ヒデちゃん、今年も手紙を書くね。

 たくさんのファンやスタッフ、ヒデちゃんと関わったたくさんの人たちに、夢と幸せをありがとう。

 勇気を出して未来へ進む力をありがとう。

 
 
 先週ね、「ROCKET DIVE」について考えてた。
 
 ちょうど自分のユニットの作品を創る作業しててね、タイトルっていったい何なんだろう・・・って思ってたら、浮かんだの。
 
 改めて、すごいタイトルだな、って。
 
 ヒデちゃんってそういうセンス凄いから、いつも感心してた。
 
 最初はやっぱり「BLUE BLOOD」の準備をしてた時に聞いた「CELEBRATION」だったかな。
 
 聞いたり見たりした瞬間、その言葉から漂う雰囲気とかイメージが鮮明に浮かぶから、つい前から知っていた気がしちゃうけど、実は初めて出会う作品だ、っていうやつね。
 
 そういうのって、ディズニーとかスピルバーグの映画みたいに、たくさんの人に伝わるでしょ。
 
 「Miscast」とか「Joker」もそうだけど、やっぱりそういうヒデちゃんのセンス、「hide」の活動が始まってから炸裂していった気がする。
 
 「TELL ME」「MISERY」「Beauty & Stupid」「Hi-Ho」「ピンク スパイダー」「ever free」「HURRY GO ROUND」・・・
 
 みんな、わかるわかる・・・って感じて、音がそのまんまな感じで、でも聴き込んでみるとめっちゃ深いよね。
 
 
 
 「BLUE BLOOD」の後から増えていったんだけど、僕の好きなヒデちゃんの様子っていうのがあったんだよね、ヒデちゃん気づいてなかったと思うけど。

 僕が話しかけるとね、僕を見ないで煙草吸いながらひとこと答えたまま、黙って何か考えてるの。
 
 普段なら、すぐに僕に質問を返したり身体動かして他のこと始めたりしたりするんだけど、そういう時は動かない。
 
 僕もその場にとどまって何も話さないで待ってる。
 
 しばらくすると、音か言葉かイメージについて話し始めてくれる。
 
 まあ、たまに何も言わないまま終わってしまうこともあったけど。
 
 「作品」のことなんだよね、そういう時って。
 
 YOSHIKIやTAIJIと違って、僕に相談はしなかったでしょ、ヒデちゃんは。
 
 でも会話になると楽しかった。
 
 感覚だけの会話で、僕も責任感持って話すわけじゃなかった。
 
 シュールだったよね。
 
 形になった作品に接するたびに、僕は心からヒデちゃんのことを尊敬してしまうんだけど、あの、静かに黙ってひとり、イメージを膨らませている時のヒデちゃんの頭と心の中にあったものが、いつも素晴らしい作品になっていたんだね。
 
 だから僕は好きだった。
 
 
 
 ヒデちゃんの家へ遊びに行って、お互いの制作途中の作品を聴かせあった時、僕はその少し前に、千葉マリンのステージを観せてもらった時の衝撃を話したんだけど、ヒデちゃんは少し微笑んで「あ、そう」のひとことを呟いただけだった。
 
 思えばその2年前、ソロツアーの打ち上げで、僕に打ち上げの間ずっと自分の隣にいるよう命令するから、「わかった」って言いながらステージを観た感動を伝えたのに、返ってきたのは微笑みだけだった。
 
 そういうところがヒデちゃんらしいなって思う。
 
 30年前、僕に作品の相談をしなかったのも同じで、きっとヒデちゃんの中でいつも作品は揺るぎなく完成しているんだと思う。
 
 きっと、大切なのは一番最初のイメージで、それがあればちゃんと作品になったんだろうな、って。
 
 そうやって生まれた揺るぎない作品が今も、もの凄くたくさんの人たちに夢と力と感動を与えているんだよね、素晴らしいよね。
 
 
 
 僕は、ヒデちゃんに影響を受けた、優れたアーティストやクリエイターがたくさんいることを知ってるし、それを心から誇りに思ってる。
 
 そういうところが、日本じゃなくて海外のアーティストみたい、って思うこともある。
 
 hideっていうアーティストが、音楽始めた頃のヒデちゃんが憧れたアーティスト達みたいになってるのが、凄く嬉しい。
 
 今は音楽家になって作品を生み続けてる僕も、ちゃんとヒデちゃんから大切なものをもらっている。
 
 それはね、作品のことを考えてた時のヒデちゃんの様子。
 
 30年前のあの、誰も知らない静かで豊かな時間が、作品を生む時の僕に勇気を与えてくれているの。
 
 ありがとうね、ヒデちゃん。
 
 
 
 数え切れないほどたくさんのファンやクリエイターに、ヒデちゃんの作品と生きざまが未来を見せてくれる。
 
 それはとても尊いことだと思う。
 
 ピュアで清らかで澄んでいて

 でも強くてアグレッシヴで危なくて
 
 かっこよくて明るくて大きくて

 そしてとびきり優しいヒデちゃんの存在。
 
 
 
 ありがとう。
 
 本当にありがとう。
 
 みんな、いつもヒデちゃんのことを想っています。
 
 
 

2022年5月2日

津田直士


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(株)津田直士事務所スタッフからお知らせ

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・『伝説のライナーノーツ』
 「BLUE BLOOD」や「Jealousy」に書いた文章とその背景を描いた新刊
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☆ 2017年夏、津田直士が寄稿した記事
 イミダス時事オピニオン「X JAPANが世界で評価される理由」

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【津田直士プロフィール】音楽プロデューサー/作曲家
Sony Music在籍時に「BLUE BLOOD」「Jealousy」「ART OF LIFE」
のCo ProducerとしてX JAPAN(当時はX)をプロデュース
インディーズ時代から東京ドーム公演までをメンバーと共に駆け抜けた記憶
の一部は、映画『WE ARE X』の中、インタビューという形で語られている。
また、自署「すべての始まり」にはその記憶のすべてが描かれている。