【 ART OF LIFE ⑥ 】
13.Gtr Solo (5:59 〜)
暴れるDrumsプレイからバトンを渡されるように、HIDEによるギターソロがスタートする。
先週書いた通り、「ART OF LIFE」のギターフレーズはYOSHIKIの心の中から生まれるギタリスト泣かせのメロディーが満載だ。
その呪縛から放たれたかのように、このギターソロでは圧倒的にHIDEらしいプレイが炸裂する。
ギターソロがスタートする寸前、YOSHIKIのDrumsは暴れ放題。
でも、そのかわり、リズムは決して流れているわけではない。
リズム自体が暴れて主張しているから、流れるはずもないのだ。
だから、そこから一転して流れるような速いリズムになった瞬間、HIDEが「待ってました」と言わんばかりにYOSHIKIの速いリズムに乗ってHIDEらしさ満載のギターメロディーを炸裂させるのは本当に素晴らしいし、YOSHIKIとHIDE二人の相性や信頼関係をそのまま見ているようだ。
聴いていて、心から幸せになる。
そもそも、ギターソロのメロディーが始まるところがたまらない。
まだギターソロセクションの前、Amセクションの終わり。(5:57 〜)
YOSHIKIがYOSHIKIなりの世界で暴れながら世界を展開しているところに、突っ込んでいくように先行してギターのSE的な激しい音で割り込んでいく。ギターソロのメロディー自体もセクションが始まるのを待たずに、1小節早く始まってしまう。
これは素顔の二人を、いつも目の前で見ていた僕が断言できることなのだけれど、そのままYOSHIKIとHIDEの関係が音になっている。
そう。
YOSHIKIを深く理解し、愛しているからこそ、静かな表情のまま誰よりも強く、YOSHIKIに突っ込むことができるHIDE・・・。
YOSHIKI本人の知らないところで深くYOSHIKIを気遣い、心配し、そして人生をすべて賭けるほど信頼し、その存在を心から誇りに思うHIDE・・・。
だからこそ、不敵な微笑みを浮かべて自分の塊の世界を勝手に炸裂させるHIDE・・・。
詳しいことはまたいずれ書くが、このギターソロのように、メンバー間の人間性やそのあり方までが音に刻まれているところが、X JAPANの音楽が圧倒的にオリジナルで、他のアーティストを寄せつけない程エネルギーに満ちている理由なのだ。
HIDEが大切にしていたアーティスト・表現者としての姿勢のひとつが、刃物(ブレード)のような感覚だ。
その感覚を、HIDEは何度も、表情豊かに説明してくれた。
「何かさあ、こう、刃物のこの一番切れ味の鋭いところのさ、縁(へり)ね、この感じ。ちょっと動かしたら切れる、その寸前、すぐそばの感じ。わかるでしょ?これが大切。とにかく、これを表現したいからさ・・・」
よほどHIDEにとって大切な感覚だったのだろう、僕はこの会話を何度もHIDEと交わした。
確かに、このギターソロもその「刃物の縁のような感覚」に満ちている。
そして、ピアノにはない、ギターという楽器の大きな特性が、このソロの表情を豊かにしている。
それは、音程をシームレスに変化させることができる、という特性だ。
ピアノには「ド」と「レ」の間には半音の「ド♯」しか存在しないが、ギターはチョーキング(弦をフレットに対して上下に引っ張ることで音程を変化させる奏法)によって、「ド」と「レ」の間のすべての音程を無段階で鳴らすことができる。
この奏法によって、ギターは曲線のように滑らかな音程の変化を表現することができる。
その曲線の美学のようなものが、HIDEのギタープレイには溢れている。
しかもその曲線は、「刃物の縁」のように危険な香りをともなう、非常に鋭いものだ。
また、8ビートや16ビートで刻む細かいフレーズのニュアンスやピッキングハーモニクス(※)による音の鳴りなどにも、HIDEがこだわる「刃物の縁」のニュアンスは生きている。
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