ておどーるのブロマガ

田中琴葉の殺人者としての才能を『屋根裏の道化師』に見る

2020/06/28 02:23 投稿

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  # はじめに


 はじめに、こんな最低最悪なタイトルにも関わらず記事を開いた皆様に感謝を。それから謝罪を。この文章は他人に読ませるような体裁を取っているが、基本的には筆者本人の感情や考えを整理するために書いたもので、自分以外に向けて書いたものとは言い難い。要するに誰かを説得しようと思って書いたものではない。読みづらいと思うがご容赦いただきたい。
 それから、今更とも思うが最初にこれから話すコンテンツについて補足しておく。
 アイドルマスターシリーズのゲームでは、プレイヤーはプロデューサーという役割を持ち、登場するアイドルをトップアイドルへ導くべくプロデュースを重ねていく。その中で、お気に入りのアイドルを担当と呼んだりする。
 今回はその中でもミリオンライブ! に登場するアイドルの話だ。ついでに――容赦なくネタバレもしていくので、特にCDシリーズを揃えていないという人はそのつもりで読み進めていただきたい。まあ、タイトルの時点でそのへんの知識がある人しかページを開かないとは思うが。
 あと、関係ないんだが――ブロマガを媒体に選んだのは、ミリオンLIVE一挙をTSで見るのに550円払ったらなんか書けるようになっていたからである。

 
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 私がミリオンライブ! と出会ったのはなにかのメドレー動画の楽曲だったと思う。しかし、ミリオンライブのアイドルたちに初めて触れたのはシアターデイズが配信されてからだった。それ以前はシンデレラガールズのアニメで興味を持ち、デレステをしばらくプレイしていた。ミリシタにのめり込んだのは『Fairytaleじゃいられない』のイベントの頃からだろうか。まあ、そんな遍歴である。田中琴葉と出会ったのは2018年2月8日だが、彼女の身に起きたことはサービス開始時のメッセージから色々と辿っていたので知っていた。それで――いつの間にやら担当を名乗ったりしていたわけだ。



 2018年11月28日に発売されたCD、THE@TER BOOST 03のドラマ『屋根裏の道化師』で、田中琴葉は劇中の劇場、ミリオン座の女優コレットを演じる。彼女は劇中で起きる連続殺人事件の真犯人として、その演技力を遺憾なく発揮してくれる。
 初めてこのドラマを聞いたとき、その内容や完成度に対する評価とは別に――私は高揚した。

 私の担当アイドル――田中琴葉が、殺人鬼役だったのだ。

 担当とか言うとやたら形式ばってたり高尚だったりするような気がするが、結局のところ特別な感情を抱いているという表明である。私の場合、それは「田中琴葉に殺されたい」というものも含んでいた。
 アイドルマスターは当然殺人鬼をプロデュースする物騒なゲームではないので、田中琴葉にもそんな要素は一切ない。要するに私の二次創作、独り相撲、拗らせた妄想に過ぎない。だが確かに、私は田中琴葉に殺されたいという感情を燻ぶらせていたのである。『屋根裏の道化師』は、そんな妄想を、劇中劇、役柄というかたちで現実に見せてくれたのだ。私が田中琴葉というキャラクターに見ていた殺人者の才能を。
 殺人者の才能、なんていう物騒な言葉に目くじらを立てないでいただきたい。この文章はそういう滅茶苦茶な解釈を劇中に重ねたひとりのプレイヤーの感情に始末をつけるためのものなのだ。
『屋根裏の道化師』で最初に殺される人物、プロデューサーのひとりとして。


 # 屋根裏の道化師に関する考察


 さて、屋根裏の道化師という物語を通して田中琴葉の殺人鬼としての才能を可視化することにしよう。諸兄らもドラマを聞いたのであれば、コレット(田中琴葉が演じた役名)に関して色々と考えを巡らせたことと思うが、最初はそのへんの解釈を共有したいと考えている。『屋根裏の道化師』から得たもの、という前提がこの解釈には必要なのだ。

 それから、自分と同じ解釈というものは、やっぱり広げたり見つけたりしたい。こんな最悪な妄想なら尚のこと、同じような幻覚を見ている人に出会いたい。勿論、異論や別視点からの解釈もあれば嬉しい。


・屋根裏の道化師という物語について

 まずはTB03のドラマ『屋根裏の道化師』について振り返ろう。
 白石紬演じる探偵・ウォーカーの独白からドラマは始まる。「この世は舞台、人はみな役者」というシェイクスピアの引用に始まり、「与えられた役割を役割を演じながら生きている」のだと。そして、こう結んで聞き手は劇中世界へと送り出される。「僕自身、そう思っていたのです。あの恐ろしくも悲しい、屋根裏の道化師事件に関わるまでは……」
 ウォーカーが招待を受け訪れた劇場ミリオン座で、次回公演である『屋根裏の道化師』リハーサルを前に劇場プロデューサーが毒殺されるという事件が発生する。真っ先に疑われたのは『屋根裏の道化師』で主役を演じるコレット(演:田中琴葉)だった。結局コレットは証拠不十分だが潔白でもない状態で警察の取り調べから解放されるが、劇場の女優であり『屋根裏の道化師』主演を逃したモニカ(演:周防桃子)はコレットを激しく糾弾する。それを同じく女優のマドリーン(演:徳川まつり)と、一線を退いた元女優のシンシア(演:馬場このみ)がなだめる。一方で劇場支配人のミルズ(演:真壁瑞希)は、プロデューサー殺害という状況にありながら『屋根裏の道化師』を予定通り上演しようとし、コレットもそれに同調する。それを受けてモニカは「正気じゃない」と反発し、ウォーカーは『屋根裏の道化師』の元になったという劇場で過去に起きた事件の顛末を聞かされる。当時劇場で働いていた道化師が最愛の人を手に掛け、劇場の屋根裏に逃げ延びて今も隠れ住んでいるという話だった。その晩マドリーンが殺害され、連続殺人の様相を呈してくるとモニカは「屋根裏の道化師の仕業だ」と恐怖する。そして、そのモニカまでもが殺害された。モニカ殺害現場の状況からリリー警部(演者:七尾百合子)は劇場支配人ミルズが犯人だと推理し追い詰めると、ミルズは劇場の仕掛けを利用して逃亡し、自殺した。死んだ者達の遺志を無駄にしないためと上演された『屋根裏の道化師』千秋楽後の舞台上で、独り劇中の一幕を演じるコレットの前にウォーカーが現れる。ウォーカーはコレットの出自とともに犯行の手口を明らかにした。コレットは自らが犯人だということを認め、動機を語る。本物を、真実を求めた、そのためには大切な人たちを殺すしかなかったのだと。そして『屋根裏の道化師』という完成された物語を守るため、真実とともにコレットは舞台から身を投げた。
 再びシェイクスピアを引用したウォーカーの独白とともに、ドラマは幕を下ろす。


・コレットという人物像

 さて、最初に「コレットがプロデューサー、マドリーン、モニカを殺害した動機」について明らかにしていこう。ほとんど蛇足だが、書いてしまったのでしょうがない。
 ドラマのエピローグでコレットがウォーカーに語ったのは、「常に本物を、真実を求めた」というものだった。道化師の感情を完璧に演じるためには、道化師と同じ体験――つまり、最愛の人を殺害するという体験が必要だと彼女は考えたのだ。コレットは自白の中で劇場プロデューサーを大切な人と呼び、マドリーンとモニカとのエピソードを語る。マドリーンは優しかったがコレットが犯人だと気づいて自首を促したため、発覚を免れるために撲殺された。モニカも同様にコレットを疑い、自室で刺殺される。一方でプロデューサーは、コレットとの接点を描かれないままに毒殺された。そして最後に、コレットは「主演女優が演劇になぞらえた見立て殺人を行った」ことが発覚して演劇を封印される、つまり自分が完成させた作品を葬り去られることを防ぐため、秘密とともに自ら命を絶った。
 ここで掘り下げたいと考えているのは、次の二点である。「なぜコレットは本物の『屋根裏の道化師』になろうとしたのか?」そして「プロデューサーは本当にコレットにとって大切な人だったのか?」


・なぜコレットは本物の『屋根裏の道化師』になろうとしたのか

 ドラマで語られたとおり、コレットは最近ミリオン座に現れ、演劇『屋根裏の道化師』で初めて主演に選ばれた。彼女が演技に掛ける情熱は、先輩女優と意見の衝突を見るほどのものであり、実力も確かだ。未来ある若い女優が何故、初主演作の役作りで殺人という最大級の反倫理、反社会的行為に手を染めたのだろうか。コレット自身が自殺の間際に危惧したように、彼女の犯罪が明らかになれば演劇『屋根裏の道化師』は表の演劇史から抹消されるだろう。
 だが、その可能性はコレットの命とともに潰えた。彼女の目的は最初から「演劇『屋根裏の道化師』を本物にする、そして永遠に残すこと」で、その障害になるものは自らの命であっても顧みないという覚悟の表れと見ることもできる。そもそも演劇『屋根裏の道化師』とは、ミリオン座で昔起きたという事件をモチーフにしている。コレットが『屋根裏の道化師』を本物にするという強い意志を持っていたなら、なぜ持つに至ったかを明らかにする必要がある。

 コレットの関係者として判明しているのは父親であるミルズと既に死別した母親、コレットの紹介状を書いた人物の三人である。

 このうちミルズとの関係をウォーカーに指摘されたとき、コレットは特段のリアクションを取らなかったことから、父親であることは知っていたようである。また「コレットの母親はミルズと恋仲にあったがミルズの結婚で破局して母親は日本へ帰国し、その後コレットが生まれた」という自らの出自を説かれた際も静聴しており、「それをもっと早く知っていれば……」と言った点からしても、ある程度察していたのではと考えられる。一方でミルズはウォーカーに「コレットに昔の自分の姿を重ねてしまう」等と発言しており、ドラマ開始前からコレットが自分の娘であることを知っていたようである。
「想い人を殺害して自らも行方をくらました道化師」「ミルズとコレットの母親」は、どちらも「最愛の人との離別」という点で共通している。真壁瑞希のSSR覚醒後カードボイスでミルズは遺書を書きながら「罪を償える機会を得た」と発言しているが、この際左手に女性が写った写真を持っており、その罪とは写真の女性に関連したものと考えられる。写真は古く、おそらく写っているのは離別したコレットの母親であろう。ならば彼の罪とは?

 ここでひとつ説をでっち上げたい。『屋根裏の道化師』の物語はミルズによる創作だったのではないか?
 ミルズがウォーカーに語ったところによれば、「哀れなひとりの道化師」とは「真面目で気が弱く、優しい人物」であり、その人となりが悲劇を生んだと言う。また前述したとおり、ミルズと道化師は「最愛の人との離別」という共通点を持っている。
 コレットがウォーカーに語った『屋根裏の道化師』という昔話では、道化師が最愛の人を殺して劇場の屋根裏へ逃げ延び、今も隠れ住んでいるというものだった。
 一方でミルズの身に起きたことは、手品師であった彼が劇場オーナーの娘との縁談を持ちかけられ、彼と愛し合っていたコレットの母親との別れを余儀なくされた。そして愛する女性は劇場を去り、彼は劇場の裏方――日の目を見ることのない場所での人生を歩むことになった。
 コレットの母親が劇場を去ったことを「女優としての未来を奪う」つまり「女優としての彼女を殺した」と解釈することができる。ミルズは劇場の面々を気遣う様子からも心優しい人物であることが解るし、そういった自責の念に駆られることもあるだろう。そして劇場オーナーの娘と結婚した後の彼は劇場の「表舞台」から姿を消し、裏方――劇場の舞台装置が入り組む「屋根裏」に身を置いて長年劇場を支え、今では支配人を務めている。道化師、つまり「真面目で気が弱く優しい」青年とはミルズ自身のことなのである。

 そしてその場合、コレットにとって『屋根裏の道化師』とは、自らのルーツを紐解く重要な物語になる。コレットの演技観である「真実を求める」というのは、謎に包まれたままの自身のルーツ――かつて女優だった母と、名前も顔も知らない父に対する探求と地続きのものだ。ミルズが自分の父親であり、『屋根裏の道化師』その人であると勘付いたコレットは、両親の間に起きた真実を、ふたりの感情を追求するために、演劇を利用しようとした。彼女は、ミルズと脚本が作り上げた怪物になる必要があったのである。
 
 コレットが最初の犯行現場、つまりプロデューサー殺害時に残した「鏡写しの3と4」のカードは、道化師復活を示唆していた。コレットの母親が日本人であることを突き止めたウォーカーは、このメッセージを「黄泉がえり」と解釈し、これを正しく解釈できる人物は日本人の母親を持つコレットだけだと、真犯人の証拠として突きつけたわけである。だが、日本人と交際していたミルズもこのメッセージを理解できた可能性は十分にある。コレットの出自を知っていたミルズは、「3と4」からプロデューサー殺害犯を早い段階で看破することができたのである。またミルズにとって「黄泉がえり」とは、彼が殺した人物――つまりコレットの母親の復活を意味している。最愛の人との間に生まれた娘が、女優として彼の前に現れた。
 プロデューサーとマドリーンが殺害されてなお、『屋根裏の道化師』上演にこだわったのはミルズだった。そしてそれに呼応するようにコレットが決意を表した。ミルズは、最愛の人が道半ばで絶たれた女優としての志を、コレットが叶えてくれると信じて、彼女の殺人の罪を庇い背負うことが「罪の償い」であると考えたのだ。SSR覚醒後で、彼はこう独白する。「ああ、むしろ感謝したいくらいです。私にも、まだできることがあったのだと」
 モニカ殺害後、リリー警部にリトルミルズの仕掛けを証拠に尋問された際、ミルズは「では、リリー警部はプロデューサーやマドリーンさんも私が殺したとお考えなのですね?」と尋ね、リリーが「貴方なら警察の目を欺くことなど造作も無いでしょう」と肯定すると、「そうですね」と応答する。ミルズは警察の手がコレットに及ぶことはないと確信し、彼女の罪業を背負うため逃亡した。

 コレットは「愛する人を殺してしまう道化師を理解するには、私も大切な人を殺してみるしかなかった」と、事件の動機が最後までわからなかったウォーカーに対して告白する。マドリーンはコレットが犯人であることに気づいて自首を勧めたため(察するあたりが徳川まつりらしい)、公演中止を恐れて口封じのために撲殺した。モニカはコレットの「演技に真実を求める姿勢、行動」から殺人を犯したことを糾弾し、刺殺された。
 コレットは殺人を経て「屋根裏の道化師として、真実を演じきった」。ミルズの自責の念から生まれ、劇場に棲み着いた恐怖が作り上げた『屋根裏の道化師』に、コレットは成ったのである。
 コレットが身を投げる直前、自首を促すウォーカーに対して、私がしたことが明らかになれば『屋根裏の道化師』は闇に葬られてしまう。二度と上演できなくなってしまったら、それこそ亡くなった皆に顔向けできない、と拒絶する。「だから私も退場するべきなんです。この秘密を、ひとり抱えたまま」
 

・プロデューサーはコレットにとって本当に大切な人だったのか

 さて。
 どっちかというとこっちがこの雑多な文章の本筋である。

『屋根裏の道化師』は、「プロデューサー」が殺害されるところから始まる。この構図はTA02『果てしなく仁義ない戦い 魅梨音闘争編』の最初に大神環の「親分」が殺害されたときと同じだ。要するに「メタ的な視点で見ると初っ端に殺されたのは視聴者であるP」というネタである。これをネタじゃなくしていくのが本項の趣旨である。
 コレットは「愛する人を殺してしまう道化師を理解するには、私も大切な人を殺してみるしかなかった」と、事件の動機が最後までわからなかったウォーカーに対して告白する。しかしドラマの最初から最後までコレットとプロデューサーとのエピソードなどが語られることは一切なく(最初にアリバイを聴かれてPに演技の方針で相談があったと答えた程度)、マドリーンやモニカとの会話なんかのほうが圧倒的に多い。最序盤で死んで出番がなくなったという作劇上の都合もあるが、全編通してプロデューサーの存在感が希薄で、本当に「大切な人」だったということを伺わせる描写がなにもない更にコレットが『屋根裏の道化師』主演に抜擢されたのはミリオン座に来て間もなくのことだ。そんな短期間で特別な感情を育むことができるだろうか。
 だが、ドラマを聴いた大半の者は違和感を覚えなかったのではないだろうか。コレットを演じる田中琴葉は、ミリオンライブに登場するアイドルの中でも頻繁に愛が重いだのなんだのと呼ばれる程度には「プロデューサーに対して特別な感情を抱いている」と認知されているひとりであって、その先入観が「大切な人」というコレットの言葉を補強しているからだ。ゲームのプレイヤー、つまりプロデューサーとしてゲーム本編で『屋根裏の道化師』の舞台裏を知る我々は結局演者とキャラクターの重ね合わせ、メタ視点からは逃れられないのである。
 せっかくなのでこのままメタ視点を借りて拡大解釈してしまおう。すると「田中琴葉はオーディションでプロデューサーと出会いアイドルになった」という事実をドラマにスライドさせて「コレットの紹介状を書いたのはプロデューサーである」と強弁することができるのだ。しかしこれはコレットの「ミルズがいくらでも演技できる場所を与えてくれた」という発言と矛盾する。コレットを迎え入れたのはミリオン座プロデューサーではなさそうだ。やはりメタ視点はメタメタに切り刻んでしまったほうがいい。
 しかし、メタ抜きで考えるにしても結局は「本当に大切な人だった」「取るに足らない存在だった」かの二択にしかならない。もしプロデューサーがコレットにとって取るに足らない存在だった場合、なぜ彼は「大切な人」として殺されなければなかったのか、という疑問が生じる。

 ここで注目したいのが、ウォーカーの独白だ。「この世は舞台、人はみな役者」というシェイクスピアの引用に続く、「与えられた役割を役割を演じながら生きている」という一文である。プロデューサーがコレットに殺されなければ、屋根裏の道化師が生まれることはなかった。要するに、コレットが「『屋根裏の道化師』の真実を求めるためにしなければならないこと」を定めた時点で、プロデューサーはコレットの彼への感情如何に関わらず「大切な人を殺す」という体験をコレットに与える役柄を割り当てられたのだ。そうしてプロデューサーは殺されてしまった。
 プロデューサーがコレットに殺害を決意させる行動を取ったのか、もしくはコレットの殺意を挫くことができなかったのか、または別の理由なのかは推し量れない。プロデューサー殺害が単純なロールプレイ(プロデューサーを大切な人だと思い込む)だった場合、プロデューサーはコレットにとって取るに足らない存在だったということになるだろう。プロデューサーが殺害を決意させたのであれば、それはコレットがプロデューサーに失望し死んでしまっても構わないと思わせたのかもしれないし、コレットが本物の『屋根裏の道化師』になることをプロデューサーが是認したとも考えられる。
 結局のところ、コレットがプロデューサーに抱いていた感情を追うのは難しい。ただし、彼女が殺した者達に敬意を払っているのは事実である。プロデューサー、マドリーン、モニカ、ミルズと作り上げた『屋根裏の道化師』が失われることを、コレットは恐れている。


・コレットと田中琴葉の共通点

 ここまで読んでいただいて、田中琴葉が演じたコレットという人物像を大体共有できただろうか。まあ、強烈な幻覚と言われるとそこまでなのだが。そもそも記事のタイトルからしてひどい妄言だ。お付き合い感謝する。
 
 シアターデイズのアイドルコミュで描写されるとおり、田中琴葉は特に演技に強い関心を持つアイドルである。幼少期の観劇体験から演劇に興味を持ち、高校では演劇部に所属し、アイドルのオーディションを勧めてくれたのも演劇部の友人や顧問である。彼女のルーツには演劇がある。



 コレットもそうだ。女優の母親を持ち、ミリオン座に現れる以前を誰も知らないながら彼女の演技力は本物で、彼女自身「私には演劇しかない」と発言している。このあたりの設定はともかく、二人が演劇というルーツで繋がっているのは偶然ではない。田中琴葉がコレットを演じる『屋根裏の道化師』は、元々ゲーム中の投票企画THE@TER BOOSTにおいて配役が決定された。プレイヤー――つまり我々が田中琴葉に新ヒロイン、コレットの役柄を与えたのである。
 当時の状況といえば、投票企画第一弾であるTHE@TER ACTIVITIESで学園ホラーの主人公役を得た田中琴葉が、彼女を演じる声優、種田梨沙の休業に伴い「降板」したという経緯があった。その後田中琴葉が不在のままシアターデイズがサービスイン、年末に第二弾THE@TER BOOSTが発表され、投票対象アイドルに彼女の姿があった。リベンジを誓う田中琴葉担当Pが結束して用意したのが「劇場の新ヒロイン」という役柄なのだ。我々が田中琴葉に舞台女優役がふさわしいと考えたのは、彼女の役者というアイデンティティ故のものである。

 ドラマ『屋根裏の道化師』の舞台裏が、シアターデイズのイベント『ラスト・アクトレス』で描かれている。その中で田中琴葉は(イベント当時は明らかにされていないが)完璧な演技を動機とする殺人犯という難しい役に難儀する。それを手助けしたのは周防桃子だ。ドラマのコレットとモニカの関係性とは真逆と言える。思えばラスト・アクトレスには担当が全員出てるのでなんかこう感情がヤバい。一度に摂取していい解釈の量ではない。いやまあそんなことは今はどうでも良くて……
 演劇にアイデンティティのルーツを持つ琴葉とコレットは、どちらも役作りに熱心で余念がなく、真面目に取り組み、役の気持ちを想像し、寄り添うことができる。コレットの人物像は、田中琴葉から生み出されたものなのだ。でなければ、コレットがプロデューサーを大切な人と(仮に偽りだったとしても)認めることはない。その関係性は、田中琴葉と彼女のプロデューサーという関係性にリンクしたものだからである。なに、メタ視点はさっき切り刻んだだろって? 言ったはずだ、メタ視点からは逃れられないと。「新ヒロイン」に人格を与えたのは我々なのだから。

 前項で「プロデューサーはコレットにとって大切な人だったのか」について考えたが、そこで私はプロデューサーに「殺されるべき大切な人」という役割を見出した。「大切」がコレットにとって真偽どちらであったかはわからないが、「大切な人」という役割、役柄であることは間違いなかったと。そしてコレットは「大切な人を殺す」という自分の役割を肯定し完遂した。
 つまり、こう思うのだ。コレットにできるなら、コレットと同じアイデンティティを持つ田中琴葉にも、「大切な人」――プロデューサーを殺せるのではないか?



 # 田中琴葉とタナトス


 ギャグではない。
 タナトスとは、ギリシャ神話に登場する死そのものを神格化した神のことである。また、彼の存在からある言葉の同義語として扱われることがある。
 その言葉とは――デストルドーだ。

 田中琴葉デストルドーは、切っても切れない縁がある。
 アイドルヒーローズに登場する敵対勢力、デストルドーはここから来ている。デストルドーと呼ばれる集団は、暴力によって混沌をもたらし人類を破滅へ導くことを目的としている。田中琴葉はそんな集団の日本支部総帥という立場を演じた。

 役名はなんのひねりもなく本名から取って「コトハ」となっているが、ヒーローズしかりスペースウォーズしかり、グリー時代のイベントはそんな感じだ。MTGのドラマパートも大概本名から来ている(『セレブレーション!』では読みは同じものの漢字が違ったり、『Between Past and Future.』では桃子→ピーチだったり)が、『屋根裏の道化師』や『おとぎの国の物語』『近未来アウトサイダー』ではまるっきり違う役名になっている。世界観が現実離れするとこうなるのだろうか?
 話は逸れたが、要するにコトハは過激破滅主義者集団の首領というわけである。当然そんな演技も堂に入っていて、ヒーローであるマイティセーラー百合子を軽くボコって悪堕ちさせ、東京を戦場にし、人類をデストルドー化させる化学兵器弾頭を用いたミサイル攻撃まで計画するのだ。そして最期は、特撮らしくヒーローのマイティセーラー海美に斃される。イベント登場順としてはこちらが先だが、田中琴葉が演じる役柄が悪事を働き、最後に命を落とすという構図は『屋根裏の道化師』と変わらない。劇中劇で何人も殺して自分も死ぬという役を何度も演じたのは彼女だけだ(本当にそうか? 見落としがあるかも)。
 なぜ田中琴葉の演じる役柄はそんなことが多いのか? ゲームの話なのに現実を持ち出して悪いが、きっとわかりやすいと思う。例えば声優の桑島法子が演じるキャラはすぐ死ぬとか、既に死んでいるとかいう話はご存知だろうか(ニコニコ大百科の記事でも参照していただきたい)。他にも石田彰や櫻井孝宏が演じるキャラは胡散臭いとか、お前が犯人なんだろ、とか。Twitterとかではよく見るネタである。俳優の藤原竜也はDEATH NOTEやカイジのイメージが強くてクズの役しか来なくなった、みたいな記事もあった。演技力の高さとは、そういう難しい役を演じる実力や機会に恵まれやすいということなのだ。ミリオンライブの中でも演技に定評のある田中琴葉にも同じことが言えると私は考えている。



 そういうわけだから、田中琴葉と暴力の親和性! ――なんて安易な発想で彼女の殺人者の才能を見出そうとしているわけではない。そもそも彼女は「だからって、暴力が全てだとか、そんなふうに考えているわけじゃないですけど……」と明確に否定している。まあ、デストルドー総帥に抹殺してもらえるのも悪くはないが。

 デストルドーの元々の意味は、精神分析学用語における「死へ向かおうとする欲動」である。精神科医ジークムント・フロイトは自傷、自罰などの破壊衝動を快楽原則(人間は快楽を求め苦痛を避けようとするという考え方)では説明できないと考え、死の欲動という概念を生み出した。色々と難しいし訳がわからんので端折るが、快楽原則、つまり「生の欲求」、リビドーとは全く別のところに「死の欲動」は存在し、リビドーが満たされなくなるとデストルドーが姿を表す、ということらしい。さらに、デストルドーの「生命に対する破壊衝動」は、自己と他者の区別がない。
 コトハ――デストルドー総帥はどうだっただろう。彼女の行動原理は『アイドルヒーローズ リベンジ』で明らかにされている。
 コトハのセリフを抜粋しよう。「おとなしく、滅びを受け入れなさい!」「私達デストルドーが支配する、新たな世界(の幕開け……)」「純粋な力のみが支配する理想郷」「世界は、唯一絶対の真実……暴力に、支配されるべきなんですから……!」などなど……。スバルが「暴力への衝動」とも発言している通り、彼女たちは生命が生まれながらに持つ破壊衝動こそが生物の従うべき本能だと確信しているわけである。

 しかし、殺してばかりでは支配する世界、つまり社会を構成する生物であるところの人間がいなくなってしまうのではないか? でもまあ純粋に死の化身として君臨しているのはコトハだけみたいだし、スバルとかセリカは暴力に快楽を見出してるような感じあるし、尊厳破壊逆レとかあるでこれは……おっと、口が滑った。ともかく、コトハの人物像についても言いたいことは山ほどあるが一旦置いといて……ここで言いたいのは、田中琴葉と『死』の属性を持つキャラクター……タナトスに魅入られた人物は相性がいいということである。
 ならば、彼女自身はどうなのか。



 # 最後に
 

 ここまで述べたのは、田中琴葉という人物が如何にして「死」に親しい属性の人物たちに器を与え、心を重ねてきたかという事実の確認だ。
 そして、彼女のデストルドーという在りもしないようなものを、ここまで読み進めた諸兄らが見出し、重ね合わせるきっかけを見せてきた。

 殺人という業を背負わせて、見たいものとはなんなのだろう。
 罪業に対する苦悩?
 反倫理的が齎す高揚?
 私を殺したら彼女はどうするだろう。
 後を追って死んでくれるだろうか。
 憎悪のままに私の死体を壊し続けるかもしれない。
 私の心臓を手許に隠して密かに愛してくれるだろうか。
 何もかも秘密にしたまま、残りの人生を苦しんで欲しい。
 ――結局の所、歪んだ欲望の投影のひとつに過ぎない。

 二次創作とは、いつだって解釈の際限ない拡大である。それが矮小化されて表現されることはない。私の解釈は如何だっただろうか。変なものを見たせいで創作意欲が湧いた人がいるならそれはとても嬉しいことだし、見られなかったならそれでいい。ほんとうに、それは素晴らしいことなのだ。こんな感情を抱く必要はどこにもない。理解できないかもしれないが、そういう欲望を持っている人間がいるということである。




 だが私は忘れない。ナイフを手に襲いかかる和装メイドの北沢志保を前にしたとき、お前は確かに「刺されたい」と言った。









 おまけ
 

 なんか疲れたし言語化するのめちゃくちゃ大変だから過去の「田中琴葉に殺されたい」ツイートを解釈の例としていくつかコピペしておきます。人によっては普通に気分悪くなると思うので読む必要はありません。あと長すぎる。時間の無駄。





  ↓





  ↓




・田中琴葉にうっかり包丁で刺されて藻掻き苦しみながらどうしようどうしようって慌ててる琴葉を眺めてたいって話した?

・もうネタバレしてもいいと思うんだけど、THE IDOLM@STER THE@TER BOOST 03 ラスト・アクトレスのドラマ「屋根裏の道化師」で田中琴葉が演じたコレット、俺が田中琴葉に感じていた(望んでいた)危うさを見せてくれたので100点満点で完璧でした

・血溜まりに沈むPを冷たい目で見下ろす田中琴葉の絵ください

・野々原茜は恐怖で狂って欲しいけど、田中琴葉には狂気を振りまいて欲しいんだよな……
(注・TC投票に関するツイート)

・田中琴葉と水野愛の中の人が同じなので包帯まみれで血色の悪い田中琴葉を想像して興奮してる
(注・水野愛はゾンビランドサガの登場人物。元トップアイドルで現在はゾンビである。声優が一緒といえばFGOの清姫も種ちゃんの珍しい甘めな声音とヤンデレが合わさり最強に見える。未プレイだけど)

・多重性癖マンだから田中琴葉とえっちしたいし田中琴葉に殺されたいし高坂海美にどろどろのぐちょぐちょに犯される田中琴葉が欲しいし高坂海美との行為中を目撃した田中琴葉をセックスはスポーツ同盟に入会させたい(?)
(注・琴葉は総受け)

・田中琴葉に線路へ突き飛ばされるのはあり

・田中琴葉手作りのシアン化カリウム入りチョコレートで毒殺されたいオタクなので田中琴葉にチョコレートを作ってもらいたい

・田中琴葉が俺を殺すためにチョコレートを手作りしたという事実がほしい(ぐちゃぐちゃな感情)

・田中琴葉は演技派なので北野武みたいな表情でヤクザの髪を掴んで顔拓を事務所の壁に取ることができる

・田中琴葉のは人殺しの才能があるので悪い男には引っかからないと思いました

・田中琴葉のことは真っ当に好きだと思ってるけど、それはそれとして幸福があると信じて不幸を撒き散らしながら地獄へ突き進む田中琴葉は「似合ってる」しそういう性癖なんだよな 死にてえ

・田中琴葉と高坂海美を拗らせすぎてU?U!が性行為にしか聞こえなくなってしまった
(注・推しカプ)

・デストルドー総帥の演技を見てほしくてデストレイピア振り回してたらPにレイピア突き付けながら押し倒しちゃって、生殺与奪を握った”生の感覚”に快楽さえ錯覚するような衝撃体験しちゃう田中琴葉は実在する

・最近「皮膚科に行ったら花粉アレルギーの検査するので来週ここに相手連れてきてセックスしてくださいって言われた夢」と「即売会で田中琴葉のレイヤーが訪ねてきて一緒に食事したあとホテルへ連れ込まれて首絞められセックスする夢」を見たので、多分ストレスだと思う
(注・現実世界への侵蝕が起きている。現実か?)

・田中琴葉はPに眠剤盛ってどうこうしたいわけじゃなく、薬混ぜたコーヒーをPが疑いもせず口にするという事実に興奮するタイプの女だと思うんだ

・田中琴葉はデストルドー総帥コトハについて「寂しかったんだろうな」って言ってたのでコトハから見たアイドルヒーローズは自分に寄り添ってくれなかった世界に対する復讐劇だと思うんだけど、コトハの覚悟を上回る愛情ならば彼女の魂は救済出来たはずで、アイドルヒーローズは潜在的な百合だったんだよ

・チョコミントアイスを見て「それ歯磨き粉か!?」と発言したため田中琴葉に「私はチョコミントを侮辱しました」と首からプレートを掛けられ劇場のエントランスに吊るされる永吉昴.png

・田中琴葉に人生狂わされてえな

・こっそりナイフを突きつけてみたりピアノ線を忍ばせたり毒のつもりでコーヒーに砂糖を混ぜてみたりして密かに生殺与奪を握ることでPが自分に絶対の信頼を寄せ命すら明け渡してくれているという偽りの真実に悦楽を禁じ得ない田中琴葉をよこせ

・そんなことしたら琴葉はそのうち罪悪感に耐えきれなくなって自殺しちゃうでしょ

記憶喪失になって田中琴葉に偽りの記憶を植え付けられたいな
(注・なんかのRTに対する言及。忘れた)

・田中琴葉に刃物を持たせろ
(注・似合うので)

・田中琴葉は真面目なので「言っても大丈夫な悪いこと」と「言ったらやばいことになる悪いこと」を弁えている

・デストルドー総帥コトハ「殺してあげます」←本当に殺す

コレット「殺します」←本当に殺す

草薙星蘭「殺してやる!」←殺さない

田中琴葉「死んでください」←本当に殺す

こうだとおもう

・田中琴葉に「私の人生めちゃくちゃにしておいて、よくそんなこと言えますね……!」って言わせたいな

・田中琴葉に似合う刃物、やっぱり大型カッターナイフなんですね

・田中琴葉の手元でカチカチカチって不穏な音がなるやつください

・田中琴葉さんに包丁で殺されたい

・というわけで田中琴葉と希死念慮を組み合わせた最悪の漫画ができました ペン入れします
(注・いつ出るの?)

・大好きだって伝えたけど振られてしまった永吉昴と最初にほんのり好きだったなって思ってたPがくっついて心がぐっちゃぐちゃになる田中琴葉を想像するなどの自傷行為に耽っていた
(注・ことすばもすこれ)

・田中琴葉に長い棒で執拗に頭を殴られて殺されたいな

・田中琴葉に俺の写真の前で「もう私もプロデューサーの歳を追い抜いちゃいましたね」ってめちゃくちゃ言われたくないか?

・手首に入念にコンシーラーを塗る田中琴葉より欄干越しに30m下の水面を遠い眼で覗き込む田中琴葉のほうが似合ってるんですよね

・田中琴葉に歪んだ愛情を向けることで精神の均衡を保ってるけど、田中琴葉も俺へ歪な感情を向けることで心の安寧を保ってるんだよね……

・今回の田中琴葉のカード、ヒロインの風格を纏っているがためにコレットを思い出してしまう
(注・SSR 優雅な休日 田中琴葉+)

・田中琴葉、誰かを殺して生き延びる胆力を持ち合わせていないから最後は自殺する道しか残されてないんだなって……
(注・コレットとは死を選ぶ理由が違う 琴葉は独りでは生きられない)

・恵美をうっかり殺しちゃった現場にPを呼び出して「ごめんなさい……私にはこれしか思いつけなくて……」ってPを刺して血溜まりの中で愛したあと自分の喉に包丁突き立てる田中琴葉しか思いつきませんでした

・田中琴葉の趣味お風呂って印象薄いよね

ところで死体の始末によく使われる場所の一つが浴室ですが

・田中琴葉にシャルシャロの衣装着せて密室で汗だくになりたいな

・田中琴葉の胸からふとももへ敗走した脂肪……

・うーん でも田中琴葉は永吉昴に一方的に想いを告げて拒絶されたら一人で勝手に壊れて死んで永吉昴の心に大きな傷を追わせる迷惑な女でいてほしい……(は?)

・同級生が授業じゃいつも長いジャージ穿いてる田中琴葉が運動会企画でブルマ穿いてるの見てしまってエッッッッッッ……ふとももやば……太…………になってることなんか知るわけない田中琴葉がよくわからん男に「恥ずかしいですけど……Pが、似合ってるって言ってくれたので」とか訳わからんこと言っ
(注・「アイドルの同級生」ネタは心を激しく傷つけるので程々にしましょう)

・同級生男子が田中琴葉の意外な一面とやらに現を抜かしてる一方でPとの心中を考えるほど思い詰めてる田中琴葉をこう……ね?(ろくろを回す)

・田中琴葉と高坂海美の脚の太さと中の人同士が並んだときの脚の太さ、完全に解釈と一致してる





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