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未詳の空論

【歌詞話】森由里子さんの素晴らしい歌詞いろいろ

2019/06/25 23:55 投稿

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  • アイドルマスター
  • 歌詞
アイマス曲の作詞家についてと、その方の歌詞を選んで書くやつです。

今回は森由里子先生についてなのですが、そもそもこの歌詞について書くやつを初めてやった時に取り上げたのが森先生で、森先生自身についてだったり、その歌詞についてもその記事で大体書いています(その記事はこちら)。

なので、今回はそこで紹介できなかった曲から色々取り上げて書いていこうと思います。森先生の歌詞は全部良いので1曲ごとにいくらでも書けるのですが、それだとやはりきりがないので今回は次の曲に絞って書いていきます。

・『永遠の花』
・『はにかみdays』
・『桜の風』

...とはいえ、最初の記事は何分初めて書いた文章のため、読みづらかったり拙かったりするので、ここで改めてざっくりと要約しておきます。ただ言っていることは大体同じなので、前の記事を読んでいただいている方は飛ばしていただいて結構です。



森由里子先生について(ざっくり版)

主な作詞楽曲
『青い鳥』
『眠り姫』
『約束』
『虹色ミラクル』
『Star!!』他

森由里子先生はドラゴンボール『魔訶不思議アドベンチャー!』や中森明菜『TATOO』に始まり、主にアニメやアイドル周りを中心に膨大な作品やアーティストの方々に歌詞を提供されてきた、言わずと知れたベテラン作詞家です。アイマスでもアーケードの段階から現在に至るまで、コンスタントに歌詞を提供されています。

そんな森先生の歌詞の魅力としては、大きく次の3点が挙げられると思います。

・わかりやすい
・美しい
・巧みなモチーフ使い

まず最初の「わかりやすい」について、これは森先生の歌詞は歌詞単体で読んでも意味が通じるほど、まず文章として、詩として成り立っています。歌詞といえば、必ずしも文章として成り立っているものばかりではなく、それが悪いとは全く言いませんが(それで素晴らしい歌詞などゴマンとあります)、とはいえ表現として基本的には「伝わること」が重要でしょう。その点において森先生の歌詞は非常に研ぎ澄まされています。

次の「美しい」という点。森先生の歌詞は、基本的に誰かを傷つけたり不快にしたりといった表現がほとんどないのです。勿論これは作品や歌い手の要請によって多少は出てくる場合もあるでしょうが、アイマス含むそういった影響のない場合、誰かを傷つけたり不快にする表現は全くないと言ってもいいでしょう。そういった優しさに加え、森先生の歌詞は選ぶ言葉の一つ一つがまず美しく、それらが組み合わされ、紛れもない美しい詩になっているのです。

そして最後の「巧みなモチーフ使い」について。森先生の歌詞では、「花」「星」「空」など、様々なモチーフが扱われるのですが、その切り取り方や扱い方で、新しい表現が必ず入ってきます。割と牧歌的なイメージのある「チューリップ」と「小悪魔な女の子」を合わせたり(『Tulip』)、冷たい雪に希望を描いたり(『Snow White』)、そういった新しい表現が一つでもあれば、その時点でそれはいい歌詞と言っていいと思いますが、その意味で、森先生の歌詞は間違いなくどれもいい歌詞と言えるでしょう。

これらの要素はどれも基本的かつ普遍的なため、どんな作品やアーティストに提供されたものでも、森先生ならではの味が失われないまま、その世界観を表現できるという、まさに理想的な作詞家のあり方の一つとも言えるのでしょうか。(要約おわり)



おさらいが終わったところで、早速歌詞の紹介に入ります。

・永遠の花
作詞:森由里子 作曲・編曲:三好啓太
歌:ジェミニ [周防桃子, 豊川風花, 馬場このみ]



『Snow White』に続き、森先生がミリオンに提供した2曲目の楽曲。作曲は『ターンオンタイム!』『Secret!Playful!Drive!』(SideM)を手がけた三好啓太氏。

この曲は「花がモチーフの遠距離恋愛」という、ともすればありがちになってしまうような題材なのですが、だからこそ森先生の技術が光る歌詞になっています。

花をモチーフにするとなると、「実は登場する花の花言葉に意味が仕込まれている」なんていうのが常套手段だと思いますが、この曲では逆に「花の名前を言わず、花言葉を明言してしまう」というやり方をとっています。

花言葉に意味を託すと言っても、バラのような有名なものはともかく、現在の日本でそれをパッと連想できる人間はそれほど多くないと思います。それこそネットで検索するのも容易なのですが、少なからずその瞬間には伝わらないことの方が多いでしょう。また、花言葉まではいかなくとも、必ずしも花とその名前が一致する人ばかりではありません。

それを一気に解決し、誰にでも分かりやすく表現出来るやり方がまさにこの「花の名前を言わず、花言葉を明言してしまう」というやり方なのです。

さらに分かりやすくしたことで、普遍性まで獲得していて、ここで言う「永遠の愛」を花言葉とする花は「桔梗」なのですが、それを知らなくとも、花自体の描写は次のようにしっかりとなされているので、誰でも思い思いの花を連想できるのです(時間を示すことで次の回想への流れもスムーズです)。
昨日あなたに渡された
宵闇の空 うつした
紫の花
また、それ以外の細かい描写もいちいち気が利いていて、例えばこれに続く次の一節。
遠い街に 旅立つ駅で
言いかけてた言葉は
ざわめきの中
ねえ かき消されたけど
目と目 合わせた瞬間に
心に届いてた
まずここで遠距離恋愛の話であることが、直接的でなくスマートな形で示されていますが、何より後半の展開「騒めきや花火で言葉がかき消される」なんてベタな漫画の展開を、「それでも思いは通じていた」とひっくり返すことで、逆にふたりの想いの強さを強調する素晴らしいラインだと思います。

ここでふたりの想いを強調したことで、続くサビのストレートな表現も、全く嫌味なく入ってきます。
永遠の花
ひとつ場所に咲いた
ふたつの想い
愛と呼ぶのなら
そこから2番の中だけで不安→再会のドラマを描写できているのもすごいのですが、特にこの一節
今あなたがくれたこの花
あの日と同じ
花言葉は永遠(とわ)の愛
もし偶然でも その優しさ
また受け止めて
ずっとずっと
あなたを待っているから
このようにドラマとモチーフをリンクさせて、感動をより演出する手法は、後述の「風」シリーズにおいて遺憾なく発揮されています。また、「もし偶然でも」と相手の想いを決めつけない誠実さもまた、森先生の歌詞の魅力だと思います。

というわけでこの『永遠の花』は「分かりやすさ」を中心に、森先生のテクニックが特に冴え渡った歌詞として挙げさせて頂きました。


・『はにかみdays』
作詞:森由里子 作曲・編曲:滝澤俊輔(TRYTONELABO)  
歌:島村卯月



シンデレラにおけるソロ2曲目の先陣を切った楽曲。「アイドル・島村卯月」を最大限のエモーションで表現した1曲目の『S(mile)ING!』から打って変って、いわゆる「等身大の女の子」としての一面を切り取った1曲になっています。

この曲はまず『メッセージ』『Shine!!』『夢色ハーモニー』などなど、シンデレラで多数の楽曲を提供されている滝澤俊輔氏の、爽やかな高揚感をたたえた楽曲と、森先生の美しい歌詞、そして卯月の癖のない(もちろん良い意味で)ストレートな歌声が深く噛み合い、全体として非常にクオリティの高い楽曲になっていると思います。個人的にはシンデレラ楽曲の中で一番好きです。


それでこの歌詞の素晴らしいのは、まず音として楽しいというところです。

最初に森先生の歌詞はまず文章として成り立っていると書きました。とはいえ、歌詞は曲に乗せて初めて意味をなすものなので、それが発音された時に気持ちいいかという点も重要となる訳ですが、森先生の歌詞はそこに関しても抜かりがありません。

特にこの『はにかみdays』は、繰り返しや韻が散りばめられた、音としての楽しさに溢れたものになっています。それが強く味わえるのが冒頭。
Full Full ふるえるハートに
降る星のように
君に出会ったとき
はじめてのトキメキが降りてきた
さらに、これが「意中の子に告白しようとする女の子」という歌詞の物語にもリンクしていて、リズミカルな歌詞が、そのまま心が弾んでいる様子の表現にもなっているのです。

そして肝心の物語は次のように進みます。少し長めに引用。
帰り道 偶然に
君の背中 見つけた私
近づいて 近づけなくて
ああ あと一歩
そう もう一歩
急いで
肩が並んだ!
帰り道、憧れの相手を見つけ、話しかけようと接近するが...。
胸キュンで はにかんで
右手を振ったけれど
チャンスを追い越した
青春の道
勢いあまって相手を追い越しちゃった!という非常にささやかな1シーンを切り取っているのですが、それがサビとして成り立っているのはまさに森先生の筆力の賜物でしょう。

続く1節も非常に美しく、
胸キュンで はにかんで
息ができないくらい
夕焼けの色に
染まってる心
恥ずかしさを真っ赤な夕焼けに例えて、しっかり詩にしているところも素晴らしいのですが、この「空」というモチーフがこの場限りではなく、主人公の気持ちのメタファーとして、最後まで一貫して活用されているのが何より気が利いています。

2番でようやく話しかけられたと思ったら、何も思いつかず天気の話に逃げようとするも噛んじゃった!という展開も非常に可愛らしいですし、次のように
もし君のそばに いられたら
辛い時には 涙拭いて 元気あげたい
太陽みたいに
主人公の想いを綴る場面に至るまで、徹底して空にまつわるモチーフが使用されています。

そしてこの物語がどう着地するかというと、
胸キュンで はにかんで
告白できないけど
予感が流れ出す
今日はいい日だ
まだ告白には至っていないけど、何だかいい方向に進んでいるような、そんな予感を感じたところでこの歌詞は終わっています。ドラマや映画のような物語なら、ここからすったもんだいろいろあるのでしょうが、ただこの「ある意味一番幸せな瞬間」だけを切り取ってずっと味わえるというのもまた、歌詞の良さと言えるでしょう。

そして最後はもちろん、青空のイメージで綺麗に締められています。
胸キュンで はにかんで
青空は続いてゆく

このように『はにかみdays』は音としての楽しさ、描写の美しさ、そして構成の美しさが揃った歌詞になっているのです。


・『桜の風』
作詞:森由里子  作曲・編曲:田中秀和(MONACA)
歌:アナスタシア、五十嵐響子、依田芳乃




「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS MASTER SEASONS」シリーズにおいて制作されてきた、夏『銀のイルカと熱い風』、秋『秋風に手を振って』、冬『ツインテールの風』と、世界観を共有した連作(作詞は全て森先生)の中で、この『春の風』ではそれまでの曲で語られてきた物語の結末を描いています。

「季節」をテーマにした連作といえば、765の「生っすかSPECIAL」の『初恋』シリーズがまず先行して行っていましたが(それでレコード大賞を取ったりも!)、一年の出来事を描いた『初恋』シリーズから今回はそこから一歩進んで、より長いスパンで時系列や視点を入れ替えながら、ある「僕」と「私」の恋愛模様を語っています。

まず、この『春の風』までのあらすじを簡単に要約しておきます。

・夏『銀のイルカと熱い風』
「僕」視点。初めてのデートで水族館へ。告白も成功し、ふたりは晴れてカップルに!「銀のイルカのネックレス」をプレゼントし、最高の夏が始まった。

・秋『秋風に手を振って』
「私」視点。あの夏から2年後、あれから些細な喧嘩から疎遠になったふたりは久々に再会する。でもあの頃には戻れない。これが大人になるってことなの?

・冬『ツインテールの風』
「僕」視点。時は遡り、ふたりが出会う前の出来事。席替えで隣になったのをきっかけに、背の高い、ツインテールのあの子への片思いが始まった。

そしてこの『春の風』は再び女の子視点。時系列的には一番後の「秋」からさらに時は流れ、髪を切って就職した「私」は、駅のホームに「僕」の影を見つけ...。という出だしから始まります。
風は流れ 髪を切った私は
通勤電車から遠い日を見つめてる
携帯の写真を眺め想い出閉じたら
向こうのホームに似てる人が俯く
ここも状況説明だけでなく、冒頭から「風」というモチーフや、『ツインテールの風』からの「髪を切った」など、それまでのモチーフを重ねながら巧みに時間経過を表現しています。

さらに『秋風に手を振って』で投げかけられた
My dear 教えて おとなになるって
ねぇ変わることなの?何もかも
この問いに対する答えによって、一気にメッセージが浮かび上がります。
目と目合って走った
願いを叶えたい
そのために誰もが
大人にね きっとなるから
ここまで酸いも甘いも味わってきたこれまでの時間を、その全てを肯定するようなメッセージで、優しく包み込みんでしまうのです。

そしてここからは怒涛のフラッシュバックに入ります。
今日もしてるお守りは
あの日くれたネックレス
銀色のイルカが笑ってる
二人の笑顔 見つめて
『銀のイルカと熱い風』のネックレスに始まり
Ding Dong Din Dong チャイム鳴って
同じページのぞいたよね

熱い風とアクアリウム
名前呼んだ光の夏

秋の風に涙した日

それは光と影 遠回りした青春
と、これは改めて言うまでもなく、各曲のモチーフやラインをちりばめた、確実に涙腺の急所を突いてくる流れになっています。

そして極め付けに「手を握る」というアクションが描かれるのですが、これは「夏」の
掌の中で
繋がった未来
もう放さない
どこまでも
から、「秋」の
なぜか些細なことで喧嘩して
はなればなれの右手 痛みを握ったよ
と、反復されてきた流れが非常に効いているのが次の一節です。
手と手繋ぎ歩こう
途切れていた時間
繋ぎ直すように
指先を絡めたままでずっと
繋いでいた手が一度は離れ、しかしまた繋ぎ直して未来に向かうという、ストレートに綺麗な流れで物語を締めています。

森先生は、特にこのような画の見える表現が非常に巧みで、もちろん楽曲の力も大きいですが、一連の曲を聴いた後に一本分のドラマを観終わったような満足感を与えてくれます。

『はにかみdays』のような、ある一コマを切り取ったものとはまったく対照的ですが、こちらもまた素晴らしく、『永遠の花』で見られるようなモチーフとドラマのリンクも、4曲にわたって紡がれることで、より破壊力を増しているこの『桜の風』は、森先生の一つの集大成と言っていいでしょう。


というわけで、一気に3曲を紹介してきましたが、最初に述べた通り森先生の歌詞は全曲良いので、また折に触れてやっていきたいなあと思います。新曲も待ってます。


それではこの辺で。

消灯ですよ。

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