そんなある日のことでした。
 とつぜん、フィオーレのおやしきに、一人の旅人がおとずれました。
 それは、プリマヴェーラという名の、旅人でした。プリマヴェーラは、一晩だけここで泊めてほしいとフィオーレにたのんできました。
 たいくつだったフィオーレは、よろこんでプリマヴェーラをむかえいれました。そして、二人は夜おそくまでいろいろな話をしました。
 次の朝。プリマヴェーラは、泊めてくれたお礼にと、フィオーレにあるモノをわたしました。
「……これは、『リヴァルディア』のタネです」
 プリマヴェーラはそう説明しました。
「『リヴァルディア』? ……聞いたことがない言葉だな」
 フィオーレが首をかしげると、
「このタネを土の中に埋めると、たちまち『リヴァルディア』が咲きます。……『リヴァルディア』は、幸せのシンボルと言われています」
 それだけ言いのこして、プリマヴェーラは旅立っていきました。
 よくわからないまま、フィオーレはさっそくもらったタネをおやしきの庭に埋めてみました――