【 ART OF LIFE ⑪ 】

 
 二人でスタジオに篭(こも)ってデモテープを創る、というやり方は、このART OF LIFEが初めてだった。

 Xはバンドなのだから新しく生まれた曲をレコーディングするのにあたり、まずはバンドメンバーで音を出して演奏し、それを基にアレンジを練り上げていく・・・そんな段取りでレコーディングへ向かうのは当然のことだ。

 でも「ART OF LIFE」は違った。

 他のメンバーがその作品をほぼ聴いたことのないまま、僕たち二人はスタジオに籠った。




 無理もなかった。

 30分に及ぶ大作は当時まだYOSHIKIの心の中だけにあって、唯一、音として聴けるのは最初に生まれたサビの部分をYOSHIKI自身がピアノで弾くときだけ。

 それ以外の、複雑に絡み合い、息つく暇もなく展開し最後まで辿り着くはずのとてつもない、そして壮大な作品の全貌は、YOSHIKIにしか分らない。

 その心の中の音楽を、音として聴ける状態にするには、デモ音源を制作するしかない。

 YOSHIKIと僕がデモ音源を形にすべく、小さなスタジオで今後の段取りを話し合った時、僕たち二人の目の前にあったのは、何冊ものノート。

 ページをめくると、音符が並んでいる。

 そう、それは手書きの譜面をコピーして、ノートに貼付けたものだった。