅な技術革新、新しいギミックがない。その割に、スペースの限界まで詰め込まなければならず、また謝罪して自分でハードルを上げた結果、不具合は徹底的に潰す必要もあった。修正に修正を重ね、ようやく完成に近づいた頃に「20万年」コースを見返してみたら、あまりにシンプルなのに驚いた。そこからの修正の過程で、コースは実に醜いものになっていたのだ。

そんな地味な修正コースにもかかわらず、動画には全面的にボケをかまさなければならなかった。これが私の気分が乗らなかったもう一つの理由である。「記者会見」で一度捨てた「室伏」ネタを掘り返し、「ドゥダーーーーブ」なる勢いだけのネタも入れたその動画は、素材が悪いのに厚化粧を塗りたくった女のように、悪趣味なものとなったと思っている。なんだか脂っこい。

自分が納得できないものを、そうとわかっていながら発表するのは、表現者としては失格である。なぜそれでも動画を出したかというと、一点は、「最遅クリア部門」なのだから、地味ではあっても記録が更新できれば世に出す価値はあると考えたからだ。そしておそらくそれより大きな理由は、欲が出てしまったことだろう。

「14年」のときは、詰将棋好きによるニッチな研究で終わっていいやという思いがあった。それが「20万年」が50万再生と驚くほどヒットし、総合ランキング1位にまでなって、「記者会見」もそこそこいったために、感覚は歪んでしまった。次もランキング1位になるんだと思ってしまった。それに「記者会見」から「クリエイター奨励」なるものを始めた。「20万年」当時にはそんな存在も知らなかったが、あるきっかけで知ってしまって、知ったからにはやってみよう、と。あわよくばマリオメーカーで動画を作り続けて、副業でがっぽりいけるんじゃないかという雑念も入った。

なお「クリショウ」に対して快く思わない人もいるみたいだけれど、私はお金を稼ぐこと、お金持ちであることが悪いことように言われる今日の風潮はおかしいと思う(ので、自分の「クリショウ」利用も別に言ってもいいかなと。結局大した金になってないし 笑)。お金、名誉を含めた欲は、創作の大きな原動力の一つでもあるので、欲自体が悪いとは思わない。しかし今回の場合、欲に釣り合うほど「しっかり遅くする」発想がなかったために、見苦しいコース修正とボケの厚化粧に走ってしまった。

独創的なアイディアがあってこそ、欲は翼となるのだろう。それは創作の世界に共通して言えることかもしれない。創作活動(特に、常に独創性を問われるタイプの活動)を生業とする方々の心の葛藤が少しわかった気がする。



●完敗

そんなもやもやした思いで「380万年」をリリースした私に、強烈な顔面パンチが浴びせられた。そーさんの「2兆年」である。私の380万年という記録は、まさに一日天下に終わった。

完敗である。まず、年数の桁が違う。ホモサピエンスだのアウストラロピテクスだの言っている間に、宇宙の向こうまで飛んで行ってしまった。

そして、記録よりも私の胸に沁みるのが、機構と、動画のデザインの差である。

そーさんのコースは、私が複数の機構を延々とこねくり回しているのとは正反対に、一つの革命的アイディアをシンプルに実装した、純度の高いものだ。これまで最遅を進めてきた私の機構を何一つとして使っておらず、新規性は抜群である。水中スキンの優雅なテーマ曲の中で砲台から打ち出される羽メットが淡々と処理されていく様子も、なんとも言えない美しさがあるではないか。

そして動画のつくり。全くボケない。淡々と説明を進める。実験方法、データの扱い方も研究者として至極真っ当である。室伏なりカバーバーなり所帯染みたボケを重ねなければ怖くなる私に引き比べ、なんてクールなんだ。そして最後、クリア方法で満を持してボケる。「ユビキタスマリオメーカー社会」…、なんて知的なボケなんだ。

以上のように、年数でも機構・動画の美しさでも、私はぐうの音も出ないほどの完敗を食らった。再生数やランキングも大きな差がついた。当然である。最遅記録ではなくなった私の動画には価値はない。

かくして私は「きれいに負かされた」。まったく、自分でもすがすがしい。もちろん、そーさんに対する恨み節など全くない。むしろ、研究不正で謝罪をし、挙げ句の果てに欲に囚われ自分の心を売ったダッサイ男に、圧倒的なスケールで、一日天下というきれいなオチをつけてくださったことには、感謝である。

また、これが研究の世界だ、とも思った。私は本職も研究者ではあるが、「白衣を着てバリバリ実験して、世界のライバル研究者たちより一瞬でも早く科学誌に載せる、特許を取る」的な「典型的」研究はしていない。私がやっているのは、世の中の現象を自分流に記述する類いの、理系なのか文系なのかよくわからない研究だ。白衣を着たことすらない。だから「最遅」のような理論と数値で明確に優劣が決するような研究は、「ああ、これが研究の競争ってやつか」と思えて新鮮でもあった。確かエジソンの電球とかベルの電話とかは、ほんの少し発明が遅れただけで涙を飲んだ研究者がいたとか。厳密な科学の世界、大変なものですネエ…と思う。


●ジャンルをつくる

「2兆年」をリリースしたそーさんといえば、言わずと知れたマリオメーカー学会のエースである。過去の計算器研究の美しさには畏敬の念を抱いていたが、最遅でもすごかった。

ふと15年ほど前を思い出す。私は詰将棋創作をやっていたが、今回と同じように、まったく格の違う友人が現われた。次々と傑作を生み出し、ほとんど看寿賞かというところまでいった。私は彼との出会いによって限界を知り、自然と詰将棋から離れた。私も自分が詰将棋で一番になれるとは全く思っていなかったのだが、才能の違いを感じさせる人間が身近に現われると、やはり思うところがある。

今回も、私が2兆年という数字を塗り替えることはないだろう。それがわかるくらいにきれいな完敗だったのだ。

ただ、私が何もなさなかったかというと、いや、そうでもない。少なくとも「最遅」なる分野を立ち上げたのは私である。暫く止まっていたマリオメーカー学会に新風を吹き込んだようだ。そして重要なのが、そーさんのようなすごい研究者が乗っかってきてくれたことだ。

純粋サイエンスの数字勝負になると、デキる人にはかなわない。しかし何らかの構想を立て、ストーリーを実装してみることになると、純粋な頭のキレ以外の部分で勝負できる。数字そのものではなく、その数字争いのフィールドをつくること。拙いコースとつまらないボケを重ねながら、どうにかして、そのような場づくりはできたと思う。

実はマリオメーカーは、詰将棋と較べるとそういった企画が格段にやりやすい。「全自動」「演奏」「スピラン」「謎解き」「1-1再現」など、誰が創始者かはわからないもののマリオメーカーではさまざまな「ジャンル」が生まれ、多くの追従者を産んできた(おそらく「改造マリオ」時代に始まったものも多いと思う)。「マリオメーカー学会」や「計算器」、そして「最遅」もその一端である。詰将棋はルールが厳格で、かつ既に長い歴史を経てきているために、新しいジャンルの創設はなかなかに困難だ。それに較べてマリオメーカーは創作の自由度が格段に高く、まだまだポテンシャルを秘めている。

創作の一分野として見た場合、学術研究の世界もなかなか自由度が高い。厳密科学には実証性や再現性が要求されるものの、探求活動自体は根本的には人間の思考に依って立つものなので、視点や概念構成は本来自由なはずだ。新しいものの見方、現象の捉え方をし、その妥当性や重要性が認識された場合、新たなジャンルが成立する。アカデミズム特有のつまらない慣習や分野間の溝などはあるが、逆にそれらが覆い隠している部分にポテンシャルがあるとも言える。

(創作分野と、創造性やジャンル確立との関係は、興味深いので改めてまた書こうと思う)


コメント

つめきすと (著者)
No.2 (2017/04/27 21:26)
>>1 ゆぶ様
早速のコメント、しかも身に余る光栄なお言葉、ありがとうございます!
動画についたコメントから、毎回楽しみにしてくださっている方がいるようで嬉しかったのですが、こうやってゴチャゴチャ書いたものにも反応いただいて、さらに励みになります。

今後は随分地味~な方向になるかと思いますが(笑)、書いたりつくったりしていきますので、よろしくです。
tukasama2010
No.3 (2017/04/29 10:03)
遅くなりましたが、少し感じたことを。
個人的には2兆年の超すっきりした感じも好きですが380万年のごちゃっとしたまさに詰め込まれてるって感じのする一画面のほうが好みでした。
あと、自分も将棋をやるので(級位者ですが…)詰将棋の話としても楽しませていただきました。
今後もいろいろ書いたり作ったりしてくださるのを楽しみにしています。
あと、もちろんそーさんに許可を得てのこのになると思いますがつめきすとさんが羽メットコンベアーを使って最遅に挑戦したらどうなるのかも興味あります。

とりとめのない文章で申し訳ございません。
これからものんびり楽しくやっていただければと思います。
つめきすと (著者)
No.4 (2017/04/29 21:14)
>>3 tukasama2010様
コメントありがとうございます!
まあ380万年も、本将棋でいうと200手超えたぐらいのごちゃごちゃ感があって、それはそれでよかったのかもですね。そこに谷川流の光速の寄せでスパッと斬られたような感じです。笑

個人的にはやはりオリジナルのギミックでいきたいなあと思うのですが、まあほんと偶然見つかるものだと思うので、その時を気長に待ちます。
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