ニコ生「核のゴミはどこへ行く? 〜津田大介オンカロ視察報告〜」放送後記
- 登録タグはありません
6月16日にニコニコ生放送の公式番組「核のゴミはどこへ行く? 〜津田大介オンカロ視察報告〜」に出演しました。司会は、5月に「オンカロ」と呼ばれるフィンランドの高レベル放射性廃棄物の最終処分場を取材した津田大介。ゲストは東北大学大学院文学研究科教授で、日本の放射性廃棄物の処分を検討する日本学術会議のメンバーでもある長谷川公一さんと、 『放射性廃棄物の憂鬱』の著者でもあり、動力炉・核燃料開発事業団(現・ 日本原子力研究開発機構 )元研究員の楠戸伊緒里さんです。
「オンカロ」は世界で初めて決定した、高レベル放射性廃棄物の最終処分場の最終処分場で、2023年の操業開始を目指し、現在建設が進められています。一方日本では、最終処分場の候補地は未定で、岐阜の瑞浪 と北海道の 幌延の2カ所の施設で地層処分の研究が進められています。
番組では、僕が撮影・編集した2本の映像を見ながら専門家の方々と議論しました。1本目は「オンカロ」の近郊、約60メートルの深さにある中・低レベル放射性廃棄物の最終処分場。フィンランドは19億年安定した花崗岩で、水も少ない岩盤が映像からも見て取れます。2本目は昨年9月に僕が単独で取材した瑞浪超深地層研究所の約300メートルの深さにある研究アクセス坑道です。こちらは7000万年前の花崗岩でフィンランドに比べれば新しく、多量の水が排水溝に流こむ様子が印象的でした。フィンランドでは専門の広報担当が付くのに対し、瑞浪は広報予算がないため研究員が案内も担当しているのが対照的でした。
フィンランドでは1978年から使用済み燃料の処分について調査選定プロセスを着実に進めてきました。その背景には国や電力会社の徹底した情報公開による信頼の構築と、原発賛成・反対にかかわらず、核のゴミには現世代の責任をもって対処するという、国民の姿勢が伺えます。日本の脱原発派は国内に最終処分場がないことについて「トイレなきマンション」と批判するばかりで、すでに発生した使用済み燃料の処理について真剣に議論してきませんでした。さらに2011年の東京電力福島第一原発事故により原子力の信頼は失墜し、最終処分場の建設のハードルは非常に高いものになりました。
そこで重要なのが、最終処分場の調査・選定にかかる約50年の期間、高レベル放射性廃棄物を地上で暫定保管するという日本学術会議の提言です 。これを受け、政府は国主導で科学的に適した候補地を選定する新しい方針を掲げましたが、日本学術会議の提言に真摯に向き合っているとは言い難い状況です。
今回の番組をやってもっとも良かったと思ったことが、後半のユーザーアンケートで「核の処理施設はどこなら許容できる?」という問いに、4割を超えるユーザーが「安全と言うなら家の隣でも良い」と回答したことです。この問題に関心をもつ視聴者層というバイアスがあるにしても、2時間の番組のなかでこの結果が得られたことには希望があるのではないかと感じました。
核のゴミの問題は原発賛成・反対にかかわらず、解決しなければならない問題です。この番組が問題の解決のため理解を深めるきっかけになれば幸いです。まだ見ていない方はぜひタイムシフトでご覧いただければと思います。
「核のゴミはどこへ行く? 〜津田大介オンカロ視察報告〜」
■放送日時:6月16日(木)21時〜
■出演者:
津田大介(ジャーナリスト/メディア・アクティビスト)
小嶋裕一(「ポリタス」記者/映画作家)
長谷川公一(東北大学大学院文学研究科教授)
楠戸伊緒里(動力炉・核燃料開発事業団【現・日本原子力研究開発機構】 元研究員)