TAIJI、久しぶりだな。
色々思うところがあって手紙を送るよ。
俺さ、先週、深爪から指を痛めちゃってさ。
ちょうどピアノをアレンジしたりレコーディングしたり、っていう日々だったから、すべて止まってしまって、困った。
それがまあ、痛くてね。
間違えてちょっと触ったりすると激痛だしね、何もしなくても、虫歯みたいに指がシクシクと痛くてさ、参ったよ。
弾きたいのに弾けない悔しさと、爪が伸びるまでただ待つだけ、っていうのが辛くてね・・・。
それでこの前、痛みをこらえながら道を歩いていた時にね、突然思い出したんだよ。
TAIJIがよく、指が痛いんだよ…と呟きながらベースの練習をしていたことをね。
そうだ、TAIJIは、よくケガしてたなぁ・・・って。
たとえケガの原因が、正義心爆発のケンカや悔しくて何かを殴った結果だったとしても、あまりに辛そうだから、見ていて心が痛んでいた。
それにTAIJIは右手の中指が短かったよね。
そんなハンディも含めて思い出したあの頃のTAIJIにさ、今の自分の痛みが重なったんだよね。
でも、そう考えるとTAIJIは強かったな。
どんなに指が痛くても、ステージに上がったら必ず、最高にかっこいいプレイをしてたからね。
そういうTAIJI、俺はミュージシャンとして尊敬するよ。
ああ、そうだ。ミュージシャンといえば、この前俺さ、INAちゃんから聞かされてすごく驚いたよ。
TAIJIがINAちゃんに、俺のことを世界一キーボードが上手いんだ、って言ってた話・・・。
俺、TAIJIからは、聞いたことなかったよ。
だから突然聞かされてさ、何だか驚いて、嬉しくて。
泣いちゃったよ。
上手いかどうかじゃなくてね、TAIJIがそんな風に俺のことを思ってたんだ、って。
TAIJIこそ、日本が誇るミュージシャンの中のミュージシャンだよ。
そんなTAIJIになあ・・・。
でも、懐かしいよな。あの頃の俺とTAIJIは、いつもミュージシャン同士として話をしてたよな。
自分達の音楽だけじゃなく、音の魅力、演奏の真髄、そして偉大なアーティストの作品・・・。
TAIJI、俺、いつでも思い出せるんだよ、TAIJIが話しかけてくる時の表情や声を。
大事な音楽の話をする時さ、ほら、おでこに少しだけシワを寄せて、何かを探すような瞳が印象的な、深い表情で。
低くて柔らかい声で、「ねえ・・・津田さんさ・・・」って話しかけてくる。
よく質問してきたよね。
素晴らしい音を響かせる方法、音楽理論、今取りかかっているオリジナル曲のアレンジについて・・・。
たまにTAIJIが、誰よりも詳しいはずの、「Xのベースプレイ」について、俺に尋ねることもあったよね。
心の中で一瞬(えっ? それ俺に聞く? TAIJIが一番知ってるんじゃないの・・・?)
と呟きながらも、実際には素知らぬ顔で相談にのってみる。
そうすると、実に深い相談でさ。
その度に、俺はTAIJIのミュージシャンとしての姿勢に感動してたんだよ。
どんなにうまくいっていても、どんなに人気があっても、常に「本当にこのままで正しいのか?」「まだまだ新しいXはあるんじゃないか?」そう自分へ問いかける姿勢に。
現状に甘んじることなく、常にミュージシャンとしての高みを目指すその姿勢に・・・。
TAIJI、日産スタジアムの時、TOSHIと一緒に笑いながら電話をかけてきてくれて、ステージ真ん前の席を用意して招待してくれて、ありがとう。
俺、すごく嬉しかった。
TAIJIが登場した瞬間、全く新しい「今のX」に、懐かしい「あの頃のX」がダブって見えて、涙でステージが見えなくなって。大変だった。
手のひらで涙を拭いながら、必死で観たよ。
TAIJIが指の痛みを堪えながら、東京ドームや、その先にある世界進出を目指していた、あの頃の夢。
その夢を、今はもう叶えられ始めていて、4月なんか、コーチェラだよ、びっくりだよな。
生では観られなかったけど、TAIJIも参加してる様子が誇らしくて。
動画を観て、やっぱり泣いたよ。
本当にXは7人なんだな、って。
なあ、TAIJI。
音楽って最高だよな。
時を超えるもんな。
TAIJI。
音楽が時を超えるんだから、いつまでもお前のことを想っていてもいいよな。
あの頃、一緒に創って刻んだ音を聴きながら、
いつまでもお前のことを想い出して、いいよな。
TAIJI、懐かしいよ。
また会おうな。
音楽の話
またしような。
TAIJIへ
2018年7月17日
津田直士
(株)津田直士事務所 スタッフからお知らせ
2017年夏、津田直士が寄稿した記事: イミダス 時事オピニオン「X JAPANが世界で評価される理由」
☆ 津田直士ニコニコチャンネル http://ch.nicovideo.jp/tsudanaoshi
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【 津田直士プロフィール 】音楽プロデューサー/作曲家
Sony Music在籍時に「BLUE BLOOD」「Jealousy」「ART OF LIFE」
のCo ProducerとしてX JAPAN(当時はX)をプロデュース
インディーズ時代から東京ドーム公演までをメンバーと共に駆け抜けた記憶
の一部は、映画『WE ARE X』の中、インタビューという形で語られている。
また、自署「すべての始まり」にはその記憶のすべてが描かれている。
「すべての始まり」特設サイト
https://www.innocenteyes.tokyo/
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ありがとうございました