モノの値段は受給で動きます。
買いたい人が沢山いれば取り合いになってモノの値段は上がり、売りたい人が沢山いれば供給過剰になって売れ残りを恐れて値段は下がります。
図解1:市場価格
それを、図にするとこんな感じ。
この図は、最初価格が高くて供給過剰が生じています。でもそれだと需要がついてこないので、売れ残りが発生します。供給者は売れ残るのは嫌なので、生産を縮小し、更に値段を下げるでしょう。
値段が下がると、一般に買い手は喜んで買う量を増やすでしょう。こうして需給が一致し、経済は安定します。
価格が安いところからスタートすると、需要超過になって価格が上がり、需要は減ってやはり均衡します。どちらも、売りたい人と買いたい人の状況が変わらなければ、真ん中の赤い丸の位置で均衡して動かなくなります。
こうして形成されるのが、市場価格というものです。
図解2:株価
株価も需給で動きます。市場で値段もつきます。上の図と全く同じことですが、ちょっと違う面もあります。
株式は、会社が発行した数しかありません。よほどお金が必要になって、相当株価が上がったので、増資をして株数を増やそうということにならなければ株数は増えません。なので以下では、株数は一定と仮定します。
そうすると、株価が均衡するのは、こんなイメージになります。
株価は毎日ウロウロ動いています。それはなぜでしょう。悪材料が出たり、好決算が報道されたり、金利が上がったり、為替が下がったり、景気改善を示す統計が発表されたり、理由は様々です。
好材料が出て、その会社が将来有望になると皆が思えば、その株に対する需要が増えます。需要が増えても発行済み株数は同じなので、供給は一緒です。
そこで、評価価格である株価が上がることで、発行済み株数で需給が決まるように調整されるのです。
それを図にするとこんな感じ。
しかしこれでは、市場で売買が起こっている理由がわかりません。
常に発行済み株数と同じだけの需給になるように調整されているので、株式の売り手である株式会社から投資家に株が渡るわけでもなく、逆のことが起こっても株式会社が株を引き取る訳ではないからです。(実際には、そうした発行会社と投資家の株のやりとりもありますが、ここではそれが本論ではありません)
図解3:投資家Aと投資家B
ということで、こんな図を書いてみました。
ここでは、株式会社は背景に下がります。出てくるのは投資家Aと投資家Bです。想定しているのは上場株式市場です。発行済み株数は当面変わらないとします。
最初の時点では、発行済み株数を投資家Aと投資家Bで分け合って、ちょうど両方の保有株式数の合計が発行済み株数と同じようになる価格で株価が決まっています。
さてここで、何か状況の変化があったとしましょう。たとえば、為替の円高です。
投資家Bは、今回の為替の変化は一過性のことで、企業の収益環境に大きな影響を与えないと思っています。
でも投資家Aは、この為替の変化は構造的なものだから輸出環境が悪化して、この企業の業績は低迷し株価は下がるだろう、と思っています。すると、投資家Aの需要曲線は下がります。
こうして、投資家Aは企業の評価を下げたので市場に売りを出し、自分の売りで相場を押し下げてしまいます。そして、評価を買えなかった投資家Bは株価が下がったので株式を買い増し、両者の持ち株の合計が発行済み株数に等しくなるとこで株価は均衡するのです。
実際に、為替の変動が一過性のものだったか、構造的なものだったかは、後になってみなければわかりません。
その時点で見ていてわかるのは、悲観的なニュースが出たら売りが出て、株価が下がったということだけです。
為替が円高になる(輸出に悪材料)一方で、円高で原燃料の買値が下がる(製造コストに好材料)かもしれません。これも投資家Aと投資家Bで見通しが異なるかもしれません。
また、ここに出てきていない投資家Cが新商品開発のニュースをみて、投資家Bが買い増すより先に投資家Aの売った分を買ってしまうかもしれません。
このように、多様な意見を持つ投資家が多様な評価軸で会社の価値を値踏みして、その需給の結果として株価は決まっていくのです。
ですから、それら判断材料が、どのように企業の評価に効いてくるのか、それを知ることが、株価の高安を判断する智恵になるのです。