前回は、先物市場とローソク足、そして価格推移のチャート(図表)分析も日本が発祥と申しました。このチャート分析は、別名「テクニカル分析」とも言って、根拠のよくわからない経験則が大手を振ってまかり通っています。
テクニカル分析とは?
テクニカル分析にご興味のある方は、専門書に当たっていただければと思いますが、一般に「テクニカル分析」は実体経済面での動きよりもチャート上に現れた形を読み解くことで、相場の先行きを読もうという試みです。
例えば「移動平均線」というものを元々のチャートに重ね合わせてみることで、その移動平均と実際の相場のチャートが交差する部分を相場の節目と捉えたり、「支持線」といって幾何学的な補助線を引いてみることで、その交差点を相場の節目と捉えたりもします。
相場参加者は、実体経済がまだ統計データなどに現れてくるさらに前を予想しようとしますので、手元にある確実なデータはもう旧聞になってしまっており、そこから利益を得ようとするには無理がある。従って、事実として意外な統計データが公表されたらそれはその時反応すればよく、普段は相場参加者同士の顔色をみて、まるでポーカーゲームのように投機を楽しもうというわけです。
こういう考えをしていると、本間宗久のように、堅実な商家であった実家から勘当されてしまったりする訳です(笑)
とはいえ、実際に参考になることもありますので、例えばそれがどんなものか、実例をお見せしましょう。
相場の需給は、市場の先行きについての、市場参加者の考え方、即ち心理状態によって決まってくる、と考えれば、それもなんとなく納得できます。
例えば、三尊天井(さんぞんてんじょう)といって、大相場が終わったことを確認するチャートの形は、こんな気分?
そのほかにも、ダブル底なんていうのもあります。まあ、市場参加者は多分こんな気分。
支持線と移動平均線については、実際の相場データを使って描いてみましょう。以前ご紹介した、WTI先物の長期データです。
移動平均
移動平均というのは、例えば今日を基準にすると、今日から遡って例えば60日間の終値の平均値をとったものです。対象が60日なら60日移動平均、250日なら、250日移動平均です。週足データを使って、13週移動平均とか26週移動平均などというのも使われます。
これは要するに、3ヶ月とか、半年とか、1年(営業日ベースだと、だいたい250日程度)間の平均した終値の水準をしめしているものです。なぜこのような期間を取るかというと、先物の決済限月(3ヶ月)であるとか、半期、年度決算を気にする投資家が売買したときのだいたいのコストを示しているというものです。
で、上のチャートを見てみると、相場が下げトレンドのときは60日移動平均線が上値を押さえ、上げ相場のときは下値を支えているように見えます。
これは、相場が下げている時にはちょっと戻ってきて、自分の買いコストに届いたらちょうど損が消えるので、「やれやれ」と思って売り手仕舞いする人が出てきて、その売りが上値を押さえてしまう、ということとされます。上げ相場では、この逆のことが起こるようです。
とはいえ、何か大きなニュースなどがあっていきなり相場の水準が変わることもありますので、この分析も万能ではありません。
次は、支持線を描いてみましょう。もうちょっと期間を長く取ってみます。
こんな風に線を入れてみると、なんとなく、何かがわかった気がします。
注意しないと、カモへの道に
リーマンショック前の高値から最近の高値を結んでみると、なんだか右下がりの傾向線が引けるようです。高値は時間の経過とともに切り下がっているようです。これは、先進国と新興国の景気の低迷により、原油需要が全般的に緩和してきているサインかもしれません。
一方で、リーマンショックの後の安値から最近の安値水準を結んでみると、だんだん下値が切り上がっているようです。これは、世界の金融緩和で投機資金がコモディティ市場に流れ込みやすくなってきており、その結果として相場が下がると下支え的に買いが入ってきているというサインかもしれません。
その両方のトレンドが交錯する時点で、どっちかに値が飛ぶ可能性がありそうです。
やっぱり、だいたいそのタイミングで相場は下っ離れました。思った通りです。なんの根拠もありませんけど。(ちなみに、上記の理由もいま適当に考えて付けてみました。単なる後付けです)
また、リーマンショック後の安値はだいたい40ドルくらいとみられます。世界経済が崩壊するかもしれないという危機の最中でも40ドルが下限だったのですから、特段の危機でもない現在、ここまで下がることは考えにくいので、この辺になったら下値のメドとしてもいいかもしれません。なんの根拠もありませんが。
今回の原油安は、米国のシェール革命で原油の需給が構造的に緩和したことにあるとも言われており、そうであれば、シェール革命前であるリーマンショック時の高値や安値というものが参考になるとは限りません。
でも、こういう図を見せられてもっともらしい説明をされてしまうと「そんなもんかな」と思ってしまいますね。
こういう点にも注意しないと、カモへの道、一直線かもしれません。