音楽プロデューサー 津田直士の 「人生は映画 主人公はあなた」

【新連載】 津田直士エッセイ 『想いのすべて』 010 YOSHIKI CLASSICAL SPECIALを観て・・・②

2016/12/18 19:42 投稿

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Visual Japan Summitに続き、今回 YOSHIKI CLASSICAL SPECIALを観て、僕はある想いをさらに強くした。

その想いとは、エンターテイメントの世界の中ですら突出して見える、YOSHIKIの大きく豊かな人間性だ。

音楽、つまり芸術を生みながら、多くのファンを持つ人気者という期待に応えながら、YOSHIKIが日々何を想い、どこへ向かっているのか、自分とその周りのあらゆる人たちをどう観て、その人たちと、どう接しているのか。

それは、YOSHIKIのパフォーマンスやインタビュー、活動の方針や打ち出す新たな予定などから感じ取ることができる。

例えば、それらの中で特に分かりやすいパフォーマンスの場合なら、ファンにも、あるいは初めてYOSHIKIのパフォーマンスを観る人にも、その人間性はきちんと伝わるようだ。

実際、これまでYOSHIKIの生演奏に触れたことのなかった僕の知人は、コンサートを観たあと、「YOSHIKIさんが神さまみたいに見えた」という感想を話してくれた。

Visual Japan Summitの場合も、ファンだけでなく多くの若いバンドメンバー達にとって、その姿や存在が神さまのようだった、という感想は多く見受けられた。

そして僕の場合は、国内のテレビ番組に出演している姿を観る時、最もその人間性が際立って見えてしまう。
YOSHIKI以外のあらゆるアーティストやタレントとの違いが浮き彫りになるからだ。



その、あたかも神さまのように見える、YOSHIKIが突出して持つ大きく豊かな独特の人間性が、一体どこから生まれたのか・・・。

国際フォーラム公演を観ながら、僕は改めてひたすら考え続けた。

なぜなら、奏でられる美しい音楽と、気さくにありのままを見せてくれるMC、そして演奏と共に心を打つ映像の数々が、今のYOSHIKIの人間性がそのまま投影されていると感じたからだ。

涙を堪えながら、YOSHIKIの半生を音楽と共に感じているうちに、決して色褪せない悲しみや苦しみを抱えながら、YOSHIKIがどのようにして輝く未来に辿り着くことができたのか、その理由をどうしても知りたくなったのだ。

僕は自分が知っているYOSHIKIの性格や生きかた、彼らしい判断のしかたやこだわりなどをひたすら思い出し、そこから想像を巡らせ、そしてYOSHIKIの半生に起きた事実について考え、さらにはYOSHIKIと2人だけで会話した記憶を丹念に思い出し、考え続けた。





まず、YOSHIKIという人間の魅力の基本が、尽きない音楽への情熱にあることはわかっていた。

ただ、あの深い悲しみや苦しみをもとに、今のYOSHIKIのような豊かで大きな人間性を得るのに、音楽以外の何かが大きく作用しているのは間違いないと僕は考えていた。

それは一体何なのか・・・。

最近まで僕は、そのことについて『悲しみや苦しみを乗り越えたYOSHIKIは・・・』というごく当たり前の表現をしてきた。

けれど、そもそも何をどう乗り越えたのかが明確ではなく、その表現があまりにも曖昧であることが気になっていた。

そんな中、今回の公演でYOSHIKIがMCで語った『悲しみや苦しみは決して色褪せない』という言葉に、僕は強く心を動かされた。

そうだ、決して色褪せないんだ・・・・。

その言葉の意味と重さを考えているうちに、僕は以前、いつも見ていたYOSHIKIの姿に思い当たった。

それはとても重要なことに直面したとき、いつも必ず一人になっていたYOSHIKIの姿だった。

何日も何日も一人で考え続け、すぐに答えが見つからなくても、答えを求め、ひたすら一人になって自分に問いかけ続けていた、あのYOSHIKIの姿・・・。

そうか・・・。
他の人にはない、YOSHIKIの突出した人間性を作っているものは、他の人にはない、YOSHIKIの突出した特徴から生まれているはずだ!

だとすれば・・・。

僕はひとつの想いに辿り着いた。


『ひたすら自分と向き合うこと』


これに違いない・・・。





人は誰でも自問自答する。

苦しみや悲しみから逃れたくて、自分に問いかけ、答えを探そうとする。

けれど、それには限界がある。

続けることに疲れ、やがて自分の周りにある何か他のものに答えを求め始める。

それはとても自然なことだ。

そうやって自問自答する人を救うために、周りの友だちや恋人、そして家族は存在しているのだ。

けれど、僕の知っているYOSHIKIは、どんな時も決して自問自答をやめることはなかった。

問いかけをやめて、ごまかしてしまったり、うやむやにしてしまったり、といったことをYOSHIKIはやらない。

人と比べて、飛び抜けて強いYOSHIKIの精神力は、『決して諦めないこと、決してやめないこと』にある。

だからきっと、YOSHIKIは自分と向き合い、自分の心に問いかけ続けることをやめなかったのだろう。それも、尋常ではないレベルで・・・。


小さな頃の辛い出来事から自分と向き合うことを始め、常に自分の心に問いかけ続け、決してそこから逃げることなく、生きてきた。

やがてその問いかけを作品にすることを始め、ひたすら音楽に没頭した。

その音楽が周りに認められ、たくさんのファンに支えられる大きな存在になった時、再び悲劇は起きた。

新たな悲しみと苦しみに、YOSHIKIはまた深く自問自答を続けた。

それから約20年・・・。

きっとYOSHIKIは、20年という長い時の流れの中で、ひたすら自問自答を続けてきたのだろう。

だから・・・ 悲しみや苦しみは色褪せない。

けれど、悲しみや苦しみが常にそばにあることで、YOSHIKIは普通の人間にはない、特別な人間性を手にしていたのだろう。

そして、悲しみや苦しみから生まれたからこそ、YOSHIKIのその特別な人間性には、力強い明るさと笑顔が伴っているのだろう。



『ひたすら自分と向き合うこと』



人は誰も、いつかはこの世から去る時が来る。

その瞬間、自分という意識と共に、何もかもが消え去ってしまう。

自分という意識の大切さ。

自分から逃げずに、きちんと向き合いながら、時には自分と闘い、常に志高く生きていくことの大切さ。

そこから手にすることのできる、周りの人への感謝、そして深い愛。



YOSHIKIの大きく豊かな独特の人間性は、一体どこから生まれたのか。

その理由を考えたことで、YOSHIKIが、生きていく上で本当に大切なことを、たくさんの人たちに背中で教えてくれていることに僕は気づいた。

それはとても幸せなことだった。

(つづく)


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