一言ではあらわせないくらい昔のこと。

 一言ではあらわせないくらい遠いところに、フィオーレという若い男がいました。

 フィオーレは、一言ではあらわせないくらい大きなおやしきに、たった一人で住んでいました。

 フィオーレの両親は、彼がおさないころに二人ともびょうきで死んでしまいました。しかし、両親がたくさんのお金をのこしてくれていたので、フィオーレは毎日ごうかなおやしきでごうかな料理を食べながら暮らすことができました。

 だけど、どれほどおいしいごちそうを食べても、どれほどぜいたくをしても、フィオーレの心はけして満たされませんでした。

 何をやっても楽しくない。何をやってもまんぞくできない。

 ……やがて、フィオーレはずっと家にこもるようになってしまいました。

 そんなある日のことでした――