小さな頃「星の王子様」がバイブルだったからか、僕は立場や肩書きなど、いらない情報に左右されることなく、人やモノの本質を観る癖がついていた。
そういう意味でXはハードロックバンドやメタルバンドではなく、人間の魅力で人を惹きつける魂のバンドだし、YOSHIKIは殺気を隠そうともしない命懸けの生き方をしている赤ちゃんのようにピュアな人間だった。
そのYOSHIKIの音楽的なセンスと素養を、インディーズアルバムのレコーディング見学で強く感じとった僕は、また新たなYOSHIKI像が自分の中に生まれ始めていることを意識した。
おまけにYOSHIKIのその高い音楽性は、いま僕がXのプロデュースを手がけるために最も重要視している、Xの音楽性そのものなのだ。
その音楽性が、そのまま僕が思い描く未来のXの鍵を握っている。
鍵さえあれば・・・何とかなるはずだ。
僕は直感でそう思っていた。
その根拠は、メンバーの持つ凄まじいエネルギーにあった。
会社に戻るため地下鉄に乗った僕は、早速ポータブルプレイヤーにテープを入れて、もらった音源を聴いてみることにした。
ヘッドホンに、やや高音がキツめのサウンドが鳴り響き始めた。
「・・・?」
僕は少し驚いた。
今までライブで聴いてきた、スピードが速い爆音のサウンドがクリアに聴こえた途端、全く別のジャンルに聴こえ始めたのだ。
(かっこいい・・・とにかくかっこいい・・・)
鳴っている楽器の音は間違いなくメタル系ロックバンドのそれだ。
にもかかわらず、そういったジャンルの音楽に特有の、心が下に抑えつけられるような圧迫感がない。
にもかかわらず、そういったジャンルの音楽に特有の、心が下に抑えつけられるような圧迫感がない。
むしろ、心をどんどん前に引っ張っていってくれる。
(何故だろう・・・? 何が他のメタルバンドと違うのだろう・・・?)
理由が分からないまま、しかもどんどん心が感動に向かって引っ張られていくのを感じながら聴いていると、突然リズムがバラードリズムに変化して、心を濡らすとても美しい和音に包まれた。
(えっ・・・? これは・・・クラシック音楽の世界じゃないか!)
ビートルズやスティービーワンダーから始まり、アース・ウィンド・アンド・ファイアーやビリージョエルなど、名曲を生む海外アーティストに夢中になっても、僕の心の底には常に音楽の心を開いてくれたクラシック音楽があった。
僕の好きな名曲は、僕にとって皆、大好きなバッハやベートーベン、チャイコフスキーやショパンとどこか繋がっていた。
ライブで聴いていたあの爆音からは想像がつかなかった、Xの音楽とクラシック音楽の共通点。
その驚きと、そこから生まれる瑞々しい感動が僕を襲った。
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