2001年にT.ローズが、2002年にA.カブレラがその記録に並び、
そして昨日、東京ヤクルトスワローズのW.バレンティンが新記録となる56本塁打を放ち、
49年振りに記録を更新しました。
この記事では、55本塁打到達者の間で有利不利の要素がどの程度あるのか、またバレンティンという選手はどれほど凄いバッターなのかということを調べていきたいと思います。
違う時代違う環境で違う相手に出した数字を比べることがナンセンスといえばそうなのですが、比べたくなるのもファンの性ということでご勘弁を。
まずは各打者に有利な要素、不利な要素を見ていきましょう。
試合数の違い
シーズンの試合数が増えれば当然打席数が増えるので本塁打を打つチャンスが増えます。これに関しては王・ローズ・カブレラの達成時は140試合制。
そしてバレンティンが達成した今シーズンは144試合制です。
バレンティンだけ4試合多い分、有利だと言えます。
球場の違い
以下の表は1964年,2013年のセ・リーグ球団、2001年,2002年のパ・リーグ球団の本拠地球場の広さをまとめたものです。
やはり昔の球場は狭い所が多く、この数値でもサバを読んでいた可能性があるとのこと。
そしてパ(2001,2002)と比べると、セ(2013)は特に両翼が狭めの球場が多いです。
さらにセ(2013)はフェンスの低い球場も多く、本塁打数を後押ししそうです。
バットの違い
インパクトの際、ボールに直接触れるものはバットだけです。
その点で、バットは打球の飛距離に最も関わる用具だといえます。
かつては圧縮バット(反発力を高めるために木材に樹脂加工を施したバット)も
使用可能でしたが、少なくとも1964年の王は使用していなかったそうです。
野球用具が日々進化していることを考えると、王の頃の用具は今よりも飛距離の出にくい、
あるいは扱いにくいものが多かったのではないでしょうか。
ボール自体の飛びやすさ(反発係数)
今シーズンから統一球の仕様が変更された経緯については、
現在の統一球を「飛ぶボール」と呼ばないで の記事で解説しました。
ここでは各打者の達成年の所属リーグの本塁打率(※)を見て推測してみましょう。
(※)本塁打率=打数÷本塁打数
一本の本塁打を打つのにどれだけの打数を要するかを示す数字。
たとえば本塁打率が「35」の場合、この打者は35打数に1本ホームランを打つ計算になる。
下の表は「1964,2001,2002,2013年の所属リーグ全体の本塁打率」を比較したものです。
この数字を見ると、今年から飛びやすく変わった統一球は、2001,2002年のボールと比べて
ずっと飛ばないものであることがわかります。
そして1964年にもかなり飛ばないボールが使われていたことが伺えます。
当時の球場の狭さも加味すると、今以上に飛ばないボールだったかもしれません。
これらの要素を組み合わせて判断をするのがいいと思います。
もし他の要素があれば是非コメントで教えてくださいね。
今年のバレンティンはどれだけ凄いのか
ここまでは、各選手がどのくらい本塁打の出やすい/出にくい環境に置かれていたのかを
解説してきましたが、ここからはバレンティン自身の凄さを語っていきます。
下は「所属リーグの総本塁打の何%をその選手が放ったか」の表です。
ご覧のように、バレンティンは2013年のセ・リーグで出た本塁打の8.78%を打っています。
これは他の55本塁打到達者と比べても突出した数字です。
日本でのバレンティンはどれだけ凄いのか
現時点でバレンティンの3年連続本塁打王はほぼ確実なものになっていますが、
これは中西太・王貞治・野村克也・デストラーデに続いて5人目の記録。
1年目から連続はバレンティンが初です。
バレンティンの2011,2012年のホームラン数はともに31本と一見少し物足りない本数ですが、この2年というのは基準を下回る反発係数のボールが使われた期間ということを考慮しなければなりません。
以下の表は2011,2012年のセ・リーグ全体と、バレンティンの本塁打率です。
2012年は平均的な打者が一本のホームランを打つのに61.94打席を有するという計算。
先ほど貼った他の年度の本塁打率と比べると、これがどれだけ異常な数値なのか理解できるかと思います。そんな中、バレンティンの本塁打率はダントツ。
2012年は打数が少なかった(規定打席未満)ことでさらに凄い数字になっています。
バレンティンは成長している
バレンティンはメジャー時代の2009年にシーズン最長飛距離のホームランを打っています。
アメリカでも秀でていた長打力が日本で花開いたといえるでしょう。
また、長打力だけでなくコンパクトなバッティングもできるようになりました。
1年目の打率がわずか.228だったのが、2年目は規定未到達ながら.272。
今シーズンはここまでで.338と数字を大幅に伸ばしています。
本塁打率も1年目の15.68、2年目の11.39から3年目はなんと6.86!
実際の打席を見ても、ボールゾーンへ逃げる変化球に手を出すことが少なくなり、それが四球数の増加と三振数の減少にも繋がりました。スイング後に捕手のヘルメットにバットが当たるような大振りも少なくなって、今季55号のようなライト方向への本塁打も見られます。
これから…
今年に限れば史上最強助っ人と呼んでも差し支えない成績を残しているバレンティン。
ただ、今以上に野球ファンの記憶に色濃く残るにはチームの優勝への貢献が必要でしょう。
王・ローズ・カブレラはチームの優勝に貢献し、今もファンの記憶に残り続けています。
スワローズとバレンティンの一ファンとしても、その日が来るのを願って止みません。
追記
2013年の公式戦も終了して成績が確定したので追記。
バレンティンのホームランは僕の願望通り60本に到達して見栄えの良い数字になりましたw
成績とデータを少しだけまとめておきます。
やっぱりすごい。
追記2
https://twitter.com/nhk_shutoken/status/395172215353643008NHK@首都圏@nhk_shutoken
【ニュース】プロ野球のヤクルトが本拠地としている神宮球場のレフト、ライトの両翼までの距離がこれまで公表していたものより3メートル以上短かい、97.5メートルだったことが分かりました。(続く) #nhk
神宮球場の両翼は97.5メートルだったことがわかりました。
見返してみると、表記の通りならフェンスは越えていないだろう打球は数本あります。
しかしこの記事中で書いた通り、ボールの飛距離には、ボール自体の飛びやすさ・バットの質・その他様々な要因が絡みます。球場の広さはそのうちの一要素にしか過ぎません。
また、戦っている選手達は数字ではなく感覚で球場の広さを把握しているはずです。
両翼の公称が違ったら攻め方が変わっていたということは考えにくいと思います。
事実、今季統一球の反発係数変更の通達がないうちから、守備時には昨季(2012年度)よりも後ろに守ると言っていた選手やコーチは何人もいました。
この程度のことではバレンティンの記録の価値は揺らがないのですが、記録に水を差すようなことは避けてもらいたいですね…。
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コメント

2013年の神宮球場の数字はこちらのミスです。ご指摘ありがとうございます。
甲子園の数字はおそらくこれで合っているのではないかと。中堅にはラッキーゾーンはなかったですし。ただ中堅の数字が狭くなっているのは謎です。単純にサバを読んでいたのを実際の数字に合わせたということでしょうかね?
神宮球場については、1964年当時両翼フェンスは2013年現在とそれほど変わらない位置にあり、91m地点にラッキーゾーンがあったと解釈します。
その後1967年にラッキーゾーンなしでもグラウンドが同規模程度になるようスタンドが改修され、2008年に101mに再拡張されたのだと思います。
しかし、すべてWikipediaからの数字・情報なので事実と異なる部分があるかもしれません。
その場合はまたコメントでご指摘ください。
http://ja.wikipedia.org/wiki/阪神甲子園球場
http://ja.wikipedia.org/wiki/明治神宮野球場
http://ja.wikipedia.org/wiki/ラッキーゾーン

なんにせよバレンティンが60本まで打てれば誰も文句は言わないでしょう・・・・言わないよね?
「4試合あれば王はもう10本は打てた」とか言いそうで怖い

敬遠数は王さんが「20」、バレンティンが現時点で「8」ですね。チームが最下位だったのも記録を後押ししました。
しかし打数は王さんが「472(で55本)」に対して、バレンティンが「431(で59本)」なのでやっぱり規格外です。
王さんが偉大な選手なのは疑いようのない事実ですが、根拠もなくバレンティンを低く見る人には僕も憤りを感じます。
個人的にも59本だと(見た目的に)なんだかモヤモヤするので60本に到達して欲しいですねw
あと、1964年当時は甲子園、神宮にラッキーゾーンがあったことも加味したデータにした方がよろしいかと。