〜 今回 取り上げる曲 「VANISHING LOVE」〜
(…そして、キーがちょうど転調する狭間で、そのどちらともつかない瞬間に、どちらのキーにとっても、それぞれ別なニュアンスでドラマティックに感情を揺さぶられるコード[ E ] が聴いている人に襲いかかるわけだ。
前回書いたように、これらの絶妙な流れを、YOSHIKIは「考えて、ではなく、本能的に、心の中から生み出している」のだ。…)
前回に引き続き、僕が1988年に初めて「Vanishing Vision」を聴いた時に感じたこと、当時音を聴いたことで見えてきた重要なポイントなどをお伝えしていきたいと思う。
また前回、結果的に「DEAR LOSER」の音楽的魅力を解説した形になったことが好評で、僕にとっても有意義だったため、しばらくの間、記事の中で「Vanishing Vision」をはじめ、Xの作品を取り上げて、その魅力を解説していくスタイルでこの連載を展開していきたいと思う。
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プロのミュージシャンだった大学生の頃から、僕はハードロック、ヘヴィメタルというジャンルにあまり興味がなかった。
でも、たまたま当時のメタルシーンで評価されていたANTHEMというバンドのメンバーがミュージシャン時代の友人だったことから、スラッシュメタルの勢いが強くなり始めた当時のメタルナンバーを、彼らのオリジナル曲含め、聴かせてもらう機会があった。
それらを聴いてみると、テンポが速い、ギターのリフやサウンドがかっこいい、などの好印象の一方で、ハードロック・ヘヴィメタルが苦手な僕には、やはりどうも音楽的に物足りない印象が強く、残念ながらそのジャンルが好きな人ならではのマニアックな音楽、というイメージが翻ることはなかった。
しかし、Xはまぎれもなく音楽的にはヘヴィメタルのバンドだった。
それまでにライブも何度も観ていたから、その事実は当然分っていたわけで、では何故、Xの基本的な音楽性が自分の最も苦手とするヘヴィメタルというジャンルのバンドであることを、当時の僕は気にしていなかったのか。
結論を言えば、ジャンルなど気にする余地もないほど、その存在に惹かれていた、ということになる。
しかしいずれ自分が、プロのサウンドプロデューサーとしてXのオリジナル作品やアルバムを手がけることになれば、ただバンドとしての存在に惹かれているだけでは、お話にならない、仕事にもならない。
結局、僕はどこかのタイミングで、ヘヴィメタルのバンドであるXの音楽性と、きちんと向かい合う必要があったのだった。
そんな中、僕は3月にメンバーから「Vanishing Vision」の音源をもらい、初めてXの音楽をきちんと聴くことになった。
今でもはっきり覚えている。
僕は営団地下鉄・有楽町線の車内、ヘッドフォンで「Vanishing Vision」を聴いた。
前回お伝えした「DEAR LOSER」の後、「VANISHING LOVE」が流れ始めた。
聴いた瞬間、Xの音楽が、決してスラッシュメタルやヘヴィメタルというジャンルでは収まりきらないだろう、と確信した。
いや、言い方を変えれば、僕にはこの曲がスラッシュメタルに聞こえなかったのだ。
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