前回、年金がわかりにくい最大の原因は「年金」ということばにある、というお話をしました。そもそも年金には「公的年金」と「企業年金」の2つがあり、どちらも話題になったりニュースで取り上げられたりするときは、同じ「年金」という言葉で表現されるので紛らわしいということでした。
ではなぜ同じような言葉が使われているのでしょうか?
どこが違うの?
本来、公的年金いうのは将来、齢をとって働けなくなった時、収入がなくなった時に生活していくことができるようにみんなで助け合って行こうという主旨で作られた制度です。
制度の中身は違ってもこれは世界中おなじ考えで作られています。したがってそもそも公的年金の本質は「社会保障制度」であり、現役で元気に働ける人が年金保険料を納め、そのお金を年老いて収入がなくなった人たちに支給してあげようという仕組みです。言わば社会全体の人が参加する"所得補償保険制度"と言ってもいいでしょう。
一方、企業にも老後の生活のための制度として「退職金」というものがあります。これは長年勤めた従業員に対してその労に報いるためにお金を支給するという性格のものです。ただ、退職金というのはお金がある時は払うけど、なかったら払えないというのでは困りますから、将来、退職する時に備えて企業はお金を積み立てておき、一定年数以上勤めた従業員に対して退職金を支給します。
したがって、退職金は言い換えれば「お給料の後払い」とも言えます。
「企業年金」は"年金もどき"
では、企業年金とは一体何でしょう?
答えは退職金のことなのです。「え! 退職金だったら知っているけど、企業年金って退職金のことだったの!?」
そうなのです。ごく単純化して簡単に言えば、退職した時に一度に受け取ったら「退職金」、何年にも分けて受け取ったら「企業年金」と呼ばれるだけのことです。退職金制度が日本で誕生した頃は日本人の平均寿命は60~65歳くらいでした。昔は企業の定年の多くは55歳でしたから退職金をもらってせいぜい5~10年くらいが寿命だったのです。
ところがどんどん長寿化が進み、退職した後も20~30年も長生きするようになると、その間の生活がとても重要になります。そこで退職金を一度に払わず、毎年に分けて払うようにしたのが企業年金の始まりです。あたかも公的年金のように支払う、だから企業年金は公的年金を真似た"年金もどき"と言えるのです。
次回は2つの年金のうち、まず公的年金について少し詳しくお話しましょう。